Japanese
あれくん
2022年10月号掲載
Interviewer:稲垣 遥
アコースティック・ギターで失恋ソングや切ない想いを歌うあれくんのイメージから、バンド・サウンドでメッセージ・ソングを歌う一面も見せ、ぐっと幅を広げたメジャー1stアルバム『呼吸』。そのリリースから1年後の2022年秋、あれくんがまた新たな変化を前面に出したEPを発表した。その名も"革命前夜、"と題された本作は、一聴してポジティヴな空気感に溢れ、ハッピーなラヴ・ソングも惜しみなく詰め込まれている。今回、そこに込められたあれくんの想いと、自身に起きた変化について訊くべくインタビューを実施。さらに、初のドラマ・タイアップとなる"北欧こじらせ日記"主題歌「うたたね」も担当することがアナウンスされたため、その新曲についても語ってもらった。
-インタビューは昨年のメジャー1stアルバム『呼吸』以来(※2021年12月WEB掲載)なので、まずはこの1年を振り返っていこうと思います。この1年、どう過ごされていましたか?
引きこもってました(笑)。そのなかで溢れ出てきたものを一曲一曲形にしてきた1年だったのかなぁと思います。
-前作は、アコギだけではなく様々な楽器を取り入れたり、ラヴ・ソングだけではなくてあれくん自身の内面を反映させた曲があったりと、幅を広げた作品でしたが、リリース後、反響や手応えは感じましたか?
そうですね。新しい一面を見せたり、自分の中での振り幅を広げたりして、刺激のある作品作りをできたのかなって思いますし、ファンの方からも"新しい一面が見られた"ってお声をよくいただいて、"こういう曲調が刺さるんだな"とか勉強にも繋がったなと感じます。
-イメージを広げる作品だっただけに、反応は気になるところでしたよね。
はい。新しい挑戦だったので。
-それが受け入れられたのは自信になりましたか。
かなりなりましたね。
-初めてのインストア・ライヴ("あれくん 1stアルバム 『呼吸』発売記念ミニライブ")、"COUNTDOWN JAPAN 21/22"出演と、お客さんとの距離が近いイベントも、反対に大きなキャパでのイベントも連続で経験されましたね。
"COUNTDOWN JAPAN"に関してはまだ身の丈に合ってなかったなぁとは思うんですけど、普通に生きてたら辿り着くことのできないステージだと思うので、人生の中で大きな経験になったし、インストア・ライヴに関しては、近い距離でお客さんと接することって、これからどんどん大きくなったらあんまりなくなっちゃうと思うので、それもいい経験だったなって感じますね。
-"COUNTDOWN JAPAN"では自分のことを初めて観るお客さんも多かったと思いますが、反応を見てどうでしたか?
ただただ幸せでしたね。
-さっきまだ身の丈に合ってないと感じたっていう話もありましたけど、そのあたりは?
"もっとこうすれば良かったな"とか、大きいステージに立つからこそ見えてきた反省点とか、今まではわからなかったようなところも出てくるので、もっと細かなところまで工夫できたらなとは思いました。
-新しい課題ができた感じだったんですね。ライヴで言うと、8月には初となるオンライン・ライヴ("革命前夜、美しいほどに藍色")を経験されました。演出面などで試みがあったそうで。普段の弾き語り配信とは感覚的に違いました?
そうですね。演出はスタッフさんにやっていただいてたんですけど、そのなかでどうやって自分を見せたらいいのかとか、いろいろ考えないといけないところはありました。あと普通の配信ライヴだったらコメントが見られたりするんですけど、今回は一切見られなかったので、どういう温度感でやったらいいのかわからなくて緊張しましたね。
-そこはどういうスタンスでいくことにしたんですか?
いやもう、"無"になるしかないなって(笑)。
-"無"でいいんですか?
気持ちは込めてるんですけど(笑)。世界観を持ちながら。
-あれこれ考えずに、演奏に集中するってことですね。
そうです。
-また、この1年間で言うと、『ユイカ』さんとの初めての共作曲「あのね。」(2022年4月リリース)が好調な再生回数を記録していますね。このあたりからYouTubeに海外からのコメントがかなり増えた気がしたんですけど。
ありがたい話だなと思いますね。『ユイカ』ちゃんのファンに海外の方が多いらしくて。今までの自分のリスナーでもちらほらいたんですけど、ここまで入ってくるとは思わなくて、異国の方に届いてるんだなって思うとめちゃめちゃ嬉しいです。
-日本語詞だし、コメントを読むと、言葉の意味が伝わっているわけではあまりなさそうだけど聴いている感じですもんね。
そうですね。改めて音楽のすごさを感じたというか。
-『ユイカ』さんのファンにも届いたという話でしたけど、リスナーの幅が広がった実感はありましたか?
