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INTERVIEW

Japanese

あれくん

2022年10月号掲載

あれくん

Interviewer:稲垣 遥

いつかグランド・ピアノでワンマンもしたいですね


-そして、それ以外の3曲があれくんの真骨頂と言えるラヴ・ソングですが、ここが一番変わったなと思ったと同時に興味深かったんです。というのも3曲共ハッピーなラヴ・ソングなんですよね。以前(※2021年3月号掲載)、あれくんの曲に幸せな状態のラヴ・ソングがあまりない理由を聞いたときに、落ち込んでるときに曲作りをしているからとおっしゃっていたんですよ。でも、今回は幸せな状態の恋の曲ができた。ということは、曲作りのエネルギー源が変わってきたんですか?

そうですね。わかりやすいですよね。"この人今ハッピーなんだな"みたいな(笑)。年齢を重ねる内に、考え方とか価値観とかが変わってるんだなと、曲を作ってる自分を客観視して思います。ハッピーな曲っていうのは歌ってて気持ちがいいんですけど、どこか照れますね(笑)。今回特にどストレートなので。暗い曲ってそれこそどこかひねくれてたり、回りくどい言い方をしてたりするんですけど、今回はストレートに気持ちを歌詞に書いているので、あとで見直すと恥ずかしいが一番勝ちますね(笑)。

-じゃあ、鬱々とした気持ちを、リスナーに届けるにあたってポジティヴなものに変換して曲にしたというのではなくて、あれくん自身が今ハッピーな状態なんですね。

そうですね。明るいです(笑)。

-やっぱりそれはポジティヴな曲を聴いていたからとかなんでしょうか。

曲が一番大きいと思います。あとは周りの影響とか。25歳を過ぎて転換期でもあって、自分の中で、マイナスだけじゃプラスを補えないので、プラスに持っていきたいなという気持ちがあって、そこで環境の変化とかがプラスになっていって曲になったのかなぁと。

-この3曲の中で「ゆびきり」は水野あつさんとの共作ですが、もともと水野さんとは知り合いだったんですか?

そうですね。Twitterでもともと繋がっていて。どうして繋がったかは覚えてないんですけど、いつかなんかやりたいなみたいな話をぼそっとしてはいたんですよね。で、あるタイミングでお声掛けをして、じゃあやろうってなって僕の家に来ていただいて、ピアノがあったので、何も決めずに始めました。本当は前もってメロディとか歌詞とかコード進行を作ると思うんですけど、僕は一切それをしたくなくて。いきなりバンッと作りたかったんです。じゃないとお互いの良さを絶対引き出せないので。で、2~3時間くらいでできた感じですね。あつ君がピアノを弾いて、それをループしてもらって、そこに歌を乗せていくみたいな。

-『ユイカ』さんと共作したときはデータでのやりとりでしたよね?

データというか、電話でしたね。最初はサビとかAメロとか(データで)完全に投げられたんですけど、後半の作り込みは実際に話しながら。じゃないと空気感も雰囲気もわからないんで。それで作らせていただきました。

-今回はセッションのような作り方で現場を共にして、刺激を受けたりしましたか?

夜韻-Yoin-のときにメンバーの美咲(岩村美咲/Pf/Director)に弾いてもらいながら作ってたときもあったんですけど、やっぱり美咲とは作る曲も違うし使っているコードも違うので、こういうメロディが出てくるんだなって新しい発見がありました。

-水野さんってポップだけどちょっとフックとなるところのある曲を作る方ですもんね。

そうですね。美咲はクラシック出身なんで、いい意味でクラシックらしさが出るのですが、あつ君はポップスの楽曲をたくさん作っているので、そこにうまく調和したのかなと思ってます。

-今回の作品の雰囲気にぴったりです。そういえば、話が出ましたが、あれくんは電子ピアノを購入されたということで、今作で実際に弾いてる曲はあったりするんですか?

ないですね、そこまでいけてないです(笑)。でも「そんな気がした。」っていう曲あるじゃないですか。これ実はピアノからできてて。ピアノでコードを弾いてたらメロディが降りてきて、それをギターに変換して作ってます。この曲は、「ばーか。」(2019年配信リリースのシングル)とかでもあったと思うんですけど、語り口調っていうか、実際に喋り合ってるような感じで作れたらいいなと思って。昔の自分を掘り下げてじゃないですけど、それを意識して作ったって感じですね。

-それこそ一番ストレートな言葉を使った曲ですね。

そうですね。アレンジに関しては、ボカロ世代なので、そういう曲にしたいなと思って。HoneyWorksさんとかDECO*27さんとかそんな方にも似せた、懐かしいボカロ曲、でもちょっと新しいふうにしたくて、ふわっとした感じだけどメッセージ性が強くあってというのを目指した感じですね。

-なるほど。ではそんな5曲を収録したEPに"革命前夜、"というタイトルを付けた理由は?

これで一気にぱっと明るくなるじゃないですか。さっき言ったように、幸せと不幸せは対にあると思ってて、不幸がなかったら、幸せってたぶんないんですね。幸せだけだったらそれが普通になっちゃうので。だから不幸な自分の存在も認めつつ、幸せになってもらいたいっていう考え方で"革命前夜、"ってタイトルにしました。実際暗い曲も書くので。

-幸せになる"前夜"ってことですよね。この鏡写しのジャケ写にもこだわりがあるそうで。

そうですね。楽しいからこそつらいときもあって、それを全部描きたい欲がすごくあるんです。人間、ずっと幸せなわけはないじゃないですか。だから、例えば鏡の向こうで笑ってるのが昔の自分で、今は不幸せ。でもそれが反対になることもあって、今は幸せで、鏡の中の子はそんな幸せじゃなくて今の自分を疎んでるとか。人生ってそれが交互に繰り返されるんで、それを表現したくてこういう形にさせていただきました。どっちも大事なんだよって知ってもらいたいというか。

-なるほど。『呼吸』は挑戦が詰まったアルバムでしたけど、このEPはどんな作品になりましたか?

