Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Overseas

THE INSPECTOR CLUZO

 

THE INSPECTOR CLUZO

Member:Laurent Lacrouts(Gt/Vo) Mathieu Jourdain(Dr)

Interviewer:菅谷 透 Translator:川原 真理子

僕たちは文学作品に書かれていることの中に答えを見つけている。SNSやネットでは見つからないものだよ


-「As Stupid As You Can」はエネルギッシュなサウンドで、消費社会や愚かさに対しての批判を描いていますね。

Laurent:この曲はギー・ドゥボールについてだ。彼の本"スペクタクルの社会"についてなんだよ。僕たちは、あらゆる題材のレベルを低下させている。格差の広がりは、多くの題材のレベルの低下を促進させているんだ。特に生態学がそうだね。アメリカでは、レベルを低下させることを"as stupid as you can(底抜けにバカ)"と表現するんだ。これは、ギー・ドゥボールの本に載っているものを、よりアングロサクソン的な用語にしたんだ。僕たちはレベルをすごく下げてすごくシンプルにして、大量消費主義や唯物主義に走っている。僕たちは生態学や政治に対する疑問に、もはやちゃんと答えていない。あまりにもシンプルにしているからだ。
シンプルなのは素晴らしいことじゃない。素晴らしいこともあるけど、そうでないこともある。生態学は科学だ。"肉を食べてはいけない。そうすれば地球を救える"、"飛行機に乗るな。そうすれば地球を救える"というのは、たしかにある意味本当だけど、完全に本当なわけではない。だから、間違っている。肉を食べないから地球を救えるわけじゃないんだ。有機野菜を食べたらそうだけど、産業野菜を食べるくらいだったら有機肉を食べたほうがマシだ。そっちのほうがいいよ。シンプルにすると、物事がバカげてくる。そして、人々に逆の真実を与えてしまう。気候変動なんて起こっていないと言う人たちがいる。"as stupid as you can"のメンタリティがあるからだ。そのことについての曲だよ。

-「Catfarm」はレゲエ調のサウンドと骨太のリフが心地いい楽曲で、MVでは農場での猫の様子が描かれています。あれはあなた方の猫なのですか?

Mathieu:そう、ビデオに出てくる猫は、農場にいるうちの猫なんだ。ティチューっていうんだよ。この曲は、子猫だった頃のティチューにインスパイアされたんだ。そこらじゅうを飛び跳ねていて、クレイジーだったからね。この曲は、アルバム中唯一の楽しい曲だと言える。Laurentがベースなしにレゲエ調の曲をプレイするのはチャレンジでもあったけど、"これはやってみないといけないな!"と思ったんだ。

-ジャケットも猫と農場の写真になっていますが、こちらは違う猫ですよね?

Mathieu:そう、違う猫だ。ジャケットの猫は友達の猫でね、ナッシュヴィルでレコーディングしたときに滞在していた家にいたんだよ。僕たちはそこで彼等と過ごしたんだけど、うちの町から連れて来たカメラマンがそこここで写真を撮ったんだ。僕たちにはジャケットのアイディアがあったけど、あの写真は"これをアルバム・ジャケットにするから"と言われたんでそうしたまでだよ。

-表題曲「Less Is More」についても詳しく教えていただけますか? ラウドなサウンドとハイトーンのヴォーカルが印象的なナンバーです。

Mathieu:アルバム・タイトルを決める前から、この「Less Is More」という曲があったんだ。全てが歌詞に込められていて、"ドラムとギターとヴォーカルだけという少ない編成でも、ビッグなフルレンジ・サウンドのものが作れるんだ"ってことを言っている。食べ物についても同じことが言えるね。日本もフランスもアプローチは同じで、僕たちは商品そのものを大切にしているから、とてもおいしいものを作るよう心掛けている。そのことについても語っているんだ。そして"Less Is More"はアルバム・タイトルとしてもいいと思ったから、これに決めたんだよ。

-「Workers」では、LED ZEPPELINを思わせるようなコード使いを感じました。

Laurent:冒頭はLED ZEPPELINっぽいかもしれないけど、その他はNeil Young風だね。(肉体)労働者である人たちについて語るのは重要なことだと思うんだ。西洋諸国にはそういった人はもうあまりいない。でも、特にフランスの農家には労働者のコミュニティが根強く残っている。フランスは未だに食料自給国だからだ。フランスだけで食料をまかなえる。輸入もしているけど、外国からの食料がなくてもやっていける。これは、西洋諸国としてはかなり稀なことだ。西洋諸国では今や、誰もがコンピューターを使って仕事をしているんだからね(笑)!
僕たちは、働いている全ての人たちについての曲で彼等を称えたかったんだ。僕たちに食料を供給してくれているのは彼等なんだからね。農家を営んでいる僕たちもある意味そうだけど、そんな人たちはもはや自分の国にいないことがある。他の国々の人たちが供給してくれているんだよね。だから、ものを買うのは当たり前のことじゃないんだってことを、若い世代が理解するのは重要なことなんだ。その背後には働いている人たちがいる。そしてその人たちは、自分の国にいないことがある。だから、かなりの額を支払わないといけない。
この曲はそのことについてで、グローバル化の結果を表している。僕たちの国にも労働者はいるけど、グローバル化のせいで特に西洋諸国が外部化している。だから、僕たちの労働者は今や外国にいる。それでも、労働者であることに変わりはないから、彼等のことを考慮に入れないといけないんだ。

-「Almost Cut My Hair」は、CROSBY, STILLS, NASH & YOUNGの楽曲を荒々しいギターとヴォーカル、ドラムで再構築しています。このカバーは以前からライヴで演奏していたのでしょうか?

