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INTERVIEW

Japanese

ART-SCHOOL

2010年07月号掲載

ART-SCHOOL

Member:木下理樹(Vo&Gt)

Interviewer:道明 利友

メンバーチェンジなど、様々な紆余曲折を経ながら……。今年でついに結成10周年を迎えたART-SCHOOLの存在は、日本のロックシーンの中で異彩を放ち続けた。その孤高の個性をさらに濃密に凝縮した楽曲が、約1年ぶりの新作『Anesthesia』にはズラリと並ぶ。今を生きる人間としてのリアルな感情を言葉で綴り、それはときに、心に突き刺さるほどの痛みを伴いながら……。その響きに広がりをさらに増した音像は、聴き手の心を優しく包み込む。この“愛なき時代”に、音楽への“愛情”を濃密に込めて――。ART-SCHOOLにしか生み得ないロックアルバムへの想いを、木下理樹(Vo&Gt)にたっぷりと聞いた。

(Skream! 6月号を手に取って)僕、アジカンの『マジックディスク』がすごい好きなんですよ。ベクトルは僕らとは違うんだけど、なんか……。意志を感じるっていうか。

-彼らの新譜もすごく良いですよね。間違いなくロックなアルバムだし、それだけじゃなくてポップセンスも十二分に発揮されてて。その彼らの新譜に、木下くんはどんな意志を汲み取ったんですか?

音楽的にもそうなんだけど、まずはやっぱりタイトルかな。タイトルに、意志をすごく感じた。BOOM BOOM SATELLITESも『TO THE LOVELESS』ってタイトルを新譜につけてたけど、それってなんか……。今って、音楽がすごくプライスレスになってきてて、安く扱われがちというか。残念だけど。CDだって売れないしね。でも、“それでも音楽は素晴らしいんだぜ”とか、“鳴らすんだぜ”っていう強靭な意志を、『マジックディスク』からも『TO THE LOVELESS』からも感じたんですよね。それは、俺らも今回同じように持ってるし……。“それでもやるんだぜ”みたいな意志には、共感しますよね。“奇跡みたいな音楽”だったり、“愛のない時代”に鳴らす音楽だったり、そういうものを感じる作品には。

-そうですね……。例えば音楽配信がポピュラーになってきたことひとつとっても、良い面と悪い面両方があって。音楽がより身近になったっていうのと同時に、使い捨てみたいな感じで軽く扱われることも増えたり。

そうですね。だからこそ、“濃い”作品を作りたかったっていうか。前回のアルバム(『14SOULS』)をリリースしたのが去年の8月で、それからのんびり曲でも作ろうかなとか思ってた矢先に、友達のバンドがこぞって解散したり、活動休止したり、その果てはメンバーが亡くなったり……。

―あぁ……。フジファブリックの志村くんが亡くなったのも、去年でしたね。

うん。そういうことがね、色々あって……。それまでわりとのんびり考えてたんだけど、“今、もっと作らなきゃダメだ”って。俺も、明日どうなるか分からない。もしかしたら俺も明日死ぬかも分からない状況が来るかもしれない。じゃあ、自分はあと何枚作品を作れるんだろうとか、これがもし最後だとしたらどういう作品を作ろうとか……。とにかく今やらなきゃダメだと思って、今年に入ってからずっと曲作りに取りかかってて。それが入口でしたね、今回のアルバムは。これが最後かもしれないって思ったら、“濃い”のを作りたいじゃないですか。自分が明日死ぬって分かったら、“濃い”のを絶対に作りたいじゃないですか。そういうのもありつつ、今の音楽業界全体のこととか考えて、絶対に何かを提示したいと思ったんですよね。ちゃんと価値のある音楽を作りたいって。

-うん、間違いなく濃いですよ。収録は7曲ですけど、2枚組アルバムを聴いたぐらいの重たい聴き応えがあったというか(笑)。個人的にはまず、グランジとかオルタナの息吹を感じるような曲が印象的で。

あぁーっ。なんか、音像としては……。スマパン(THE SMASHING PUMPKINS)の『Adore』みたいな感じが、去年の夏ぐらいからまた良いなと思い始めて。あれって、ほとんど打ち込みじゃないですか。あと、静かで暗いんだけど、でもすごく綺麗な曲が多いからなんか良いなと思ってて。

-「Lost again」とか「Siva」の轟音ギターを聴いても、まさにスマパンあたりのグランジ系が木下くんのルーツにあはるんだろうなっていうのがよく分かります。

うん。プラス、“ニューゲイザー”のバンドがずっと好きで……。DEERHUNTERとかTHE BIG PINKとか、M83とかYPPAHとか。音像として、そういう作品って良いなって、そういうものも作ってみたいなって刺激を受けたんですよね。今回は色んなタイプの曲が並んでますけど、基本はそこから始まって……。スマパンの『Adore』って、打ち込みが主体なんだけどなんか綺麗でいいな、とか。バンドサウンドを強調したものは、その当時あんまり俺の耳には引っかからなくて。YPPAHとかも、ひとりでやってるじゃないですか。そういうものを作ってみたいなっていうのはまずありましたね、音像としては。