Japanese
Chara+YUKI
2020年02月号掲載
Writer 石角 友香
久々にプレゼントの包みを開けるように一曲一曲ワクワクして聴いてしまった。それは送り主がCharaとYUKIだからということもあるし、コラボレーションやコライトしているアーティストの顔ぶれが新鮮だということもある。ふたりが1999年に「愛の火 3つ オレンジ」1曲を共に作ってリリースして以来、20年ということはあまり意識しなかった。それ以上に、近年のふたりの作品――Charaの近作『Baby Bump』のフューチャー・ソウル/ファンク・テイスト、YUKIのオルタナティヴな側面が炙り出された『forme』という具体的なものがあっただけに、今ふたりが共作することにときめいたのだと思う。きっかけは前述のYUKIの『forme』にCharaが「24hours」を曲提供したことだそうだが、ミュージシャンとしても作詞家としても、ふたりが求めている音楽の質感が今接近しているのだろう。
新鮮なひらめきに満ちたYUKIのヴォーカルの直感力と、それを拡張するCharaのプロデュース能力
ミニ・アルバム『echo』は「愛の火 3つ オレンジ」を再構築した2020versionからスタート。ファンファーレのようなトランペットが大きな空気をイントロから作り上げ、マーチング・ドラムも始まりを告げるようだ。YUKIのラップのフローの気持ち良さや、オリジナルになかったアウトロ部分のアドリブっぽい自由な歌は今のふたりだからこそ。サウンド・プロデュースは、東京/LAを拠点に活躍し"ハッピー・ヒップホップ"を自称するCIRRRCLEのA.G.Oだ。そして、ブラス・アレンジは現在のCharaバンドのバンマスで、若手ジャズ・シーンをポピュラーな存在に押し上げるCRCK/LCKSのリーダーでもある小西 遼(Sax/Key/Vocoder etc.)。きらびやかなオリジナルに比べて印象は柔らかく、しかも、新鮮な音楽要素満載だ。
続く「You! You! You!」はSeihoのテクノというより、生身の感覚も残ったフューチャー・ベースといった趣き。このダンス・トラックにヴォーカルを乗せようというのがChara+YUKIのすごいところで、Seihoも歌モノとして手加減していないところは両者の信頼関係のなせる技だろう。個人的な感想だが、サビの英語詞や日本語ラップのフローでのYUKIの突き抜け具合は、単なる勘の良さ以上に、同時代を肌感覚で実感している、言葉を操るアーティストに共通するものを感じる。かなり痛快だ。
そして、ダンスは止まらないとばかりに3曲目は大沢伸一作曲&プロデュースの「ひとりかもねむ」。これぞ大沢伸一のスピリットと言うべきハウス・チューンだが、ところどころ懐かしいTR-808や90sっぽいシンセ・サウンドも顔を出し、ふたりのイマジネーションに溢れる瞬発力の高いヴォーカルの重なりが時空を越える。
このアルバム全体に言えることだが、音番長ことトータル・サウンド・プロデューサーを努めたCharaは、ヴォーカル録りに細心の注意を払ったのではないか。それは上手い歌とか完成度の高さとは逆で、いかに歌詞やアドリブで出てきた湯気が立つようなできたての言葉をそのまま録音するか? という意味でだ。意味を成す前の、CharaとYUKIの音としての発語や、ふたりの間にある空気さえ録音する。その手法は明らかに20年前から変化している。ヴォーカル、楽器、打ち込みそれぞれの音を楽しむミニ・アルバムでもあるのだ。
話を「ひとりかもねむ」の歌詞に戻すと、サビのフレーズはYUKIが百人一首から引用したもので、"ひとりぼっちで長い夜を過ごす"といった意味だそう。だが、全体の歌詞はさにあらず。粋でコケティッシュな大人の歌だ。ちなみに、若い世代のリスナーも、大沢伸一のサウンドはMONDO GROSSO名義による満島ひかり歌唱の「ラビリンス」や、アイナ・ジ・エンド(BiSH)歌唱の「偽りのシンパシー」を思い出してもらえれば、透明な官能とでも言うべきニュアンスが浮かぶだろう。
続いては本作のリード・トラックでもある「楽しい蹴伸び」。なんてユニークなタイトルだろうと思って聴くと、プールで蹴伸びする気持ち良さと、大人のサマー・ソングが抜群のバランスで並列している歌詞が楽しい。サウンド・プロデュースは、以前CharaのライヴにおけるバンマスでもあったTENDREが務めている。彼による肩の力の抜けたアーバン・ポップ~ローファイ・ヒップホップなトラックに乗せて、YUKIが歌っていることがとても新鮮。ブラック・ミュージックをルーツにした音楽性はCharaが先導していると思われるが、YUKIの言葉の区切り方はラップを学んだ人とはまた違うニュアンスながら、ここでも彼女の勘の良さに思わず"おぉ!"と声を上げたくなる。CharaはYUKIのヴォーカル録りのディレクションにおいて、"テイク0"のフレッシュさを多く残したとオフィシャル・インタビューで語っているが、リラックスと集中が同時にできる環境要因と、YUKIのヴォーカリストとしての奥の深さがそれを可能にしている。
