Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

有馬元気

2024年08月号掲載

有馬元気

Interviewer:藤坂 綾

4thメジャー・シングル『勇者の剣』をリリースする有馬元気。ドラマ"サバエとヤッたら終わる"のED主題歌であり、本人もドラマに出演ということで、リリースと合わせドラマの放送も気になるところだ。初のドラマ主題歌で、初の電波ソング。彼が持つ芯の強さがなければ、決して生まれることはなかったであろうこの1曲。有馬元気の可能性を秘めた本作について、たっぷりと話してもらった。

-有馬さん、すごいです。有言実行というか、願いを叶えたというか。

前のインタビュー(※2024年3月号掲載)のとき、俺はドラマやアニメの主題歌をやるんだって、遠吠えみたいにキャンキャン言ってましたからね、ただ吠えてるだけのやつにならなくて良かった(笑)。

-しかもこんなに早いタイミングで。

まぁまぁ早いですよね。これまでもタイアップはいっぱいやらせてもらってたんですけど、ドラマの主題歌は初めてなので、ドラマやアニメの制作はまた違うなということを勉強させてもらいました。今回はもともと"サバエとヤッたら終わる"って漫画があって、その漫画がドラマになって、そのドラマに対して曲を書き下ろすということだから、自分のエゴよりも作品のためだけの曲で、そこはもちろん理解してたんです。

-はい。

そこで今回はバラードとかじゃなくて、電波ソングというテーマがあって。僕、この前舞台挨拶にも登壇させてもらって、そのときも正直に話をさせてもらったんですけど、"電波ソングって、何?"って。YouTubeとかで聴いたことはあったからなんとなくのイメージは分かるんですけど、"電波ソングとはなんぞや?"と聞かれたら正直ちょっと分からなくて。なので、まずはGoogle先生で"電波ソングとは?"と調べるところから始めたら、いっぱいいろんな曲が出てきて、これはもう全部聴いていくしかないなと片っ端から聴いていきました。Daichi(鈴木Daichi秀行)さんにも相談したら、"これが分かりやすいよ"っていろんな曲を教えてくれたんでそれも全部聴いて。でも、どんな仕事でも納期というのはあって、今回なかなかタイトなスケジュールだったんですよ。

-どれくらいだったんですか?

僕の記憶だと、1週間なかったくらい。それくらいタイトな上に僕の知らないジャンルで、ほんとにこの電波ソングをやるのかってところで、いつも歌を録ってもらってるエンジニアさんとかと揉めるというか、喧嘩になるみたいなこともあったりして。でも、やっぱり僕は目の前のことを一つ一つ本気でやりたいし、こういうチャンスがあるんやったらどんなことだってやりたい。それに"サバエ(サバエとヤッたら終わる)"は読んだこともあったから、なおさらやりたい気持ちが強かったんですよ。

-はい。

そんななか、これは曲を作る前だけじゃなく作った後もずっと出てた話なんですけど、有馬元気としてのブランディングをちゃんと考えてるのか? って再三この部屋(インタビューを行ったスタジオ)で言われて、自分のことくらいちゃんと考えてるわ、やかましいわって。そもそもジャンルってなんなんだというところから、ヒップホップをやろうが、シティ・ポップをやろうが、ロックをやろうが、ポップをやろうが、僕が作ったらもうそれがジャンルというか、有馬元気がジャンル、それでいいんじゃないかと思ったんです。だったらこれは有馬元気だからいいじゃんと。そういう紆余曲折がありながら曲作りがスタートしたはいいけど、いざギターを持って曲を作るってなったら、"あれ? どうすればいいんだ"ってなっちゃうし、曲ができても歌を録るときに速すぎて、これ歌われへんわって。だからレコーディングのときもみそっかすに言われたんですけど、めっちゃ練習して、無事レコーディングを終えて、できあがってみたら、とてもこの短期間で作った曲とは思えないぐらい素晴らしい楽曲ができたなと思いました。

-満足されてますか。

もちろん、満足してます。自分のやりたい音楽はメッセージ・ソングで、特にバラードがやりたいっていうことはずっと言ってきたし、僕のことを知ってくれてる人であれば、言わなくても分かってることだと思うんですけど、今回その方向性とは全く真逆な楽曲だと思うんです。でもこのモニタールームで完成して聴いたとき、めちゃくちゃいいわと思ったし、僕はメッセージ・ソング、バラードやミディアムの曲で売れたいっていう気持ちがあるんですが、この曲は前言撤回ではないけど、これが先に売れてしまってもおかしくないかもって自分が度肝を抜かれたような、すごく中毒性があるキラーチューンだぞと。しかも今の時代にも合ってるし、毎回自画自賛ばっかしてごめんなさいですけど、逆にどうです? 今回どういう印象持ちました?

-最初はびっくりしました。よくここまで違うことができたなと。でもキャッチーだし、歌詞ももちろん原作に沿って書いたとは思うんですけど、そういうなかでも有馬元気が出ちゃってるかなって。

最初この電波ソングをやるって決めたとき、有馬元気を捨てようとしたんですよ。でもできたとき、僕も有馬元気っぽいなと思って。そこは偶然でもあるんですけど、主人公の宇治っていう男の子がすごいネガティヴ人間なんです。あそこまで僕がうじうじしてるかは分からないですけど、自分の気持ちをなかなか素直に言えないなかにも、どこか真ん中に芯があって、まっすぐでいたいっていう彼の気持ち、そこがマッチして僕っぽくも聞こえる歌なのかなと。

-でも、最初は有馬元気を捨てようと?

