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INTERVIEW

Japanese

SCANDAL

2023年04月号掲載

SCANDAL

Member:HARUNA(Vo/Gt) MAMI(Gt/Vo) TOMOMI(Ba/Vo) RINA(Dr/Vo)

Interviewer:藤坂 綾

SCANDALが前作『MIRROR』より約1年ぶりとなるシングル『Line of sight』をリリース。表題曲はアーケード・カード・ゲーム"機動戦士ガンダム アーセナルベース LINXTAGE"の主題歌となっており、すでに配信がスタートしている。常に進化と深化を遂げ、それでいてより軽やかに自由になっていく4人の久しぶりのロック・チューン。2月にリリースされた映像作品『SCANDAL "Documentary film MIRROR"』の舞台ともなっている昨年のワールド・ツアーを振り返りながら、ここに辿り着くまでの道程、この曲に込めた想いをメンバー全員に訊いた。


自分たちの話をするとついつい涙が出てしまう。それだけ切実だからなんですよね


-2月にリリースされた映像作品『SCANDAL "Documentary film MIRROR"』に収録されている昨年のワールド・ツアー([SCANDAL WORLD TOUR 2022 "MIRROR"])、改めて振り返ってどんなツアーでしたか。

MAMI:毎年海外には行っていたので、自分たちの活動の中に海外公演というのは欠かせないものになってたんですけど、世界がパンデミックになって、日本でももちろん長い期間ライヴができなくて、海外にもなかなか行けなくて、それでも私たちのことをずっと待ってくれてる人たちがいて。だからやっと行くことができて嬉しかったし、海外のお客さんたちの生の声、表情、熱量を感じるためにこれまでも行ってたんだなって、やっぱり欠かせない場所なんだなと改めて実感しましたね。

RINA:すごく頑張った1年だったなって、そういう達成感があったツアーだし、1年でした。それまで当たり前にできていた活動が止まってからのリスタートというタイミングだったので、もしかしたらこの公演が最後になるかもしれないって気持ちを持ちながら、今まで以上に一本一本大切に回れたと思います。自分たちでもどんな映像になるかわからなかったんですけど、ホテルの中も楽屋もそうだし、移動日もカメラがずっと密着してる状態でのツアーだったので、ワールド・ツアーの一部始終が生々しく残る映像になって、大きな作品が残せたなと。

-ほんとに、リアルなそのままが詰まってますよね。

RINA:ライヴはもちろん言葉も着飾ることなく、全部生の気持ちですね。全然スムーズなツアーではなかったんですよ。メンバーが感染してしまって、アメリカ・ツアーは半分もできないまま中止になったんです。自分たちがライヴをできなかった悲しみとか悔しさもあったけど、この先どうなるんだろうっていう不安もあったし、大勢のスタッフがいてくれて、国内外の協力してくれてる人たちの生活もあるしといろいろ考えたとき、感じることがたくさんありすぎて。それも含めて一生経験できないような出来事があの期間には詰まっていて、そのリアルがバンドの歴史として伝えられる作品になったので、大変だったけどいいものが残せたなと今は思います。

-HARUNAさんはいかがです?

HARUNA:コロナが完全に終息し切っていない状況下でも海外を回るチャレンジができたということで、自分がSCANDALのメンバーであることに対しての喜びを改めて感じたし、メンバーがこの4人で良かったなというか、この4人でSCANDALであることの重要性をものすごく感じたツアーでした。自分たちが感染してしまったことへの恐怖もあったし、海外へ行くことへの恐怖も感じて帰ってきたので、ヨーロッパ・ツアーまでの1ヶ月半は心が折れてもおかしくなかったと思うんですけど、待ってくれてる人がいて、海外でライヴをやることをずっと大事にしてきたからこそ、気持ちを切り替えることもできたんです。ヨーロッパを回り切ることができたのは、ポジティヴなメンタルのメンバーだからこそだと思ったし、SCANDALというバンドの強さを改めて感じました。

