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Japanese

AliA

2021年08月号掲載

AliA

Writer 高橋 美穂

着々と階段をのぼってきたAliAの進んでいく運命的な"物語"


AliAが新曲「ノスタルジア」を、8月4日に配信リリースする。2018年7月の結成から3年間、着々と階段をのぼってきた6人が、今のこの時代、今の自分たちが伝えたいことに照準をぴったりと合わせたような、とても鮮明でエモーショナルな楽曲である。

まずは、ここに至るまでの軌跡を振り返ってみよう。この6人は、それぞれが様々なキャリアを重ねてきて、ひとつのバンドで夢を叶えるために集まった。EREN(Gt)が、男性ピアニストがいるバンドに魅力を感じて、知り合ったばかりのTKT(Key)に声を掛けたところから、物語はスタート。そこから、ヴァイオリンも入れたいというヴィジョンにもとづき、クラシックの世界で活動していたRINA(Vn)を誘う。バンドの要であるAYAME(Vo)は、弾き語りでオリジナルを歌っていたところを見いだされる。最後に、ヘヴィ・メタルをルーツに持つBOB(Dr)と、様々なバンドのサポートとしても活躍していたSEIYA(Ba)が加入。......かなり短くまとめたが、この6人がERENのインスピレーションを発端として運命的に出会ったことや、キャリアもルーツもバラバラであることがわかるだろう。2019年の2月にリリースされた1stミニ・アルバム『AliVe』の際のインタビューで、ERENは"例えるなら「アベンジャーズ」。みんな主役なんですよ、このバンドは"という、このバンドを象徴する発言をしている。もともと主役級――言い換えればソロとしても活躍できる可能性を持ち、他のバンドにサポートとして加わっても秀でた仕事をできるスキルがあるひとりひとりが、AliAという旗のもとに引き寄せられるようにして集まり、あえてこの6人で音を鳴らすことを選んだのである。正直、それぞれの個性が際立ちすぎていると、AliAという1枚のパズルは完成しないというリスクもあったと思う。しかし、そこも奇跡だと思うのだが、この6人は、もともとの友達同士などではなかったにもかかわらず、AliAという集合体を楽しみ、それぞれをリスペクトすることができた。だからこそ、楽曲やフレーズにおいて、6人が主役と脇役を華麗に入れ代わり立ち代わりするような、絶妙なバランスを保つことができた。それも、1stミニ・アルバム『AliVe』という、初期段階から。その際のインタビューで、ERENが照れもなく"僕はみんなのことが大好きだから"と言い切っていた姿を思い出す。それぞれの高いスキルや強い個性のぶつかり合い、楽曲のクオリティ、ヴィジュアルの華やかさなど、AliAの魅力を語りだせばキリがないが、私は何よりも、このバンドの"物語"に惹かれてやまない。こういう奇跡的で運命的な物語がバンドを強くするということは、音楽の歴史も証明しているはずだ。

そこから、6人はコツコツと楽曲を生み出していった。特に2020年12月に「リフレインメーデー」を配信リリースしてからは、2021年1月に「Promise」を配信リリース、2021年3月に「ステロイド」、「ゆびさき」を配信リリース......と、止まらない。そう、コロナ禍でも前に進み続けているのだ。ただ、ライヴに関しては、やむを得ないところもあった。2019年に渋谷CLUB QUATTRO、恵比寿LIQUIDROOMをソールド・アウトさせ、2020年1月には、2019年のインタビューでBOBが"いずれは海外に足を運ぶような規模のバンドになっていきたい"と語った目標を早くも実現し、アメリカやヨーロッパを9ヶ国ツアー。しかし、その後は誰もが知るとおり、コロナ禍でライヴ・シーンは停滞することとなってしまった。そんななかでもAliAは負けなかった。2021年春、"AliAlive2021-FANFARE-"と題した、全国9ヶ所のワンマン・ツアーを敢行。ツアー・ファイナルである5月のEX THEATER ROPPONGI公演は緊急事態宣言により無観客配信となったが、ファンの中からライヴ配信スタッフを募り、100以上のSNSアカウントでの配信を実施。コロナ禍での新しいライヴ配信のスタイルを提示すると同時に、物語が"みんな"のものになっていることを感じさせた。なお、"AliAlive2021-FANFARE-"の"リベンジ公演"が、7月23日に新宿BLAZEにて有観客で行われた。その映像を観たのだが、規制を遵守しながらも、バンドとオーディエンスの息が合っている様子が、ひしひしと伝わってきた。ハンド・クラップの温かさが、画面からもにじみ出ていたのだ。

