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INTERVIEW

Japanese

Arika

2023年06月号掲載

Arika

Member:夏吉 ゆうこ(Vo) 大和(Gt)

Interviewer:山口 哲生

-そして、1stライヴでは新曲も披露されていましたが、それらを収録した2nd EP『LENS』をリリースされます。前作『1440』(2023年2月リリースの1st EP)はコンセプチュアルな作品でしたけど、今作は作品自体に大きなコンセプトを設けて曲を作るというよりは、1stライヴに目掛けて曲を作っていくなかで生まれてきた楽曲たちなんでしょうか。

大和:そうですね。曲作りに関しては、まずそこでした。とにかく曲をいっぱい作らないといけないというのがあって。そのスケジュールも怒濤でしたね(笑)。

夏吉:怒濤でしたねぇ......。制作期間が本当に短くて。

大和:毎週曲を作って、毎週レコーディングするっていうだいぶヤバい感じでした。

夏吉:ヤバい速度で曲があがってくるから、私も急いで歌詞を書かなきゃ! って(笑)。

-"LENS"というタイトルはどこから出てきたんですか?

夏吉:これは曲が全部できたあとに相談して決めました。

大和:曲調的にはどれも前作の拡張というか。ノリがいいこともそうだし、歌詞も、遠くを見ているようなイメージもあれば、もっと内面に突っ込んでいくようなものもあるなと思って。それで、遠くを見るのにも、近くを見るのにも、レンズって使うよね? と。

-なるほど! めちゃくちゃ見事なタイトルですね。

夏吉:あとから付けたのに、なんでそんな沿ったタイトルができちゃったんだろうと思って(笑)。歌詞もそういうことを狙って書いていたわけでもないんですよ。すごく急いでいたから、あがってきた曲を聴いて、素直に出てきた言葉を当てはめていった感じだったので。曲のタイトルも結構土壇場までなかなか決められなかったんですよね。

大和:"アンリアル"は最後の最後まで決まらなかったですもんね(笑)。MVよりあとにできたんじゃなかったでしたっけ?

夏吉:そうでした! "MVにタイトルを載せなきゃいけないから早く決めて!"って言われて(笑)。

-そんな怒濤のスケジュールの中で最初にできた曲というと?

大和:「アンリアル」です。この曲のデモができたのは、『1440』がまだできあがってないときぐらいだった気がするんですけど、タイトルが決まったのは最後っていう(笑)。

-(笑)クールでダークなドラムンベースになっていますけど、それこそライヴを目掛けて作ったと。

大和:そうですね。激しめのやつというか、ノリやすくて、お客さんと一緒に声を出せそうなものを作ってみようかなと思って。

-クラップを誘発する感じもあるし、シンガロングできるパートもありますけど、あのメロディって歌うのが結構難しいというか。

大和:難しいです。(Arikaは)男性のお客さんが多いんですけど、男性が歌うにはちょっと高すぎた(笑)。

夏吉:たしかに!

大和:そこはあとから思いましたけど、まぁ、頑張ってくれ! って感じで(笑)。

夏吉:ははははは(笑)。委ねましたね。

-(笑)ああいうところに差し込むメロディって、比較的シンプルにすることが多いと思うんですけど、そこにひねりを加えているのはArikaらしいポイントでもあるのかなと感じました。

大和:わかりやすくすることも考えたんですけど、ちょっと違うかなと思って、あの感じにしてます。

-なるほど。そんなサウンド感に合わせて、歌詞はディストピア的といいますか。

夏吉:そうですね。スチームパンクみたいな世界観が浮かんだことと、たしかにメロディは難しいけど、ど直球でカッコいい! と思う曲だったので、あまりひねった歌詞は入れないほうがいいかもって思ったんです。だから本当に素直というか、ひねらずに、いわば少年漫画に出てくるような世界観のワードを詰め込んでみようって考え、そのあたりを意識して書きました。普段だったらもうちょっとこねくり回すと思うんですけど。

-サビの"何度だって救い出せる"は、それこそ少年漫画的ですけど、結局"救えないから"で終わるというのは、憂いのある歌詞に惹かれてしまう夏吉さんらしい部分というか。

夏吉:そうですね。ハッピーエンドで終わらせたくないっていうひねくれが発動しちゃいました。結ばれてたまるか! っていう。

大和:いいですねぇ。

夏吉:はははははは(笑)。ガチガチに世界観を固めていたわけではないんですけど、なんとなく、持ちつ持たれつで、もがいてるふたりの人物っぽいものを想像しながら書いたので、曲に出てくるワードが自然と対になっていった部分もありましたね。

-そんな「アンリアル」の次にできた曲というと?