-TOMOMIさん、いかがですか。

TOMOMI:コロナ禍でライヴが中止になってた頃は、このままずっとライヴができないかもしれない、活動自体もここで止まってしまうかもしれないって初めて本気で考えたんです。今までずっと平和に暮らしてきてたので、バンドの危機というものに直面して落ち込んでたんですけど、ワールド・ツアーにやっと行けることになったときは、まだバンドとして活動できるんだって嬉しかったですね。まだコロナが収まってなかったから怖い気持ちもあったけど、いざ回ってみるとライヴが一番好きなんだなって改めて感じて。途中で感染してしまって中止になった地域の人たちには申し訳なくて、それは未だに消えてない傷なんですけど、今日本でも声が出せるようになってきて、世界中からちょっとポジティヴなエネルギーを感じるから、活動を続けて、会えなかった人にもまたどこかで会えたらいいなと思います。

-このワールド・ツアーでよりいっそうタフになったんじゃないですか。

RINA:そうですね。それと同時に今のリアルな自分たちも見せられるようになったと思います。尖ってて強いだけじゃ嫌だなってあるときから思い始めて、女性として音楽をやることに誇りを持ってるし、大切にしてるところなので、もう少し柔らかかかったり、しなやかでいて繊細で、凛としているみたいな表現を音楽でできないかなっていうのを探すようになって、今はやっと両立できるようになったなと。めちゃくちゃ強くもあるし、同時にすごく弱いし脆いなって、今はその両極端なふたつがあると思います、自分たちにも、音楽にも。このスタイルは新しく見つけたような感覚があって、気に入ってますね。

-それを見事に表現したのがアルバム『MIRROR』で、これまでも生き様、人生がそのまま音楽に繋がっていたけど、『MIRROR』はその究極だなと。

HARUNA:リアルな気持ちとかリアルなモードを、その時々に作って出すというカタチをずっと取ってきてるので、それはもう如実に出ると思いますね。

TOMOMI:コロナ禍だったから、そのムードに合わせた暗い曲は作りたくなかったし、逆に大丈夫だよって無責任なことも言いたくなかったんです。だから何が正解かわからないまま、正解に辿りつかないままアルバムを作ったという感じで。だけどそれが自分たちの正直な今の状態、そのままを鏡に映したようなものだったから、それで良かったのかなと。

-不安というか、反応が気になったりしませんでした?

RINA:それは結構話したよね。

MAMI:嘘つきたくないし、つけないし、自分たちの今をそのときそのとき出していく音楽スタイルなので、それ以外は逆に作れない。例えば今できた曲を取っておいたとしてもまた1~2年経ったら気分が変わってるだろうし、だったらそのときの自分たちの音楽を聴いて、好きになってもらえるのがいいなっていう想いがあったから、あまり執着せずに今を出しましょうって。

RINA:最終的に、続けるために必要だよねって。需要に応え続けるだけのかっこ良さもあると思うし、求められてるものも理解してるつもりだけど、バンドって自分たち4人の人生でもあるから、そこに正直であることがお客さんに対しても大切だなと考えていて。チャレンジした結果、予想以上に受け取ってくれたという感覚があったので、やっぱり間違ってなかったなって思いました。

-それは自信に繋がっただろうし、そうやって自由になっていくことで、バンドに対しての手応えもさらに大きくなっていってるんじゃないですか。

RINA:それはもう間違いないです。正直にいることでどんどん自由になっていってる感覚はあるし、まだまだいろんなことができるなと。

HARUNA:数年前から、続けていくことに重きを置きながらバンドをやってるので、長く続けていくためにはどんな自分たちであるべきかっていうことを探ってるんですけど、となるとやっぱり年齢とともに変化していくことや、情勢とともに変化していく気持ちにはちゃんと寄り添って正直にいるべきだよねって。その4人の共通した想いがしっかりとあるので、今こういう表現ができてるし、バンドができてる気がします。

-HARUNAさんが先ほどおっしゃった"この4人で良かった"って、ワールド・ツアーの最終公演のパリのMCでおっしゃってましたよね。

HARUNA:はい。

-その言葉で他の3人が涙を流してて、ああいう場面って結構珍しいんじゃないかなと思ったのですが。

RINA:ここにきてライヴであんなに泣いたりするとか思わなくて、びっくりした(笑)。

HARUNA:年々涙腺が緩んできててね(笑)。自分たちの話をするとついつい涙が出てしまうって、それだけ切実だからなんですよね。

MAMI:自分たちがもちろんSCANDALなんですけど、SCANDALというバンドを支えている4人でもある感覚があって。これ、言葉で説明するのがとても難しいんですけど、演じてるとかそういうわけではなくて、なんて言えばいいのかな......。