その"みんな"の物語の中で、ずっと流れ続けていた楽曲と言えるのが「かくれんぼ」である。これは、先述した1stミニ・アルバム『AliVe』の収録曲。当時のインタビューでAYAMEが"6人が正式メンバーになって、最初に作った曲なんです"と語っていた、まさに"はじまりの歌"。この楽曲はMVとなり、公開後約2ヶ月で100万回再生されたのだが、それから、2021年以降またTikTokでたくさん使用されたことなどを契機として再生回数が上昇し、現在は1,000万回再生を突破している。iTunesロック・トップ・ソング・ランキングでも、約半年間50位内をキープしているのだ。まさに全員が主役であるAliAらしい、それぞれの見せ場がふんだんに盛り込まれたアレンジの中、"もういいかい?まーだだよ"という、子どもでも口ずさめるキャッチーなコーラスでオーディエンスも引き込んでいき、["いっせーのー"で鳴り響いたスタートの合図/なぞった線で結んだ世界/色付けていく ここから]と、力強いAYAMEの歌声で引っ張っていく。これまで隠れていた6つの才能が"もういいかい?もういいよ"と飛び出していき、日本中、世界中の人に見つかっていったのだ。こんなドラマチックな進化を遂げていく楽曲、なかなかないのではないだろうか。

そして、このたびリリースされる「ノスタルジア」。"忘れさられていく 青い春が/僕にとってはいらない/痛い痛い痛い記憶で/思い出そうなんて 言えないけど/たしかにあった幸せな記憶が"――まさに"ノスタルジア"をかきたてる歌詞が、ヒリヒリしたアンサンブルで迫ってくる。ただし、この楽曲、そんな痛みだけでは終わらない。最後は"取り戻すことはできないけど/誰にでもあるさ 大切な日々が/今でも僕を支えている"という歌詞に結実するのだ。アンサンブルも、ヒリつきの中に、しっかり美しさをたたえているところから、彼らの意志を感じる。痛いだけでも、美しいだけでもない、すべてをひっくるめて、私たちは生きていくんだ――そんなリアルがポジティヴに昇華されているのだ。いわゆる青春からだいぶ離れてしまった私の心にもズシズシと響くのだから、コロナ禍で青春を奪われてしまっている世代には、ものすごく共鳴を呼ぶ楽曲になると思う。すべては今に繋がっている、そして未来へ続いていくという歌詞も、ここまで書いてきたAliAの物語を映し出しているようであり、3周年という節目にもぴったりだ。なお、"ここから、また始まる"というような白い衣装をまとった6人の演奏と、楽曲の答え合わせのように読み解けるドラマが繰り広げられるMVも、見ごたえたっぷり。青春真っただ中の世代のみならず、いろいろな人たちの日々に寄り添う音楽を奏でていきたい、というAliAのスタンスが表れているようだ。コメント欄には、相変わらず、海外の人たちからの言葉もたくさん並んでおり、世界中の人たちが、AliAを切望していることがよくわかる。

さて、このあとAliAはどこに向かうのだろうか? まだ情勢が不明瞭ななか、6人はしっかりと前を見据えて、いろいろな計画を立てているようだ。どんな時代でも物語を続けていくべく、AliAは私たちを連れて走り続ける。嘘のない希望に満ちた歌詞と、ひとりひとりが100パーセントを出し切った、600パーセントのパワフルすぎるほどのアンサンブルで。ぜひ、あなたも、ここからAliAの物語の登場人物のひとりとして、加わってみてほしい。


▼リリース情報
AliA
デジタル・リリース
「ノスタルジア」
AliA_jkt.jpg
2021.8.4 ON SALE

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