Japanese
AliA
Skream! マガジン 2022年03月号掲載
2022.02.19 @Zepp DiverCity(TOKYO)
Writer 山口 哲生 Photo by 溝口元海
昨年12月にリリースした1stフル・アルバム『Me』を掲げて、バンド初のZeppツアーを開催したAliA。今回レポートをしているZepp DiverCity(TOKYO)は、バンドにとって"第1目標でもあった"という会場だ。そのオープニングは、幻想的な照明がフロア全体を包み込むなか、アルバムの1曲目である「天気予報」をもとにした詩が朗読され、そのまま同曲に繋いでいくというもの。それはまるで映画や舞台のワンシーンのようでもあり、これからここにいる全員でひとつのアトラクションに参加するような、高揚感に満ち溢れたものだった。
アルバム・ツアーということもあり、『Me』の収録曲はすべて披露されたこの日のライヴ。ハイボルテージなセッションから始まった「impulse」や、楽器隊それぞれの見せ場をしっかりと設けた「まあいっか」など、ライヴハウスに映えるハードなサウンドで、オーディエンスのテンションを激しく突き上げていく。また、SEIYA(Ba)とBOB(Dr)のリズム隊を筆頭に生み出す重量感のあるグルーヴが、ダーク・ファンタジーな曲調によりえぐみを持たせた「ケセラセラ」、ERENのギターとRINAのヴァイオリンの音色が劇的に絡み合った甘酸っぱさのある「100年に一度のこの夜に」、TKT(Key)がアップライト・ピアノを前に、温かみのあるサウンドを届けた「翼が生えたなら」と、まったく違う表情を持った楽曲を連続で繋げていくところは、様々な音楽を貪欲に取り入れていくAliAのスタンスがよく表れていた場面だろう。さらに、「SLIDE SUNSET」と「letter」の2曲は、アコースティック形式で披露。芳醇なアンサンブルでフロアを魅了しつつ、MCではライヴ当日にオーディエンスから募集した質問に答えていくフレンドリーな場面も。メンバー全員がわちゃわちゃと話している空気感はなんとも微笑ましく、楽曲の魅力だけでなく、6人のキャラクターも存分に伝わるものになっていた。
前述の通り、様々な音楽を血肉化し、作品を出すごとに楽曲のバリエーションを着実に増やしてきているAliA。しかし、今作『Me』に関しては、バリエーションという幅の部分はもちろん、高さや深さ、広さといったスケール感を押し広げてきた楽曲に耳を奪われる。事実、圧倒的な孤独や失意の底に一縷の光が差し込むような「equal」や「Me」といった、アルバムの軸でもあるミディアム・ナンバーは、もはやZeppというサイズ感の会場では収まりきらないほどに壮大で、ドラマチックに響き渡っていた。中でも、どれだけ過酷な現実がそこに横たわっていようとも、自分たちが光になりたいという強い意思を、AYAMEがオフマイクで力強く歌い上げた「あかり」は、とにかく胸に迫るものがあった。
昨年開催したツアー・ファイナルは無観客公演だったことを振り返りながら、"こうやってみんなと楽しむ時間を作れたことは、めっちゃ希望だなと思います。音楽はそういうものであってほしい。みんなにとって、明日も明後日も頑張れる糧であってほしいと思いながら曲を作って歌って、悩んで、生きてます"と話していたAYAME。そんな彼女であり、AliAというバンドの想いが全編貫き通されたステージを締めくくったのは、「ユートピア」だった。晴れ渡った青空が目に浮かぶ光に満ちたサウンドをフロアに放ったあと、ライヴの冒頭で流れた詩が、再び朗読される。"君となら、ずぶ濡れになったって笑っていたい"、"明日はきっと虹が掛かる"。そして、ステージに掲げられていたバンド・ロゴが、虹色に照らされた。そんなドラマチックな光景を見て、AliAが高鳴らす希望という名の音楽が、ここからさらに遠くまで広まっていくことに胸躍らされた夜だった。
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