RINA:わかるよ。自分たちのことなんだけど、自分たちの身体から一歩離れたSCANDALというバンドを大事に続けさせていく、4人で救っていく、みたいな感覚があるんですよ。このSCANDALというチームを途切れさせないように、4人で生きなきゃっていう責任感みたいな。

MAMI:SCANDALなんだけどSCANDALじゃないみたいな、SCANDALを客観視してるときもあったりして、だから自分たちもステージに立って演奏してるSCANDALなんだけど、あのときは一歩引いたときの自分たちのことを話してるような感覚になって、だからグッときちゃったんです。あんまりそっち側、そっち側って言うのも変なんですけど(笑)、それを人に話さないので、どっちものSCANDALである自分たちが、『MIRROR』を持って世界を回るっていう1年を成し遂げられたことに、感動したんですよね。

-TOMOMIさんはどんなお気持ちでした?

TOMOMI:いろんな気持ちがあったんですけど、簡単に行ける場所じゃないので、また行きたいな、また会いたいなって、そんなことを考えてました。

-RINAさんは?

RINA:日本にフェスのために帰って来てる期間もあったんですけど、それも中止になっちゃったりで、あのワールド・ツアー中は何もうまくいかない時期だったんです。進もうとするたびに扉閉められるみたいな、どこにも行けないみたいな感覚。でもとにかく日本にいる間にメンバーとスタッフで何度も話し合いをして、ヨーロッパ・ツアーを成功させられなかったら次に進めないかもみたいなギリギリな感じもあって。でもいざ行ってみたらびっくりするくらいいいライヴをし続けることができて、こんなにもくじけそうなときに、こんなにもいいライヴをし続けることができるんだと思ったら、これはまだ終われないなと。パリのラストのHARUNAのMCでその数ヶ月のことがよみがえって、しんどいけど好きなんだなって、好きだからやめられないんだなって思っちゃったんです。もう1回行こうって改めて4人が揃った瞬間だったし、ステージに立つことをやめたらダメだと思ったし、最高のライヴだったなって今でも思います。

-HARUNAさんはあの想いは言おうと決めてたんですか。

HARUNA:全然です。言おうと決めてたら英語でちゃんと用意してますよ(笑)。

TOMOMI:別のMCは英語でしゃべってたもんね。

HARUNA:別の伝えたいことはあらかじめ準備してたんですけど、また違う気持ちが出てきちゃって。日本語だと伝わらないことはわかってるけど、日本語も多少は理解してくれてる人たちも中にはいると思ったので、とりあえず今のこの気持ちをちゃんと言葉にしておかないとダメだと思って、無我夢中でしゃべりましたね。

-伝わってましたよね。

RINA:うん。

HARUNA:伝わったかな、伝わってたらいいなと思います。

RINA:映像でちゃんとわかってくれるしね。

HARUNA:そうだね。映像が入ってるのもわかったうえで、あとあとでもいいから伝わればいいなと思いながらしゃべったんですけど、やっぱ海外だからこそ感じた気持ちだと思います。

-というのは?

HARUNA:あの日はほんとにいろんなことが尊く感じて、自分がまず音楽やってることとか、ステージが好きで昔からやってるんだなとか、こんなにも長く続けてこられたのはこの4人だからなんだなとか。それは、日本のバンドが海外にライヴしに来て、こんなにもたくさんの人たちがいてくれるんだっていうことも大きかったから、それをちゃんと言葉にしないとダメだと思ったし、改めて自分の言葉で自分たちを褒めてあげようと思って。日常でなかなかそんなことしないけど、たまには自分たちをちゃんと肯定してあげる瞬間がないと、これからのモチベーションにもなっていかないし、それをあえてファンの前で話すなんて今までしたことないけど、海外だからちょっとオープン・マインドになってたのかもしれないですね。