今までの自分を惜しみなく表現したって感じが近いかもしれないですね。

-今までも潜在的にあったけど見せていなかった部分を出した感じかもしれないですね。で、そのEPだけでなく、新曲「うたたね」も制作されたんですね。"北欧こじらせ日記"主題歌ということで、初めてのドラマ・タイアップですが、お話が来たときはいかがでしたか?

"どうしようかな!?"と(笑)。これまでもWEB CMとかへの書き下ろしはやっていて、妥協は一切してきたつもりはないですけど、ドラマは初めてだしより力を入れないといけないなというのはあるので、限られた時間の中で自分のMAXを出し切れるのかって不安が、そのときは一番すごかったですね。でも、やってみたら意外とできるんですよね。

-さすがです(笑)。

(笑)求められたものを無意識的に落とし込むのが得意なのかもしれないです。

-さっきトラックに曲を乗せるのもうまくできたって言ってましたもんね。より力を入れないとという話もありましたが、ドラマのタイアップは憧れだったんですか?

正直すごくやりたいなと思ってたし、以前ひとつ話があって。コンペがあったんですけど、ぎりぎりのところで落ちちゃって結構悔しい思いをしていたから、ほんとに念願ですね。

-今回はどういう経緯であれくんにとなったんですか?

ご指名ですね。ありがたいことに直々にらしくて。感無量です。

-曲作りにあたってはドラマの台本を読ませてもらったりとかして?

台詞の台本を貰って、それを読ませていただいて雰囲気を掴んだり、フィンランドって何があるんだろうな? とかを調べたりして、それを落とし込んだって感じですね。

-好きなものに一直線なドラマの主人公の目線で書いた歌詞になっていると思うんですが、そんな主人公に共感するところはありましたか?

めっちゃありますね。好きなことだけしていたいし、やっぱり嫌なことって絶対したくないじゃないですか。だけど言葉の裏には嫌なこともやらないと、好きなことはできないんだよっていう気持ちも織り交ぜながら......もう自分ですね。

-他にはどういうところに重きを置いて作っていったんですか?

世界観を一番大事にしたくて。フィンランドのお話ではあるので、そこは意識しましたね。あんまり"これを意識して作る"っていうことはなかったんで、新しい挑戦でした。

-フィンランド感を出すにあたっては具体的にどういうところを工夫したんですか?

隠されてるというか、ちりばめてるんですけど、サビのあとに"マグカップ1つ片手に取って/水蒸気が視界を遮ってる"というブロックがありまして。マグカップを持ったときに湯気でメガネが曇るっていうのを表現してるんですけど、フィンランドってサウナ発祥の地で、文化的に取り入れられてるんですね。"蒸気が視界を遮ってる"っていうのはサウナの話でもあって、"ととのう"とか最近言うじゃないですか。自分の中の悪いものを出してデトックスしてっていう。でもサウナって熱いから嫌だとか苦手な方もいるじゃないですか。それに対して、自分がスッキリして解放された気持ちを"それでいい、それくらいが丁度いい"って表現の中に落とし込んでるって感じですね。

-なるほど、面白いです。こういうお題があっての曲作りはいかがでしたか?

考えることが普通よりはちょっとあるんですけど、さっきみたいに含みを持たせることができるので、やってて楽しいですね。あと、聴いてくれた方が答え合わせするのかどうかわからないですけど、こういう意味なんだろうなって考えながら聴いてもらうのを想像すると、作れて良かったなって思います。

-サビでグッと広がる展開やアレンジの曲になっていますが、そこはテレビで流れることを意識したりしたんですか?

それはめっちゃ意識してます。グッと広げられるかどうかで変わってくると思うんで、一番考えてますね。ドラマの良さをより引き立たせるのもそうですけど、歌があってのドラマっていう見せ方もしたいなと思っています。

-このEPと新曲を完成させて、また次にやりたいことも出てきましたか?

ずっと制作してます。曲をめっちゃ作ってて。昨日も、デモなんですけど4曲くらい作ってて、結構燃えてるんです。ほんとに何も出てこなくなると死にたいなって思うので(笑)。なんでこんな自分なんにもできないんだってなったりするんですけど、年末に向けてボルテージを上げていきつつ、動きを止めないで音楽をお届けできたらなと思います。有観客のライヴも来年くらいにはできたらなと。あと、次ではないんですけど、さっきピアノを買った話もしましたが、いつかグランド・ピアノでワンマンもしたいですね。アコギでやってないのに何言ってんだって話ですけど(笑)。情緒溢れる曲が多いので、ピアノが自分の中ですごく合うなと思って。ピアノって大きく見せることができるじゃないですか。アコギよりも絶対迫力があるので、いつかはやりたいですね。

RELEASE INFORMATION

EP
『革命前夜、』
Arekun_kakumeizenya.jpg
2022.09.30 ON SALE
配信はこちら

新曲
「うたたね」
※テレビ東京ドラマ"北欧こじらせ日記"主題歌
※リリース日未定