そうですね。(『ユイカ』ちゃんのファンに)若い子が多いらしくて。僕のファンの方も、自分と共に年齢が上がっていって、なかなか若い層っていうのが減ってきてはいたんですけど、そこで『ユイカ』ちゃんのファンが入ってきて、懐かしい感じがありましたね。
-あぁ。新しいファンが聴いてくれるっていうのが。
はい。その新鮮さが刺激になりましたし、もっと頑張らなきゃなっていう。
-そんな挑戦と手応えを経て、1年ぶりのまとまった作品としてEP『革命前夜、』がリリースとなりました。今回、こんなEPを作りたいというイメージはあったんですか?
そもそも僕の曲って暗いテイストの曲が結構多くて。コロナ禍でどんよりした空気が続いていて、そのなかで暗い曲を出し続けるっていうのは、自分もそうですし周りにとっても良くないのかなって、思いっきり突っぱねたハッピーな曲を書いてみようと思って書いた作品なんですけど。明るい曲を書いたほうが自分の気持ちも明るくなれるし、聴いてるだけで自然に頬が上がるような曲を届けられたらなと。もともと思ってはいたんですけど、なかなか書くに書けなくて。やっと書けたっていう感じですね。
-書けるようになったきっかけはあったんですか?
最近自分が聴く曲がネガティヴなものよりも明るい曲調が増えてきたので、無意識的に影響を受けてるのかなぁと。あと(自分の曲は)曲調は明るいけど詞の内容はダークっていうのも多かったんですが、そこも変えたいなと思って。思いっきり明るいのに振り切って、新しい自分を見せていけたらなぁと考えてました。
-まさに変化を感じる作品になったと思いますが、まず今作の中でEPに先駆けて最初にシングルで発表されたのが「diary」でした。この曲は"アコギ、ピアノから生まれたメロディ、歌詞じゃない"とコラム(※2022年6月号掲載)で書いていましたが、どんなところがこれまでと違ったんですか?
もともとトラックっぽい曲を作りたいなぁと思ってたんですけど、DTMとかも全然できなくてっていう話をマネージャーにしたら、できる人いるよと教えてもらって、その方にエモい感じのトラックを作ってもらったんですよ。それを聴いてたらぱっと一瞬でメロディと歌詞が同時に降りてきて、この形になった感じですね。
-今までと作り方が違うぶん、難しさとかはなかったですか?
難しくはなかったですね。トラックに乗せるのが結構得意なのか、すごくうまくいったんですよ。言葉の埋め方とかリズムの取り方とか、ギターとは違う形にはなるんですけど、韻を踏むのがめっちゃ好きなんで、韻を踏んだ曲になりました。
-詞の内容としては、"幸せ"に憧れる想いを歌っています。結構こういう漠然とした"幸せ"に憧れて、自分のうまくいかないことばっかり目に入ってしまうことってあると思うんですよね。
"幸せってなんだろう?"って思いますよね。でもそれを思ってること自体が幸せだったりするんですよ。
-というのは?
"幸せってなんだろう?"って思ってるってことはその時点で不幸せではないんですよね。不幸せなときってたぶんそんなことも考えられないくらいめまぐるしいんで。だからそう思ってるときは幸せなんだなってポジティヴに言い聞かせてほしいです。聴いてる方には常に自問自答してほしいですね。
-"そんなあなたも幸せになれるよ"って感じじゃなくて、幸せの難しさも同時に歌っているのがあれくんならではの視点な気がしました。「いつか」でも"思い通りの日々はそう来ない"と歌ってますし。
そうですね。この世の中きれいごとじゃうまくいかないですから。たぶんめちゃくちゃひねくれてるんですよ(笑)。
-"ポジティヴな曲を書こう"ってスタンスだとしても、そういうふうな描き方にして。
そうなんですよね。負が勝とうとしてしまう(笑)。
-(笑)でも、100パーセント前向きになりきれない人が今は多いと思いますし、そんな人にはそのほうが響くかと思いますよ。
寄り添ってほしいですね。
-この「diary」と「いつか」は、前のアルバム『呼吸』と同じく、EP収録の音源ではアコギ弾き語りのシングル・バージョンとまたがらりと雰囲気を変えていますね。
世界観を広げたくて、「diary」は主人公が生活しているなかでの流れも見せたかったので、生活音を入れるのに結構こだわってて。「いつか」に関しては結構壮大な曲というか、サビをドカンと聴かせたかったので、全体的にニュアンスを持ち上げてって感じですね。弾き語りでは表せないような、ググッと心臓が持ち上がるような気持ちにさせたくて、こういう形にさせていただきました。
-ヴォーカルのレコーディングも改めてしていますか?
そうですね。これは完全に弾き語りで録ったやつとは別で録り直してます。
-意識して歌い方を変えたところはありますか?
ありますね。やっぱプライドが許さない(笑)。最初に作った弾き語りのときよりも多少成長してると自分で思ってて、そのなかでニュアンスのつけ方とかもまったく変わってるので、新しい自分を見せていくって意味でもしっかり差別化してますね。
-よりバンド・サウンドに合うように?
そうですね。ビートがしっかりあるんで、そこに合うようにというか。弾き語りだと結構大きく揺れているので。そこは曖昧なんですけど......。
-メリハリをつけるようにというか。
はい。よりダイナミクスをつけるようにそこは妥協なくやらせていただきました。
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