Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

COLUMN

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十二回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十二回】

Written by 松田晋二
2020.04.02 Updated

第十二回「運命」 小学生最後の大会当日、そわそわした気持ちと同時にぴんと張り詰めた緊張に包まれながら家を出た。冬の寒さが余計に緊張感を煽る。校庭までの道のりがいつもと違って見えた。何度も渡った橋も、国道を渡る歩道橋も地に足がついてないような感覚で歩いている。会場に着くとまばらにメンバーが集まってきた。何を話す訳でもなく、いつもの荷物置き場でそれぞれ準備をしているけど、皆んなどことなく違う表情をして

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十一回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十一回】

Written by 松田晋二
2020.02.05 Updated

第十一回「不安」 消えない不安を払拭するにはどうしたら良いだろうか。今思えば、大人が投げかけた励ましの言葉は無力だった。自分を信じろとか、やってきた努力は報われるとか、説得力のない定型文の台詞はそいつを消し去るには余りにもひ弱だった。上手くプレーできないかもしれない。痛みは治るだろうか。一度生まれてしまった不安は誰の言葉でも拭われる事はない。ただただ、頭の中に言葉としてたどり着くだけで、実感として

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十回】

Written by 松田晋二
2019.12.10 Updated

第十回「暗影」 福島の冬は寒いというより痛い。そんな記憶が甦る。肌を突き刺すような風が吹き抜け、日差しでは追い付かないくらいの冷たく凍えた空気が支配する季節。なぜか思い出すのは曇り空。樹々も枯れ果て、夏の山々の深々とした緑色や、絵具のような空の青と白の鮮やかさから一変、街はとても寂しく錆び付いた景色に染まっている。そんな冬の始まり。 放課後、毎日のように小学生最後の試合、東白リーグに向けた練習は行

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第九回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第九回】

Written by 松田晋二
2019.10.10 Updated

第九回「距離」 2学期が始まると、クラスはいつもの雰囲気とは違いどこかよそよそしさが漂っているようだった。いやひょっとしたら、みんなは何も変わらなくて自分だけが感じていた距離感なのかもしれない。仲が良かった友達とも水泳練習のおかげで1ヶ月も会わなかったのだから、流石に久しぶり感がある。そして、自分から積極的にその距離を埋めようとするも、怖さの方が勝ってしまっていて縮められずにいる。きっと友達たちは

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第八回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第八回】

Written by 松田晋二
2019.08.06 Updated

第八回 「残照」 小学6年の夏休み。そんな対外試合の他は、なんとなく曖昧な形でサッカー部の活動は行われていた。曖昧な形というのは、水泳部というのが存在しなかった僕の小学校では、一年に一回の郡の水泳大会に参加すべく、他の部活動からメンバーが召集され、水泳の強化練習が行われていたからだ。サッカー部のほとんどのメンバーが、水泳が得意でそこに参加していて、残されたメンバーは3、4人しかいない。真夏の炎天下

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第七回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第七回】

Written by 松田晋二
2019.06.11 Updated

第七回「鍛錬」 初公式戦が終わってしばらく時間が経ち、試合の事も少しずつ忘れ始め、平穏な日常に戻りつつあった。部活自体が試合に勝つ為に日々真剣に練習しているのとは違って、放課後の時間を持て余した子供達の遊び場的な場所だったので、勝敗の結果を引きずり、いつまでもうじうじ言ってくる奴もいなかった。 キーパーは奥が深い。反射神経、ジャンプ力、瞬発力、判断力、勇気。それのどれが欠けても失点に直結する。今振

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第六回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第六回】

Written by 松田晋二
2019.04.05 Updated

第六回「勝負」 高鳴る心臓を鎮めるように息を大きく何度も吸った。ベンチへ戻りPKを蹴る選手の名前が呼ばれる。初試合で初PK。よしよし、きたぞ。一本でも止めればヒーローだぞ。緊張とワクワクとドキドキが全部混ざったような震えが襲う。蹴る順番が決まり、審判のいる片方のペナルティエリアまでみんなで歩いていく。味方の選手も言葉数が少ない。とにかくやるしかない。あんなに試合中、止めたい止めたいと願ってたじゃな

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第五回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第五回】

Written by 松田晋二
2019.02.06 Updated

第五回「試合」 ゴールキーパーは、サッカーにおけるフィールドプレーヤーの中で唯一手を使える選手。 ボールを蹴りたくて、シュートを決めたくてサッカー部に入った子供からしたら何でキーパー?キーパーは余った選手がやるポジションでしょ?ジャンケンで負けた奴がキーパーね。そんな会話が飛び交うくらい当時の少年サッカーではキーパーは日陰のポジションだった。今でこそ少年サッカーにおいてもキーパーから始まる攻撃のビ

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第四回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第四回】

Written by 松田晋二
2018.12.06 Updated

第四回「練習」 子供の頃、僕の街には目新しい遊び場は何一つなく、夏は川遊び、秋や冬は山遊び、それ以外は公園や駐車場で鬼ごっこやボール遊び。それが基本的な学校以外の時間の過ごし方だった。塾やスポーツ教室などもなければ習い事といえばそろばん塾が一つあったくらいで、とにかく学校以外の時間をどう使うか暇を持て余していた。 遊ぶ約束をしなくて済む部活動は、そんなに社交的じゃなかった自分からすると、自動的にみ

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三回】

Written by 松田晋二
2018.10.04 Updated

第三回「入部」 小学生の部活動に入るきっかけは友達の影響も大きい。僕もそのひとりだった。運動系の部活は、ソフトボール、サッカー、バスケットボールだけだったので活発な子達は大体そのどれかに入った。当然、野球っ子だった僕はソフトボール部に入りたかったのだけど、仲が良かった周りの友達がほとんどサッカー部に入ると言っていて、あまり自分から意見を言うのが苦手だった僕は、友達の「お前ももちろんサッカー部だよな