続く「YOPPITE」は"一晩中"を意味する言葉。Chara、YUKIふたりが共通して旧知の白根賢一(GREAT3/Vo/Dr)がサウンド・プロデュースを務めるこの曲は、浮遊感と透き通るような空間処理が心地よく、終始ユニゾンで歌うことで、ふたりの会話のようにも思えるし、自分の中のふたつの視点が会話しているようにも思える。神聖な音像が、"貴方"というワードを様々な大事な存在に置き換えて聴く作用を果たしているところも。
そして、様々なアーティストがプロデュースや演奏、トラックメイクで参加しているこのミニ・アルバムの中でも、最もユニークな顔合わせになったのが「鳥のブローチ」ではないだろうか。サウンド・プロデュースはKan Sano。かのTom Mischもファンを公言し、自身のライヴのサポート・アクトに指名。もちろんソロ名義や、最近では七尾旅人の作品、ライヴのメンバーとして、また、今の東京のムードをクールに音楽に落とし込むスーパー・バンド、Last Electroとしても活動するという多彩さで、世界を視野に入れて活動できる日本人アーティストとして今注目の存在だ。この曲では彼とCharaがキーボードを弾いているが、楽曲のイメージを左右するシューゲイズなギターはTHE NOVEMBERSの小林祐介(Vo/Gt)、ドラムは吉木諒祐、ベースはChara旧知の高桑 圭が務めている。多彩な背景を持つミュージシャンが起こしたケミストリーは、意外にも愛らしいチェンバー・ポップなサウンドに結実し、女の子が果敢に冒険する物語に真実の光を灯しているように思える。
そして、Chara作品ではお馴染みのmabanuaがサウンド・プロデュースをした「Night Track」は、彼らしい揺れるヒップホップのビート感が楽しく、ハンドクラップしながら、ふたりが出かけるナイト・クルージングに一緒に行きたくなるようなイメージだ。"男の子でも 女の子でもいいよ 仲良くしてね/惹かれあうんだ 訳などないんでしょう?"というフレーズに、このアルバム全体に何気なく溢れるオーラや現代性も感じる。
そして、ラストはタイトル・チューンの「echo」。ギターとベースの演奏だけをくるりの岸田 繁(Vo/Gt)が担当している意味に、ギターの音色とカッティングだけで深く納得してしまう。間奏で食い気味に入るギター・ソロも、いかにも彼らしい。なんの飾りもいらないオルタナティヴなロックで"あるがままで あなたと いたいのです"、"勇敢な人に なりたいな"と歌うふたりが大袈裟じゃないぶん、聴き手のこちらも静かに決意する。いつまでも心にこだまする、まさに"echo"だ。飾りも濁りもない音を刻み込んだ美濃隆章(toe/Gt)の録音も見事。
本作は世代や属する背景を跨いだコラボが20年代を面白くする試金石と捉えてもいい。すでに若手ジャズや一部のロック・バンドで起こっていることを、ポップなフィールドで実現した、今を象徴する力のある作品だ。
▼リリース情報
Chara+YUKI
シングル
『楽しい蹴伸び』
![]()
NOW ON SALE
■完全生産限定盤(7インチアナログEP)
ESKL-3/¥1,300(税別)
[Side A]
1. 楽しい蹴伸び
[Side B]
1. 楽しい蹴伸び(Instrumental)
配信はこちら
ミニ・アルバム
『echo』
2020.02.14 ON SALE
![]()
■通常盤(CD)
ESCL-5219/¥2,500(税別)
1. 愛の火 3つ オレンジ(2020version)
2. You! You! You!
3. ひとりかもねむ
4. 楽しい蹴伸び
5. YOPPITE
6. 鳥のブローチ
7. Night Track
8. echo
![]()
■完全生産限定盤(12インチアナログLP)
ESJL-3117/¥3,500(税別)
[Side A]
1. 愛の火 3つ オレンジ(2020version)
2. You! You! You!
3. ひとりかもねむ
4. 楽しい蹴伸び
[Side B]
1. YOPPITE
2. 鳥のブローチ
3. Night Track
4. echo
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