Overseas
FOALS
2022年07月号掲載
Writer 佐藤 優太
「Life Is Yours」には、楽観的な精神と、人生の可能性に歓喜するという、このアルバム全体への思いが含まれているんだ
UK最高峰のライヴ・アクトであり、2019年の6thアルバム『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』でバンド初の全英1位を獲得したFOALSが、待望の新作アルバム『Life Is Yours』を6月17日にリリースする。
僕は5月8日にロンドンのO2アカデミー・ブリクストン(キャパ約5,000人)で彼らのライヴを観た。FOALSのライヴを観るのは2014年の東京公演以来だったが、8年前の時点ですでに高い完成度を誇っていた演奏はさらに強靭さを増し、不動の貫禄を感じるものになっていた。現代的なダンス音楽の影響を昇華した巧みな構成力もさることながら、アリーナ級の迫力を誇るJack Bevan(Dr)のビッグなプレイとJimmy Smith(Gt)のリフ、Yannis Philippakisのハイトーン・ヴォイスのコンビネーションによって、一瞬も観客をダレさせないその姿に、"21世紀のLED ZEPPELIN"というフレーズが何度も頭をよぎった。
それはFOALSが、特に3rdアルバムの『Holy Fire』(2013年)以降、バンドの可能性を追求するなかで、スタジアム仕様のハード&ヘヴィなサウンドを獲得してきたこととも関係している。中でも前アルバムの『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』は、バンド史上最もヘヴィとも言われるシングル曲の「Black Bull」を含めて、FOALSが最もラウドロックの領域に足を踏み入れたアルバムだった。
スタジアムを揺らすヘヴィなサウンドを獲得する過程を経て、名実ともに現代のイギリスを代表するバンドになった彼ら。しかし、そんな彼らが発表する待望の新作『Life Is Yours』は、バンドのまったく新しいモードを提示するものとなった。
爽やかなシンセサイザーとギターのリフ、軽やかなダンス・ビート、そしてパーカッションの煌めきが、聴き手の人生を温かく祝福するかのようなオープニングの表題曲は、まさにそんなバンドの最新モードを体現する1曲だ。この曲についてYannisは"「Life Is Yours」には、楽観的な精神と、人生の可能性に歓喜するという、このアルバム全体の心情が含まれているんだ。パンデミックや気候変動の影が見え隠れし、危うさを感じるなか、この曲は重要な意味を持っていると思う"と全曲解説の中で語っている。
アルバムの先行曲として発表されていた2曲目の「Wake Me Up」では、今まであえて避けてきたという70年代のディスコ・サウンドの影響を取り入れている。パンデミックや、そこでのロックダウンを経て制作された『Life Is Yours』は、徹底的にダンサブルでフィジカルな魅力のあるレコードだが、それは彼らにとっては原点回帰の意味合いもある。"バンドはこれまで、様々な音のパレットを試しながら旅を続けてきた。今回は、リズム、グルーヴ、ギターが建築的に連動するような、バンドの最初のアイディアに戻したいという願望があった。音楽の持つ身体性を生かして、それをいい感じにしたかったんだ"(Yannis)
レコード盤で言うとA面に当たるアルバムの前半はパーティーの喜びに溢れ、"FOALS史上最高にポップ"な、本作の精神を象徴する楽曲が並ぶ。もちろん、パーティー三昧の日々が、必ずしも人々に喜びだけをもたらすわけではない。Yannisが"これまで書いた曲の中で最もポップな曲のひとつ"と語る3曲目の「2am」は、前日の夜遊びで疲れ果てた身体で、しかし今夜も夜の街に繰り出すというような"破壊的な行動の繰り返し"がテーマになっている。また、4曲目の「2001」は、まさにその2001年頃、まだ10代のYannisが移り住んだブライトン(ロンドンからほど近い海岸沿いに位置し、観光地や学生街として有名)で味わった独立の解放感と、その反面の誘惑をテーマにした曲。"ビーチサイドのお菓子やブライトン・ロックに言及するのは、ドラッグや快楽主義の象徴だ。これはパンデミックの冬の真っただ中に書いたもので、パンデミックと青春の両方が持つ、閉じこもった感じから抜け出したいという逃避的な欲求があるんだ"(Yannis)
Yannisを中心としたバンド自身のセルフ・プロデュース作だった『Everything Not Saved Will Be Lost』シリーズと対照的に、本作には複数のプロデューサーが参加している。KHALIDやCarly Rae Jepsenなどのエッジィなポップスのレコードを多数手掛けるアメリカ人のJohn Hill、さらに近年、南ロンドンを拠点にWET LEGやBLACK MIDIなどの若くて刺激的なインディー・バンドを多数手掛けているDan Careyが、前述の「2am」を担当。また、実験的なR&Bを得意とする新鋭のA. K. PaulやMiles Jamesが「2001」などの曲で手腕を振るっている。
