Japanese
星野源
2014.02.06 @日本武道館
Writer 石角 友香
"誰かこの声を聞いてよ"(「化物」)----―約1年2ヶ月ぶりのライヴは、2度に渡る病気療養からの完全復活であると同時に、命がけの2012年の星野源がその後の星野源に手渡したようなアルバム『Stranger』以降の"もっと楽しんで音楽を作りたい"という、新たなモードになって初めてのライヴ=彼がここで鳴らす音楽でもある。武道館に溢れる"おかえり"の気持ちには無意識の裡にも、いろんなニュアンスが含まれていて当然だと思う。なので、開演前の会場には祝福だけではない、ただごとではない熱量に溢れていたのだ。
ざわつく武道館が暗転するとミニスカ・ナースふたりに助けられながら本人登場。去っていくナースのスカートの中を覗こうと追いかける様子に爆笑と拍手。もうショーは始まっている。"おかえりー!""源ちゃーん!"の大歓声の中、メンバーも位置につき、鳴らされたのは「化物」。ああ、星野源が歌っている、アコギを弾いている。「Stranger」収録のこの曲は、倒れた当日に歌詞を書き、歌入れを行った曲だ。そのことと、今、ステージ背景に映る彼の表情が重なって、期せずして涙がダーっと落ちてしまった。伊藤大地(Dr)や伊賀航(Ba)、高田漣(ペダル・スチール)らおなじみの面々に加え、高野寛がギターとコーラスで頼もしいバックアップを務める演奏は、星野の喜びを確かに受け止め背中を押す。
MC第一声は"ただいまー!いやいやいやちょっと待ってください。言っていい?ただいま●こー!"。下ネタも絶好調。病院のベッドで第一声には絶対これを言おうと考えてたらしい。そして観客に音頭の手拍子を促し、"裏にドラム入るけどめげずにやってね"と、「パロディ」の演奏が、5人のホーン隊も加わった厚みのあるアレンジで展開する。大人で洗練されたアンサンブルというより、合奏が楽しくてしょうがない小学生みたいな勢いだ。アコギのイントロに拍手が起こった「くだらないの中に」では"僕は時代のものじゃなくて あなたのものになりたいんだ"の一節がより力強く歌われ、胸を打つ。無二。4ピースのタイトで豊かな演奏で「湯気」や「くせのうた」といった、自分の家にいるような温度や匂いの中に誘い込まれる。会場の大小を問わず、曲が聴き手の意識を変容させる、星野源の曲や声の力に再会した気分だ。胸の中に温かいものを醸成しつつ、一旦メンバーがはけると、スクリーンには"著名ミュージシャンからのお祝いメッセージ"と題して、バービー・ボーイズ(椿鬼奴とRG)、アン・ルイス(森三中の黒沢かずこ)、水谷千重子(友近)、赤えんぴつ(バナナマン)らが、渾身のメッセージ(演技)を映像で届けてくれた。これは星野の感傷に対する照れもあるのかもしれないが、芸という虚構に命がけで挑む彼らへの尊敬も込められているのだと思う。
武道館という大舞台ならではの大編成も聴き応え、見応えともに素晴らしいのだが、星野源という表現者の言葉に対するセンスや責任感を、まるで100人規模のライヴハウスで聴くような近さでもって届けた、中盤最小編成でのいくつかの演奏も忘れがたい。"東京タワーに使われているのが、第二次世界大戦の戦車の鉄だということを訊いて、面白いもんだなと思って作った曲です"と紹介した上で、ライヴ初披露となった「電波塔」。テレビやラジオを愛してやまない気持ちはもちろん、奥行きを感じさせる歌詞がダイレクトに響く。そして入院中、おしっこをしたくてもできなくなり、尿道カテーテルで排泄した地獄の体験、そして処置してくれた看護師の女性がなんとDJもしており、星野のことを知っていたというエピソードで笑わせ"そしてその娘(こ)は風のように去っていった"という語りからNUMBER GIRLの「透明少女」をエモーショナルなアコギのカッティングが冴える弾き語りで披露してくれたのも新鮮だった。
再び4リズムに戻り、ルーツ・ミュージックに少し抽象度の高い空気感も持った「レコードノイズ」。ホーン隊とストリングス隊に加え、カクバリズムの仲間であるサイトウ "JxJx" ジュン(YOUR SONG IS GOOD)、オラリー、辻村豪文(キセル)からなるコーラス隊も加わった「生まれ変わり」は、楽器と人の声が紡ぎだすグル--ヴの奇跡の凄まじさに星野の曲が持つ求心力を感じたし、"物語つづく 絶望の側で"という、彼の根底にある認識が変に重く聴こえないばかりか、さらにニュートラルな強さを持って届いた「知らない」。イントロの駆け上がるストリングス・アレンジに踊り出したい気持ちを押さえるのが大変だった「夢の外へ」では、素朴だが個性的というこれまでの認識を覆すほど、圧倒的な歌唱力で祝祭感を際限なく歌いあげる。もう、"前代未聞の星野源"にクラクラするばかりだ。武道館全体が明るく照らされ笑顔が溢れる中"ちょっとらしくないことやっていいですか?"とウェーヴをリクエスト。リクエストしたわりには"ドミノ倒しみたい"と、他人事のように言い放つのも彼らしい。そして本編ラストはアルバム『Stranger』のラストナンバー同様、「ある車掌」が歌い始められる。特別でも最低でもない日常をどれだけ自分のものにしていけるのか。それほど大げさなことは歌っちゃいないけれど、ひとりひとりの決意をたまには祝ってもいいじゃないか。そんな気持ちを汲んでくれたかのように静かに天井から落ちてきた銀テープの演出は白眉。自身の復活の日は、再会を祝う日でもあったのだ。
盛りだくさんの本編、何より以前より力強いパフォーマンスにやまない拍手と歓声。そこへ往年の歌謡ショーの前説の調子で、療養中に星野が自宅でカラオケ自主練を行い、そこで出会った運命の1曲を披露する旨が語られると、白いスーツにロング・ヘアーのヅラ、サングラス姿で登場。なんとフル・メンバーで布施明の「君は薔薇より美しい」の熱唱という、大爆笑のアンコール。"ここからは料金外だからクレームはやめてね!"と一応、エクスキューズが入り、再びナースに連れられて退場するのだが、スクリーンのフェイド・アウトの具合がまさにテレビ的で、これは想像だが、ここにも彼のテレビやコントへの愛を感じた。すかさずスクリーンには映画"地獄でなぜ悪い"の予告編が流れ、暗転とともに映画同様の衣装に日本刀を携えて、ステージを縦横に駆けながら熱唱する姿は、もう何が虚構で何が現実なのかわからない、映画とこのステージの二重構造にショーの本質を見た思いがする。
死ぬ気で作った『Stranger』。だからこそ新たな気持ちで楽しんでモノ作りに挑むタフさを何倍も増した今の星野源の音楽家・表現者としてのスタンスがすべて詰まった、どデカすぎる第一歩。また、星野源がいる毎日が回り始めた!
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