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COLUMN

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十二回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十二回】

Written by 松田晋二
2021.12.03 Updated

第二十二回「帰路」 部活漬けの毎日が続く。夜は日が暮れるまで練習をして、帰るのはだいたい夜八時過ぎ。家に着いたらご飯を食べて風呂に入って寝る。そんな平日を繰り返していた。 中学校までの距離も結構あって、二キロ弱の道を歩いて通う。今振り返ると凄く遠かったなと思うけど、あの頃は友達とわいわい話しながらそれも楽しい時間だった。その道の途中に神社に続く長い石段があって、そこに腰掛けてジュースを飲みながらみ

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十一回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十一回】

Written by 松田晋二
2021.10.04 Updated

第二十一回「社会」 中学生は、子供から大人へと変わりゆく季節の扉を初めて開く時期だったんだと今になると思う。小学生の頃の無邪気さも薄れ、あどけない表情を残しながらも骨格や体つきはしっかりとしてくる。体も心も大きく変わり始めるその扉を開けるのはほんの些細なきっかけであるし、他からの影響が大きい。というかそれが全てであると思う。あまりにも情報を得る手段が少なすぎたあの時代では、他からの影響とは友達や先

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十回】

Written by 松田晋二
2021.08.04 Updated

第二十回「先輩」 そして、サッカー部はというと、最上級生の三年生の最後の試合、中体連大会が夏前に行われる事になる。もしそこで負けてしまうと、部活は引退となり、あとは受験勉強へと向かう。その試合へ向かう三年生の気合いは半端ない。その時ばかりは学校生活における先輩とはまた別の姿を見せる。ジャージや制服はヤンキー風に改造できても、ユニフォームという魔法は、全て一つの中学三年生という種類にまとめ上げ、誰ひ

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十九回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十九回】

Written by 松田晋二
2021.06.02 Updated

第十九回「中学」 中学生になると言っても、この町から出る訳でも電車で遠い場所に行く訳でも無い。今までより通う距離が少し遠くになるだけで、小学校で六年間過ごした同じ顔ぶれが、そのまま中学校でも続く。そこへ別のいくつかの小学校からも生徒が集まってきて、学年のクラスも小学校の倍くらいの人数で、少しだけ賑やかな学校生活が新しく始まる。小学校の卒業式は取り分け特別な気持ちもないまま終わった。この感じのまま、

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十八回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十八回】

Written by 松田晋二
2021.04.05 Updated

第十八回「卒業」 年末の納会が終わり、年が明けて3学期に入るとだんだんと卒業に向けての準備が始まっていく。卒業アルバムの撮影をしたり、卒業文集に載せる作文を書いたり、クラスごとのページを作成する係を決めたり、まだだいぶ先に思える春の予感よりも、そういった準備の中で小学校生活の終わりを少しずつ実感しながら過ごす日々が増えていった。今でも覚えている、卒業文章に書いた自分の夢はサラリーマンだった。199

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十七回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十七回】

Written by 松田晋二
2021.02.08 Updated

第十七回「終宴」 試合が終わると、ホームグラウンドである自分達の校庭の片付けが始まった。夕暮れ前に、手伝いに駆けつけた親や先生達とゴールを移動したり、荷物を広げていたブルーシートを畳んだり、戦った他のチームを見送りながら、賑わったサッカーグラウンドはまたいつもの校庭へと姿を戻していく。試合結果は、1勝2敗で4チーム中3位だったものの次の大会へは進めず、ここで小学生年代の公式戦は全て終了となった。毎

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十六回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十六回】

Written by 松田晋二
2020.12.02 Updated

第十六回「決意」 相手チームのロングシュートが外れたあと、高鳴る鼓動が落ち着かぬままゴールキックから試合が再開する。グラウンド上にはなんとも言えない響めきが漂っている。保護者の観客がそんなに沢山いたわけではないが、明らかにさっきのシュートで会場の空気が変わったように感じる。「いけるぞー」俄然、相手チームの声も出ている。一呼吸ついてボールを前線に蹴り飛ばす。真ん中くらいで、その相手のキャプテンを中心

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十五回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十五回】

Written by 松田晋二
2020.10.02 Updated

第十五回「鼓動」 弁当を楽しんでいる時間が終わり、食べ終わった人からボールを蹴ったり、走り回ったりしている。みんなまだまだ体力はありそうだ。前半後半15分ずつ。合わせて30分を3試合。このリーグ戦で2位までに入れば、次の県南大会に進む事になる。後々聞いて分かった話だが、このリーグ戦は全国少年サッカー大会の地区予選も兼ねていて、ここで上位になると、県南大会、県大会、全国大会と小学生最後の全国に繋がる

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十四回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十四回】

Written by 松田晋二
2020.08.05 Updated

第十四回「休息」 勝利で終わった一試合目の後にお昼を挟む事になり、みんなで軒下にブルーシートを引いて持参した弁当を広げた。次の試合に向けて束の間の休息だ。田舎で育った僕らは、当時の時代もあり、いつもと違ったよそ行きのおかずが並ぶ弁当は特別だった。というのも、夕食は決まって家族で食卓を囲み、母親の手料理を食べる。お爺ちゃんお婆ちゃんがいた自分の家は特にみんなが食べれるよう、煮物があったり、漬け物があ

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十三回】

THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十三回】

Written by 松田晋二
2020.06.10 Updated

第十三回「奮闘」 寒々しい冬の空気がグラウンドを支配している。時より吹き抜ける風が痛々しいほど肌を撫でる。走り回る仲間達と相手選手の身体から白く湯気が立ち込める。一心不乱に汚れたボールをみんなで追いかけ回す。ただ呆然と立ち尽くしている訳ではない。研ぎ澄まされているような、興奮しているような、何故かどこか冷めているような感覚で戦況を見つめている。自分の出番がなければ勝てる。この1点を守り切れば勝てる