Laurent:そう、昨日はNeil Youngの前で演奏したんだ。

-なるほど! 彼は何か言っていましたか?

Laurent:いや。でも今のところ順調だよ。この曲を始めるとオーディエンスはいつも"おぉ!"って感じになるから、僕は上手く歌うよう心掛けている。できるだけ謙虚且つ正直に歌うようにしているよ。

-「Journey Men」は他の曲とは異なるアコースティック・ギターのソフトなサウンドですね。この曲はこのような形で作られたのかもしれないと思いました。内容はツアー生活が語られていますが、この曲についても伺えますか?

Mathieu:その通りだ。「Journey Men」はスタジオでマイク1本だけでライヴ・レコーディングされたんだ。Laurentがギターの弾き語りをして、僕はレコーディングしたスタジオの廊下の後ろにいた。もろにブルースな感じのテイクだったね。内容は、僕たちが行ってきたツアーについてなんだ。
例えば、南アフリカで体験したことについて。僕たちはカージャックされたんだ。幸い男は銃を持っていなかったけど、持っていたら僕たちは死んでいて、そのことについて歌うこともできなかっただろう。ペルーは高地だから、山の高いところまで行って森でのフェスティバルに出演した。アメリカでは、フランス訛りの英語を理解してもらえなかった(笑)。"おい、君たちここでは変に聞こえるよ! どこの出身?"って言われたから、僕たちはお返しに、"君たちのほうこそ、僕たちには変に聞こえるよ!"って言ってやったんだ(笑)。あれはおかしかったな。素敵なところでも、変なところでもライヴを行ってきたから、そのことについて歌っている。僕たちは世界中を回って音楽をプレイしてきて、様々な体験をしてきたけど、そのことが歌で語られているんだ。

-ところで、2014年に"フジロック"で来日した際に、日本のテレビ番組("YOUは何しに日本へ?")の密着を受けていたのが印象に残っていますが、当時のことは覚えていらっしゃいますか?

Mathieu:あぁ。

Laurent:そうだったね。

-ファンからはどのような反響がありましたか?

Mathieu:あれはおかしかったな。僕たちが東京に到着すると、ビデオカメラを持った若い男が近付いてきたんだ。

Laurent:学生みたいだった。

Mathieu:そう、学生みたいで、"あなたたちを撮影してもいいですか? 密着していいですか?"って感じだった。それで僕たちが、"いや、僕たちは疲れていて、これから「フジロック」に行くんで時間がないんだ。でもありがとう"と言ったら、彼はそれがテレビ番組のためだということを言ってきた。でも僕たちは何も分からなかったから、当時のレーベル・マネージャーを呼んだんだ。

Laurent:向こうから連絡があってね。"君たちは超有名なテレビ番組を蹴ったんだよ!"って言われたよ(笑)。"でも彼は学生みたいに見えたんだ"って僕は言った。彼は自己紹介しなかったから、"どうもありがとう。でも、僕たちは疲れているんだ"と丁重に断わったんだ。その後、レコード会社が先方に連絡して謝罪し、"何かやってくれないかな?"と言われから、僕たちは承諾した。日本では人気番組なのかもしれないけど、僕たちにはどうってことなかった。なんだか分からなかったんだから。
それに正直言うと、僕たちはフランスのテレビには出ないんだ。僕たちにとってあまり興味のあることではないんだよ。出ることもあったけどほんのわずかで、メインストリームのメディアには出ない。こういうインタビューは受けるけどね。さっきも言ったように、僕たちは本のほうがずっと興味がある。深いものが好きだけど、テレビはそうじゃない。常に表面的で速くて、とても間違っていることがある。あれは良かったよ。楽しかったけど、これは重要だからとレーベルに言われたからやったまでなんだ。
でも、フランスではああいうことはやらないね。日本のテレビ、日本のメディアはとても礼儀正しくてリスペクトの念があるから、メインストリームであっても大丈夫だ。でも僕たちは、フランスを含むヨーロッパ諸国のメディアは受け入れない。彼等はクールじゃないからだ。日本のメディアはクールで良かったよ。ジョークも飛ばしていたしね。でも、僕たちの好きなことではないかな。僕たちは農場にいるほうが好きだよ。

-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

Laurent:2026年に日本にまた行けるよう頑張っているところだ。可能性は高いと思うから、『Less Is More』を日本に持って行こうじゃないか! そして、インタビューしてくれてありがとう。これも僕たちの役に立つからね。改めて、僕たちに対してずっと忠実でいてくれてどうもありがとう!