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INTERVIEW

Japanese

illion

2016年10月号掲載

illion

Interviewer:沖 さやこ

RADWIMPSのフロントマン、野田洋次郎のソロ・プロジェクト illionが3年ぶりに再始動。7月にFUJI ROCK FESTIVAL '16で待望の日本初公演を行い、その直後に東阪ツアーを回った彼が、10月に2ndフル・アルバム『P.Y.L』をリリースする。RADWIMPSでも8月にアニメ映画"君の名は。"の劇伴を収録したサウンドトラック『君の名は。』をリリースし、11月にもフル・アルバム発売を控え、野田の制作意欲は加速するばかり。そんな今の彼にとってillionは、パジャマ姿で音楽を楽しめる場所だという。彼がインタビュー中に何度も口にした"楽しい"という言葉の真意をじっくりと探った。

-今回illionが3年ぶりに再始動した経緯を教えていただけますか。

もともとは"7月に国内でライヴをやろう"というところから始まったんです。本当は3年前に国内でもライヴをするつもりだったんですけど、いろいろあってできなくて(※illionの初ライヴは2013年3月のロンドン公演。同年5月に日本でのフェスに参加が決まっていたがフェス自体が中止になったため、2016年7月に行われた"FUJI ROCK FESTIVAL '16"&東阪ツアーが日本初公演シリーズとなった)。だから"まだ国内ではライヴをやったことがないし、やるんだったら新曲が何曲かあった方がいいね"という始まり方でした。それでRADWIMPSの『君の名は。』(※2016年8月リリースのサウンドトラック)の制作が全部終わってillionの新作を作り始めたら、思いのほか楽しくなっちゃって......。なんの無理もなくどんどん曲ができちゃったんです。

-もともとillionは7月にEPをリリースする予定だったんですよね。それが急遽中止となり、10月にフル・アルバムをリリースすることがアナウンスされた。その理由は、曲がたくさんできていったからだったと。

"このほとんどの曲がEPに入らないんだな"と思ったら悲しくなっちゃって......。(スタッフの)みなさんに、"フル・アルバム出させてください。ごめんなさい"とお願いしました(笑)。みんなには迷惑をかけたけど、面白いものができたなと思いますね。

-"楽しく制作ができてたくさん曲が生まれた"という無邪気な理由でリリースの予定が変わるのは、今の時代ではとても夢があって素敵だと思います。

素敵......ですかね? そんなふうに褒められたらどんどん調子に乗ってまたそういうことしちゃうな(笑)。劇伴ではオーケストレーションを用いたり、いつもとは全然違う脳で曲を作ったことで自由に発想が広がって。そのあとillionを動かすにあたって、"Max"(※作曲家などが使用しているソフトウェア)という武器も手にしていたので"コンピューター上のソフトでトラック・メイキングやサンプリング、プログラミングを作ってみよう"という意識が芽生えたんです。いざ作り始めてみると前のillionとも、劇伴のときや普段のRADWIMPSともまったく違って――その場で生まれたリズムに対してその場で"面白いな。何を乗せよう? じゃあこれを乗せてみよう"というか。曲を作るというよりはセッション的にほぼその場で生まれるトラックに対して(音を)乗っけていく、という感じの作業。だから歌(を考えたの)は全部最後。途中で閃いたものはメモっておいて、止まることなく考えることなく......。家で作った曲はほぼないんです。スタジオに入って、生まれたビートやトラックをただただ重ねていく。実験場みたいな感じでしたね。

-スタジオで制作していたんですね。ソフトウェアを使ったトラック・メイキングが多かったので、てっきり自宅で作っているのかと。

ほぼ家でできることなんですけど、僕は家にいるとだんだん根詰めちゃうんですよ。『P.Y.L』はスタッフ3人くらいでスタジオに入って、決まった時間で作って。自分だけで作っていると"これでいいのかな?"と思う瞬間が結構あるけれど、見守ってくれる人がいると "こっちの方がいいんじゃない?"、"こうしてみたらいいんじゃない?"と道しるべになってくれるというか。人がいると安心するんです(笑)。

-(笑)"Max"を手にしたきっかけとは?

ちょっと変わったクラブを経営している友達が、去年あたりから"洋次郎君にすごく合うと思うんだよね~"とすごく薦めてきて。でもそのときはRADWIMPSで対バン・ツアー(※2015年11月に開催した"10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤")をやったり、一昨年の秋からずっと劇伴を作ってたから、"ちょっとうっせーな、俺やることあるから!"と思ってて(笑)。その終わりが少し見えてきたかなーというタイミングに、また薦められたからやってみようかなと。

-それがいつごろですか?

んー、いつだったっけな......今年の2月くらいかな?

-まだ半年前の話(笑)!(※取材日は8月30日)

僕も面倒くさがりのわりに意外とハマり症なので、いざソフトが使えるようになるとどんどんのめりこんじゃって、楽しくて仕方がなかったです(笑)。サンプリングのやり方やフリー・ダウンロードの音源も教えてもらって、それプラス自分の持ってるギターやピアノのノウハウに、今回から"Logic"というソフトも使うようになって――"今まで手元になかった楽器、これで何ができる?"という提示をされた気がしたんですよね。そしたらイチから音楽を始めるような新鮮さがあって。

-そこからビートを主体にした音楽で、実験するモードになっていった。

そういう音楽をやっている人と交わる機会も増えて、少しずつ自分の中でビートのある音楽やヒップホップのアンテナが育っている感覚もあったんです。とはいえそれをやる機会もなかなかなかったから最初はどうなるかもわからなかったんですけど、やってみたら意外とすごくフィットして。"できあがったものに無理なく自分の歌を乗っけられるな"というのが感覚としてわかったんです。先に出した「Water lily」(Track.4/2016年7月に先行配信リリース)とか、「P.Y.L」(Track.6)や「Wander Lust」(Track.8)とか、4、5曲がババッとできちゃって、"おぉ、これは面白い! これはひとつの作品にまとめるべきだな"と思って。「P.Y.L」や「Wander Lust」は、ほぼ1日であの(音源に収録されている)状態ができあがりましたね。

-「P.Y.L」や「Wander Lust」はリズム主体で、「Water lily」はリズムとメロディの融合性を感じさせるアプローチの楽曲だと思いました。

偶然性とサンプリングでトラックを作って......「Water lily」はさらに今までの自分が持ってる要素を五分五分で掛け合わせようという実験でもあったので、ちょっと(制作に)時間が掛かりましたね。そういう試行錯誤はありながら、明確に"新しいところに行けたな"と思えて、すごく手応えはありました。前まで"作品"というものは気張って力を入れるイメージがあったんだけど、今は、"今あるものを自然体でそのまま残せればいいな、それでも十分面白くなるな......"という、ちょっと肩の力が抜けた状態での自信が昔よりはあって。