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INTERVIEW

Japanese

星野源

2014年07月号掲載

星野源

Interviewer:吉羽 さおり

2月に武道館公演を行ない病気療養から復活した星野源。復帰第1弾は、全4曲が収録された初の両A面シングル『Crazy Crazy/桜の森』。今回なんといっても面白いのはそのグルーヴ感溢れるサウンドだ。どこか憂いを帯びながらも、体を突き動かし、気持ちよく踊り続けていくような、ファンキーでユーモアにも満ちたサウンドが並んでいる。今のモードを凝縮したというシングルは、星野源ならではの細やかなこだわりや洒脱なノリが聴いていながらも、かつてなく軽やかだ。今作について、そしてまたこれからについての話を伺った。

-両A面シングル『Crazy Crazy/桜の森』がリリースとなりましたが、まず「Crazy Crazy」はピアノのイントロ部分からすごくグッとくる、ストーリーが始まるなという期待感高まる曲ですね。陽気なピアノで、かといって歌はアッパーなだけではなく、いろいろな経験を経て今思うことをそのまま書いているんだろうなと、ストレートな歌だなと感じました。この曲はどういうふうに作られていったんですか。

とにかく明るい曲を作りたいなと。もともとの「Crazy Crazy」のメロディ自体は、1年ぐらい前に書いたので。そのときは休養中だったので、悲しい気持ちで書いたので最初はバラードだったんですけど。ボイスメモを聴き直しているうちにこれを見つけて、これをちょっと明るくしたいなと思って編曲し直して。それでアッパーな曲というか、音に関してはそういうふうに作って。歌詞はあまり何も考えないで作りました。思ったこととか、音の景色に合う言葉というか。音の景色がいつも頭に浮かぶんですけど、それに合わせて言葉を衝動的にはめていったという感じですね。

-印象的なピアノのイントロもその編曲のときについたんですか。

そうですね。コード進行とかドラムの入ってくるタイミングはもともと頭で考えていたんですけど。小林創さんというジャズ・ピアニストの方が弾いてくれているんですが――ミュージック・ビデオでは連弾にしているんですけど、あれはクレージーキャッツ・オマージュなので連弾にしているだけで、ほんとはひとりで弾いてもらっていて。無骨な、ブルース・ジャズみたいな、ニューオリンズの酒場でおっちゃんが弾いてるみたいな、そんなイメージで一緒にリハをやっていたとき、最初はコード+メロディをイントロでやろうと思っていたんですけど、コードを弾いてもらっただけで十分な感じだったので(笑)。かっこいいと思って。一応、イントロも何パターンか録ったんですけど、でもあれがいちばんよかったんですよね。

-ボードヴィルや、無声映画についている音楽であるとか、そういったイメージがすごくしましたね。ベースやドラムもすごくいいグルーヴがあって、いい空気の抜け感もあるなと思いました。アルバム『Stranger』がものすごく濃厚なアルバムでもあったので、よりそういった感覚も強いんですが、グルーヴやリズムという面では、ノリとして出てきたものですか。

最初のコンセプトとしては、黒人のピアノ/ジャズのピアノ、ヘヴィメタのドラム/白人のドラム、で、ベースが日本人っていうイメージ。そのトリオのイメージが演奏のイメージだったんです。ピアノは跳ねていて、ドラムは跳ねていないんですよ。で、ベースが間を行ったり来たりしている。そういうグルーヴの作り方をしていて。だから、どっちかに寄っちゃうと1種類のノリになるんですけど、両方が頑張って維持してるので、ピアノもドラムも違うノリを。それで不思議な感じになっているんだと思いますね。

-なるほど。歌詞の世界は、ユーモアもあり反面シリアスでもある。音の景色に、ということでしたが、自分の声に従って自然に出てきた歌だったんでしょうか。

そうですね、今回はとくに「Crazy Crazy」も、「桜の森」も、あ、全部だな(笑)。

-誰かのストーリーと言うよりも?

誰かのストーリーを作るというのは、主に『エピソード』というアルバムまでで、『Stranger』とかその前のシングルからは"なるべくストーリーじゃないものを"っていう。段々とそれがより強くなってきていて、"なんでこの歌詞をここにはめたいのかよくわかってないけど、でもこれがいいなと感じるからこれで"とか。"文法として繋がってないんだけど、このままで"みたいな。そういう"こっちのほうがなんか好きだな"っていうのを優先していますね、今回の歌詞は。だから、1本の歌詞として成立してるかというと、してないかもしれないんですけど、そっちのほうが面白いなと思ったり。「Crazy Crazy」はとくにそうですね。

-もう一方の「桜の森」は、所謂、桜の曲ということでは坂口安吾の世界に近いもので。

そのままですね(笑)。タイトルそのままで。

-これもまたグルーヴのある曲で、アシッド・ジャズ的な匂いもする曲だなと思いました。

ダンス・クラシックをやりたいなと思っていたんですよね。「Crazy Crazy」もそうなんですけど、楽器数がすごく少ないけど、あまりそう聴こえないみたいな。隙間はあるけど、その隙間がちゃんと生きてる。かつ、J-POPとしても聴こえるというようにしたくて。ダンス・クラシックを研究しつつ、歌詞とメロディはどうしても日本人の音階になってしまうので、間をとるような、日本のクラシックみたいな着地の仕方になりました。そのなかでグルーヴもなるべく、THE EMOTIONSとか、ああいう人たちのリズム感みたいのを意識しつつ。音質でノスタルジー感を出すっていうよりは、ちゃんと今の音として鳴ってるようにしたいなと思いました。でも、生演奏じゃないとクラシックじゃないので、ちゃんとみんな、ばっちり生でやっているんですけど。