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INTERVIEW

Overseas

THE VACCINES

2012年09月号掲載

THE VACCINES

Member:Justin Young (Vo/Gt) Árni Hjörvar (Ba)

Interviewer:天野 史彬


-なるほど。でもデビュー以降、バンドを取り巻く環境は目まぐるしく変わっていったと思うんです。ライヴの規模も格段に大きくなったし、1stアルバムは今年に入ってプラチナも達成したし。そういった状況の変化に対しては、どう思っていましたか?

A:まずは日本に来ることができるようになったのが驚きだよ!(笑)。……でも確かに、小さな会場でやっていた頃から日本に来られるようになるまではあっという間だった。だけど、その中でもちゃんと段階を踏んで進んできたんだ。だから、自分たちの中では凄く論理的なプロセスだったと思うよ。急激に成功を手にしたっていう感じではなくて、地に足が着いてる感じかな。

J:うん。台風の目にいるような感じで、周りでは本当に目まぐるしくいろんなことが起こってるけど、自分たち自身は割と穏やかな気持ちだった。この短い期間にいろんな場所を見て、いろんな素晴らしい人たちに出会えて、とてもいい経験ができてると思うよ。ツアーで出会った面白い人々とか、ホテルの部屋から見える景色で曲ができたこともあるし。確か、前に東京でライヴをやった時も曲を書いた気がするんだけど……どの曲かは忘れたな(笑)。

A:僕らは海外でライヴをするときは、できるだけその土地その土地の地元のものには触れようと思ってるんだ。街に出て、レストランやパーティーに行ったりしてね。たとえば、日本に来てお寺に行ったり博物館に行ったりするのもいいけど、街に出て行くほうが、今の日本の人たちが何を感じて生きているのかっていうことを知る機会になるからね。まぁ、時差ボケだけは勘弁して欲しいけどね。自分がどの時間に生きてるのか、わからなくなるから。

-なるほど(笑)。ただ、1stシングルの「Teenage Icon」では、“I’m no teenage icon/I’m no frankie avalon/I’m nobody’s hero”ってサビで唄っています。つまり、“自分は特別な才能を持った存在ではないし、ヒーローでもない”って歌っているわけですよね。この曲には、デビュー以降、自分たちが意図する/しないに関わらず、いろんなものを背負わされていくバンドの現状や、バンドを取り巻く環境の変化に対する戸惑いや複雑な思いみたいなものも表れているのかなって思ったんですけど、どうですか?

J:「Teenage Icon」っていうタイトル自体は言葉遊びみたいなものだから、特別に大きな意味があったわけではないんだ。ただ確かに君の言うように、歌詞を書く時に、自分たちが有名になっていくことへの困惑みたいなものはあったと思う。この曲を書いたのは、1stアルバムがリリースされたすぐ後だったんだ。だから余計、そういう気持ちが歌詞に滲んだのかもしれない。

-さっきも言ったように、“ギター・ロックの救世主”的な存在として見られてきたし、デビューがセンセーショナルだったぶん、イギリスの若者たちにとっての「Teenage Icon」としてTHE VACCINESが取り沙汰されることもあったと思うけど、そこに対してある種、戸惑う部分もあったんですね。それもあってだと思うんですけど、初期衝動的な荒々しさとロマンティシズムに溢れてた前作と違って、今作はもっと喜怒哀楽の様々な感情がアルバム全体を通して表現されてますよね。

J:うん、そうだね。……でも、ちょっと矛盾するようだけど、僕らは歌詞を書く時にはできるだけバンドのことは書かないようにしてるんだ。もっと言うと、自分たちの問題について歌詞を書いても、それがもっと広く、様々な立場の人たちの気持ちを反映できるような伝え方をしないといけないと思ってる。何故なら、バンドのことだけを書くと、曲が僕たちだけのものになってしまって、リスナーが自分たち自身に関連づけて考えられなくなってしまうからね。

-自分たちの楽曲は、不特定多数のリスナーに対しても何かしら意味のあるものにならなければいけないっていうことですよね。

J:そう。だから「Teenage Icon」に関しても、一見、僕らのバンドの状況について唄っているようだけど、それだけじゃない。自分が置かれている状況に対して困惑したり、迷いや惑いによって心ここにあらずな状態になってしまうことって、僕らみたいなバンドじゃなくたって、誰にでもある、凄くユニヴァーサルなことだと思うんだよ。だからこの曲は、音楽的な部分だけじゃなくて、人間的な部分でも多くの人と繋がれる曲だと思う。

-今の話は、バンドの凄く本質的な部分に通じる話ですよね。50年代のロックンロールや60年代のガールズ・ポップなどからの影響を感じさせる音楽性だけで言うと、THE VACCINESの音楽って、この時代に対して特に珍しいものではないと思うんです。こういう音楽性って、ここ数年のUSインディーの潮流でもあるし。でも有象無象のインディー・バンドとTHE VACCINESが違うのは、THE VACCINESが、ポップ・ミュージックとリスナーとの結びつきがもたらす素晴らしい関係性や、ポップ・ミュージックが人々に対して果たし得る役割というものを強く意識しているっていう点なんじゃないかと思うんです。

J:確かに僕らは、ポップ・ミュージックとリスナーとの関係性や、それが与える影響の大きさに対してはかなり自覚的だと思う。そもそも、アートとエンターテイメントは切っても切り離せないものなんだよ。でもアメリカのインディー・バンドは時に野心的になり過ぎて、そういうコネクションを考えていないことがあると思う。僕たちは、自分たちの音楽とリスナーの結びつきを常に考えながら活動しているから、彼らと同じ土俵にいるとは考えてないんだ。

-そこが、THE VACCINESが急速に支持を集めることができた由縁でもありますよね。

J:うん、まさにそうだね。

-最後に、『The Vaccines Come Of Age』というアルバム・タイトルに込めた思いを教えてください。

J:まず、1stアルバムもそうだったんだけど、アルバム名とバンド名をひとつの文章にするのがクラシックでカッコいいと思って、そういうふうにしたんだ。昔のアルバムのタイトルには、そういうのが多かっただろ? あと、「Come Of Age」っていう言葉自体は1曲目の「No Hope」っていう曲の歌詞に出てくるんだ。そういう、曲の歌詞からアルバム・タイトルをつけたところも、ファーストと同じだね。その歌詞の中にある“It’s a hard to come of age”っていう言葉はつまり、“大人になるのは大変だ”っていう意味なんだけど、そこに、大人になるにあたっての戸惑いとか、座りが悪い感じとか……このアルバム全体が持ってる叙情性が集約していると思ったんだ。