大和:「蝙蝠」だったかな。

-前作の流れを汲みつつも、リズム・トラックが面白い曲ですね。夏吉さんのハイトーンもかなり強烈で。

大和:サウンド的には、それこそ『1440』っぽさを出したいけど、もうちょっとひねくれたものというか、やっていない手法のサウンドを作ってみようかなと。あと、この曲はメロディをちょっとヘンテコにしました。特にAメロはそういう感じにしていて。

夏吉:たしかにリズムが変則的な感じですね。

大和:うん。でも、ノリはわりと......変か。

夏吉:はははははは(笑)!

大和:ノリはわりとストレートって言おうとしたけど、ストレートではないなと思った(笑)。

-でも、自然と身体が動く心地よさはありますよね。

夏吉:そうですよね。ダークな感じは『1440』を下敷きにしているのかなと思ったんですけど、歌うと拍の取り方が難しかったりして新しいなぁと思ったので、歌詞もちょっと現代チックにしてますね。『1440』の曲って、わりとどの時代に当てはめても成立する感じなんですけど、「蝙蝠」は、例えば現代社会のワンルームでふたりの男女が暮らしていて、すごく鬱屈していて共依存してる感じ。そういったまさに今の時代で苦しんでいる人たちをわかりやすく書いてみようかなと思って、あまりぼかさずに書いてみました。

-歌詞はすぐに出てきました?

夏吉:出てきました。暗がりの中で歌われている曲なのかなと思ったときに、"蝙蝠"というワードが出てきて。コウモリって、仲間と助け合って、自分が吸ってきた血を分け合いながら暮らしているんですよ。そういう生態を知って、へぇー! と思ったので、これを現代に当てはめるなら共依存してるカップルだな! って。

大和:着眼点がすごい(笑)。

-ですね(笑)。その次にできた曲というと?

大和:「アンリアル」以外はほぼ同時だった気がする。その次にレコーディングしたのは、たしか「hypno blue」だったかな。

前作のインタビュー(※2023年2月号掲載)で、大和さんは"おしゃれな曲を作るのはあまり得意じゃない"とおっしゃっていましたけど、「hypno blue」はまさにその感じといいますか。

大和:その部分はちょっと意識してましたね。これもライヴで楽しみやすい曲を作ろうと思っていたんですけど、よくよく聴くと、AメロやBメロは全然そんな感じじゃないというか。結構暗くないですか?

-そうですね。サビでようやくというか。

夏吉:たしかに。サビで解放される感はありますよね。

大和:サビは結構おしゃれな感じですけど、これも「蝙蝠」と同じで、ちょっとヘンテコなメロディは入れてますね。Bメロとかも、リズムをかなり崩した感じにしたくて。「蝙蝠」と「hypno blue」はそういうリズム遊びをしてますね。変なんだけどちょうどいいというか、いい具合に気持ち悪くないというか。そういうところを目指してました。ただ、こういう曲を歌うとなるとやっぱり難しいので、(歌うのが)夏吉さんだから作れたところはありますね。

夏吉:いやいやいや! この曲のデモがあがってきたときに、どうしよう......! って(笑)。"自由に歌えるところは遊んじゃってくださいね"って、いつも委ねてくださるんですけど、この曲ってそれの最たるもので、これをライヴで歌うとなるとめっちゃ遊ばないと楽しくないから、そこが結構大変だなって思いました。歌詞は、ちょっと酔いどれながら、本当にいたずらに歌っているぐらいの空気感が合うかなと思ったので、"めっちゃ海!"、"真夏のジャンボリー!"って感じよりは、プールサイドで、すっごく怠惰に過ごしている人たちのイメージというか。

-サビの出だしが"嫌になっちゃうんだって"ですからね。

大和:いい歌詞ですよねぇ。

夏吉:わりとほろ酔いで今まであった嫌なこととかを振り返って、"いやぁ、でもここまで頑張ったよな、もう放り出してもいいか!"っていう、ちょっと怠惰な解放の仕方といいますか。

-怠惰であり、若干のやけくそでもあり。

夏吉:そうですね。"もうどうせ何やってもダメなんだから、今遊んでおかないとねー"みたいな。でも......私は素直に海の曲とか書けないんだろうなぁって思いましたね(苦笑)。"水着着ようよ"みたいなのって書けないんだろうな......。

大和:いやいや、いいじゃないですか。曲的に、この歌詞にだいぶ救われた感じがあるなって、僕は思ってますよ。普通におしゃれな曲を作るのって、ちょっと恥ずかしいんです(笑)。

夏吉:照れがある(笑)。

大和:でも、この歌詞がね、本当にやっぱりいいなと思って。

-素敵な歌詞ですよね。僕も好きです。サビの"とうにとうに"のところもメロディとすごくハマっていて気持ちがいいですし。

夏吉:嬉しいです。サビが軽やかで、ライヴでも手を振りやすい感じだなと思ったので、わかりやすく韻を踏んでみたかったんですよね。そこはすごく意識しました。