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INTERVIEW

Japanese

瀧川ありさ

2016年11月号掲載

瀧川ありさ

Interviewer:吉羽 さおり

2015年3月にシングル『Season』でデビューしたシンガー・ソングライター、瀧川ありさ。移り変わる季節や、その香りや情緒が引き出す思い出、心の機微を、繊細且つふくよかなヴォーカルで描いてきた物語が、いよいよ1枚のアルバムになった。"at film."(読み:エーティーフィルム)と名づけられた1stアルバムには、13編の、私やあなたや誰かの物語が並ぶ。ふとした音の景色や旋律に、懐かしい記憶を引き出される感覚が味わえる作品だ。1stアルバムとして、瀧川ありさはここにどんな想いを封じ込めたのか。彼女の見る景色はどんなものなのか。その話を聞いた。

-デビューから約1年半を経て、充実の1stアルバム『at film.』が完成しました。タイトルにもあるように、映画のような、様々な物語がたくさん詰まったアルバムになりましたね。1stアルバムとしてどんな作品にしようと思っていましたか。

1stシングル『Season』から、季節と風景、それを取り巻く人間模様や思い出についてを歌ってきて、それをひとつの集大成にしたいなと思っていたんです。"at film."というタイトルをつけたのも、映画のような風景だったり――"at"は、私のイニシャルと、あとはその場所でという意味合いのatで。このアルバムがひとつの映画だとしたら、聴いてくれる方にこの場所、この世界を楽しんでほしいという思いを込めて名づけたタイトルなんです。

-自分でアルバムを作るならこういう作品にしたいというヴィジョンは、昔からあったんですか?

季節をちゃんと区切っていきたいなとは考えていたんですけど、今までリリースしてきた5枚のシングルでいろんな季節のことは歌えたので。季節感は大事にしながらも、それだけにはとらわれず、アルバムでしかできないことをたくさんやりたいなと思ってました。それはできたかなと。

-デビュー曲の「Season」(今作のTrack.1)から「色褪せない瞳」(2016年9月リリースの5thシングル表題曲/今作のTrack.4)まで、シングルを5作リリースしてきました。アルバムの制作として、本格的にスタートしたのはいつぐらいからですか。

本格的にスタートしたのは「色褪せない瞳」と同時期くらいだったので、この夏は全部アルバムの制作期間になったんです。曲に関しては、デビュー前の曲から新曲まで入っていて、より自分というものを表現できたかなと思います。「アイセイハローのすべて」(Track.12)と「日々モノクローム」(Track.5)は昔の曲なんですが、ライヴではずっと未発表曲としてやってきました。

-「アイセイハローのすべて」は、瀧川さんの曲らしい、キラキラとした切なさや物語性がありますが、いつごろ作った曲ですか?

19歳のころです。当時感じていたいろんなワンシーンを取り上げているんです。最近になって、諸行無常が自分のテーマだなって気づいたんですけど。過ぎ去っていくものをどう捉えるか、なんですよね。10代のころは、それをすべて悲しいと思っていたんですけど。大人になるにつれて、それを悲しみだけでなく、受け入れられるようにもなってきていて。この曲では、過ぎ去っていくものへの悲しみもありつつ、それを踏まえて今を生きようというメッセージが込められていますね。

-10代で"過ぎる今を生きていくよ"という無常観のあるフレーズって、なかなか出てくるものじゃないと思います(笑)。

そうですね(笑)。別に悲しむのも悪いことではないと思うんです。それさえも肯定して、とにかく今、過ぎていく時間を懸命に生きたいなと思って。書いた当時は言霊のような感じで、そう生きていきたいと思って書いたんですけど。こうして今歌ってみたときに、ちゃんと自分の思いになっていました。歌が昇華できたというか。

-そういうふうに、書いたときから時間が経ってみて、新たな意味を見いだすような曲は多いんですか?

シングルでは多いですね。リリース当時に歌っていた自分と比べて、こうしてアルバムに収録されて通して聴いたときに、いい意味で違った曲に聞こえて。感動しちゃいました、勝手に。

-1stシングルの表題曲の「Season」は、アルバムの1曲目にもなりましたが。シングルのリリース時とはまた全然違った景色をアルバムで生み出していて、今作を象徴する曲にもなっていますね。

それはすごく感じました。本当に、アイデンティティになったなと思います。これはデビュー前に、それこそ最初はひとりぼっちで、想像でしかなかった日々を書いた曲だったので。それが今は、一番たくさんの人の前で歌ってきた曲になりましたし。最後の、"どうか忘れないで/今その目に映る幸せ"という一節が、自分の中で日を追うごとに説得力が増してきました。いつ歌っても、この最後の一節は意味合いが変わってくるんだろうなと思います。

-改めてアルバムを通して聴いていると、歌の主人公が"僕"だったり"わたし"だったり、あるいは特に一人称はなく、主観的な目線で歌う曲だったりといろんなパターンがあります。そこは自分自身で作るときに、切り替えているんでしょうか。

一人称で歌うときもありますし、誰かの人生をただ書き下ろしたいときは、誰かになったつもりで。例えば男の子の目線で書いた「夏の花」(Track.9)は、憑依じゃないですけど、そういうふうに書いていたりして。曲によって全然違うんですけど。でも、実はその主人公たちはアルバムの中でも一貫していて、同じところにいる女の子だったり、男の子だったり、同じ人物の別のときの曲があったりするんです。そうやって視点はいろいろあるんですけど、繋がっているんです。

-それは、気づいたら繋がっていたなというものですか?

昔からなんですけど自分の中に、ひとつの街があったりして。10代のころにも、そこに住んでいる人たちのことをひとりひとり描いていたりしたんです。そういうスタイルが私らしさなんだと思います。