FOALSと言えば、そもそも結成のきっかけが、当時彼らが入れ込んでいた実験的なダンス音楽への愛情を共有できる同志であったことというくらい、ディープな音楽リスナー同士が出会って生まれたバンドである(2012年にはNicolas JaarやCARIBOUの曲を収録した『Tapes』というミックスCDもリリースしている)。新作でもそうした彼らの音楽オタクぶりはいかんなく発揮されており、例えばYannisのお気に入りの1曲だという6曲目の「Flutter」のギター・リフは、"マリとセネガルのギタリスト"からの影響を受けているそうで、例えばVIEUX FARKA TOURÉあたりの演奏とも通じるものを感じる。
Jimmyが書いた"PRINCEっぽい"デモから発展した7曲目の「Looking High」もアルバムの先行曲のひとつだが、この曲についてYannisは"私の人生の中でもっと快楽主義的だった時代、そして一般社会がもっと純粋だった時代、パンデミック以前、気候変動の脅威が存在する以前を振り返っている"曲だと説明する。"舞台はオックスフォードの路地で、そこには街のナイト・ライフが集うふたつのクラブ、The CellarとThe Wheatsheafがあった。クラブが閉鎖されて、都市がより企業的で乾燥した場所に変化する前のことだ。もう存在しないナイト・ライフに取り憑かれるような要素があるんだ"
快楽主義とナイト・ライフは本作の重要なキーワードだが、アルバムの終盤の「The Sound」はそのクライマックスと言える曲だ。"音楽的にはUKダンス、ハウス、ガラージなどの要素を取り入れつつ、ギターのトップ・ラインは別の世界から来ているという点が興味深い"、"ライヴで演奏するにも、とてもいい曲になりそうだ。見た目はシュールでインダストリアルな感じで、曲の精密さと言葉の自由さを対比させたかったんだ"(Yannis)
そして、もうひとつのキーワードとしてのオプティミズム(楽観主義)を体現するような「Wild Green」で、本作は幕を閉じる(※ボーナス・トラックあり)。イギリスのバース地方にPeter Gabrielが設立した"Real World Studios"で"トンボやカワセミが飛び交う、青々としたイギリスの夏の風景を眺めながら"レコーディングされたこの曲は、シンセサイザーの生み出す音のレイヤーに分け入るようにバンドの演奏が進行する、非常に夢想的な1曲だ。"夏が花粉や生き物で生き生きしているのと同じように、生命が再び姿を現すタペストリーのように感じられる曲。この曲は、私たちの世界がパンデミックから再び立ち上がる様子を映し出しているのだと思う。楽観的でありながら、どこか憂いを帯びている。だから、後半は別れの言葉、エレジーになっているんだ"(Yannis)
別れの言葉。もちろん、それを意図したわけではないであろうが、FOALSは2021年9月に、結成時からのメンバーであったEdwin Congreave(Key)の脱退を発表している。Edwinの脱退は大学院への進学が理由であり、友好的なものだったようだ。だが、"人生の可能性に歓喜する"ことをテーマとしたアルバムの中で、人生が進むことがもたらす必然的な別れや、青春の負の側面まで射程に入れた楽曲を作ってしまうところにFOALSというバンドの創造性の豊かさや、誠実さを感じる。
パンデミックを経た新作で、原点回帰的な身体性に富んだ、しかし長年の進化と含蓄を感じられるアルバムを完成させたFOALS。何より、聴き手とバンド自身の人生を祝福するために作られた本作は、このあとの人生を過ごすための1枚として何度もリスナーの生活に喜びを与えてくれるはずだ。FOALSはこの夏、"FUJI ROCK FESTIVAL '22"での来日も決定している。
▼リリース情報
FOALS
ニュー・アルバム
『Life Is Yours』
2022.06.17 ON SALE
SICX-181/¥2,640(税込)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
・歌詞/対訳/解説付
1. Life Is Yours
2. Wake Me Up
3. 2AM
4. 2001
5. (Summer Sky)
6. Flutter
7. Looking High
8. Under The Radar
9. Crest Of The Wave
10 The Sound
11. Wild Green
12. 2001 Vibes ※日本盤ボーナス・トラック
13. LH MJ Rough Demo ※日本盤ボーナス・トラック
14. Wake Me Up (Lawrence Hart Remix) ※日本盤ボーナス・トラック
「2001」配信はこちら
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