今回は全てをこのドラマのためにっていう気持ちで作品を書きたいと思ったんで、ここで有馬元気っぽいメロディを入れたり、爪痕を残したりしたいとは一切考えないようにしたつもりではありました。でも、自然と出てたらごめんなさい(笑)。この曲、全然飽きなくないですか?

-飽きないですね。

いろんな環境で聴けるというか、例えば家事しながらでも仕事行く前でも、どんな人でも聴きやすい楽曲じゃないかなって。

-それこそジャンル関係ないというか、いろんな世代の人が聴けるんじゃないかと。

この電波ソングというジャンルをやらせてもらって改めて感じたことは、今回はドラマなんですけど、僕はやっぱりアニメの主題歌もめちゃくちゃ合うアーティストやなって。それにアニメの主題歌に向いてる声だと思うんで、そこをぜひいろんな方に気付いてほしいですね。

-主題歌とかお題があったほうが曲を書きやすいっていうのもあります?

それはありますね。明確な何かがあればあるほど濃いニュアンスで書けるというか、いろんな表現の仕方ができる。濃いからこそ比喩表現もできるということもあって。僕の曲は基本的にフィクションでもノンフィクションでも、まず頭ん中でストーリーを構築して、その映像が見えて、それに沿って曲を書いてるんで、もしかしたら自分の頭の中のドラマの主題歌を書き下ろしてるのかもしれない。

-あー、なるほど。それ、なんだか素敵ですね。

本当にあった話か、架空の頭の中で書いた話に対して主題歌を書いてるだけなんで、そう考えると僕めちゃくちゃ主題歌書いてるじゃないですか。

-あはははは(笑)、そうですね。

もう100曲以上担当してますね。今回ドラマ一発目の曲で、誰も予想しないような度肝を抜くような素晴らしい楽曲ができたんじゃないかと。もしもの話だけど、初めてバズる曲がこれでいいの? みたいなことも大人の方は心配してくれてたんですよ。そこは一瞬悩みましたけど、電波ソングで売れたからといって電波アーティストになるわけではないし、自分のやりたい曲はこんな曲なんだよって明確にしていけばいいとそのとき思ったし、なんなら今回の曲が電波ソングっていう自覚があんまりないんですよね。めちゃくちゃいい有馬元気の曲やんって。だから最終的に辿り着いたのが、さっきも言ったように結局有馬元気というジャンルなんだよなと。J-POP、J-ROCK、有馬ロック......売れたら申請しようかな(笑)。

-大人の方が心配されたっていうのが、意味は違うかもしれないけど少し分かる気がして。というのも、これは有馬さんだから大丈夫なのであって、芯がブレブレの人がこれで売れちゃったら、その人その後すっごく大変なことになると思うんです。

分かります。今回のことに対して、仮に売れたとしても僕は絶対に勘違いしないっていう自信があって。というのは、まず主題歌の話をいただけたことに感謝だし、いろいろ吠えてきましたけど、東京に来てから周りの環境、仲間もそうだしメンバーもそうだしDaichiさんもそうだし、たくさんの人に支えられてここまで来たと思ってるし、そんな地盤もあっての今回だと思うんで、うぬぼれることは100パーセントないなと。強いてうぬぼれるなら、毎回ちゃんといい曲持ってくるなって思ったぐらいなんで。それに今回Daichiさんにアドバイスをたくさんいただいて、今まであまり言われることがなかったから、それもすごく嬉しかったんですよね。言ってもらえるってやっぱ嬉しいじゃないですか。言うことって労力いるし、気持ちがあるから言ってくれるんだし。だから、そういう意味でもさらにアップデートされた有馬元気なんじゃないかなって。それも含めて可能性がある曲になったなと思ってるくらいの自信作です。

-ドラマの主題歌になった経緯というのは?

コンペです。だからスケジュールがタイトだったっていうのもあるんですけど。僕ってもともと自分の声に自信を持てなかったアーティストなんです。なんならすごいコンプレックス。だから自分の声は世間的には選ばれないんかな、選ばれにくいんかなみたいな気持ちがずっとあって。ちょっとハスキーな声や、ちょっとしゃがれて太い声のほうが選ばれやすいんかなと思ってたところで、今回選ばれたということもあって、すごく嬉しかったし、めちゃくちゃ自信になりましたね。そしてですね、僕、ドラマにも出演させてもらうんです。

-おー、すごい! 撮影はもうされたんですか。

しました、しました。したんですけど、めちゃくちゃ緊張しました。キャストも関係者の皆さんも素敵な人しかいなくて、優しくていい方ばっかりなんですけど、覚悟を持って真剣にあの作品のためにって人が集まってるんで、気迫というか熱意というかがまた違うんですよね。撮影の帰りの車の中で、スタッフに"俺ってこんなにできへんかったっけ? 俺ってほんまあかんな"みたいなことをずっと言ってたのを今でもすごく覚えてます。2回目のときはプレッシャーがすごくて、整腸剤飲んで胃薬も飲んで行きましたから。でも、緊張しすぎてたら演者の方が声を掛けてくれてちょっと気持ちがほぐれて、監督さんと他のキャストさんも話し掛けてくれて、ちょっと褒めてもらったりもして、そこで一気にほぐれて楽しく撮影させてもらいました。もうほんとにね、1日目の自分に教えてあげたかったですよ、2日目は絶対大丈夫だからって。

-初めてのことってなんでも大変ですよね。でもいろんな経験をされて、可能性がますます広がっていってるんじゃないですか。

ほんとそうで、俺ってまだまだ伸びしろあるなって。この声を生かして声優もやってみたいし、可能性と夢はどんどん広がっていってるので、俺を早く見つけてくれ! と。