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INTERVIEW

Japanese

東京初期衝動

2022年02月号掲載

東京初期衝動

Member:しーなちゃん(Vo/Gt) まれ(Gt) あさか(Ba)

Interviewer:秦 理絵

-あさかさんが作ったのは?

あさか:「山田!恐ろしい男」ですね。

-これもガレージっぽい曲ですね。あさかさんはベースで作るんですか?

あさか:ベースですね。自分が楽しいって思えるものしか生み出せないので、好きなフレーズを適当に弾いたのを繋げていった感じでした。歌詞とギター以外を打ち込みで送って。メロディには......作ってるときに家にまいたけスープがあったので、まいたけスープっていう仮歌詞で歌ったんです。そこからは、なおちゃんがかたちを整えてくれて。

しーな:今回の制作でなおちゃんがDTMを覚えてくれたんですよ。基本的に私が作るじゃないですか。そこにまれちゃんが仮ギターを弾いてくれて、なおちゃんがパソコンできれいなバンド・バージョンにしてくれるんです。それぞれのパートを引いた音源を練習用に送ってくれるんですよ。私のためにピアノでガイド・ヴォーカルとかも作ってくれて。

あさか:先生だよね(笑)。

しーな:そう、先生。そういうのをやってくれたのもあって一気にバーッて作れたんです。

まれ:最後に「マァルイツキ」を作ったんですけど。それがレコーディングの2、3日前で、もうみんなと合わせられないっていう状況で。あの曲はなおちゃんがデモを作ってくれたから、"あ、こういう感じか"っていうのがわかってやれたんです。

-「マァルイツキ」はいいですね。得意のポップでロックな路線で。

しーな:レコーディングの2、3週間前ぐらいからサビを歌ってたんですよ。もうレコーディングでいっぱいいっぱいだと思ってたんですけど、最後の3日目ぐらいでなんかいけるかもしれないってなって。ギリギリになってみんなを1回、中野のリンキィディンクスタジオっていうところに呼び出して、"やっぱりこの曲を作ります"って言ったんです。みんな、え!? みたいな。これはもう非現実的すぎるって言ってたんですけど、なおちゃんだけ、"やれるだけやってみよう"って言ってくれて。

-ポジティヴですねぇ。

しーな:最高の女ですよ(笑)。とりあえず、みんなでコードを確認して終わって。家に持ち帰ってから2、3時間ぐらいでAメロ、Bメロ、歌詞、全部を送ったんです。ひと晩でLINEとかボイスメモとか駆使して作っていって。急遽やるって決めた曲だから、デモの時点で(マネージャーに)いいものを送らないと、賛成してくれないと思ったんですよ。だから真剣に向き合って、みんな絶対に嫌だって言わせないような感じに仕上げてくれて。まれのギターのフレーズが本当にいいんです。

-サビの下で弾いてる、歌とはまったく違うギターのフレーズが気持ちいいですね。

まれ:えー!? 私、サビめっちゃ嫌い。ちょっと歌を邪魔してる感じがする。

しーな:そんなことない。うち、めっちゃ好きだよ。

-この曲は歌詞もキュートに振り切ってますね。前髪の表現がいいなと思ってて。ずっと"前髪も気にしないで走った"って歌ってるけど、最後に"ぁあー!前髪も直さなくちゃ..."って終わるのが、あぁ、かわいいなぁって。

しーな:そうなんですよっ! 私もそこ大好き。気づいてくれたー!

あさか:そこは女しかわからないよね。

しーな:そう! この曲を作るとき、めちゃくちゃ少女マンガを読んでて。出てくる女の子の前髪が荒れ果ててたんです。安野モヨコさんの"ハッピー・マニア"っていう作品だったんですけど。女の子ってみんな前髪を直すけど、私は前髪が荒れてる子のほうがかわいいと思うんですよ。風でボサボサになってたり、ここまで走ってきましたっていう感じ。この子は私のために走ってきたの? って。しかも会う前に鏡で直したりするときがすごく好きな瞬間なんです。でも、男子ってこれ知らないでしょ? って思ったら、すごくもったいなくて。どうしても曲にしたいと思って入れたんですよ。わかります!? この興奮!

一同:(笑)

しーな:まれちゃんもあさかもなおちゃんも、ずっと髪を直してますからね。

-マンガと言えば、アルバムを締めくくる「世界の終わりと夜明け前」とか「東京」は、浅野いにおさんの短編集からインスパイアされたものですか?

しーな:あ、このときは浅野いにおさんを読んでました。そのあとがきに、"題材がないときは、とりあえず世界の終わりを描く"って書いてあって。それが「世界の終わりと夜明け前」で、うん、この世界観で書こうみたいになったんです。バンプ(BUMP OF CHICKEN)っぽい曲を作ろうと思ったんですよ。

-疾走感のあるギター・ロック。

しーな:そうですね。作るって決めてから1日で完成した曲です。

-浅野いにおさんのどういうところに惹かれているんですか?

しーな:いにおも暗いんですよ。中学生のときから読んでいて。それで育ってきたんですけど。人間の嫌なところが見えるんですよね。うわ、本当に見たくなかった、ずっと目を背けたかったっていうようなところに目を向けさせられて、すごく不快な想いをするんです。そういうマンガってあんまりないじゃないですか。こんなに嫌な気分になるマンガは"最終兵器彼女"といにおしかないから、すごく大事にしてるんです。

-ただ、「世界の終わりと夜明け前」も「東京」も、決して不快な想いでは終わらないですよね。絶望の中にも、どこか希望を感じられるというか。

しーな:「世界の終わりと夜明け前」に関してはポップに仕上げたかったんですよ。世界の終わりを書きつつも、ギターの音とかで明るく聴こえるのかもしれない。でも私的には"もう、終わってるな"っていう気持ちで書いてるんですよね。夜は全然明けてなかったんです。

-「東京」のほうはどうですか?

しーな:これも辛気くさい曲になりましたね。Bメロの"君だけ幸せそうだネ"っていうのとか自分で書いてて笑っちゃって。私どれだけ卑屈なんだろうって思いました。いつもそういう感情を抱いちゃうんです。お前だけ幸せでいいなって。友達にも、付き合ってる人にも、元カレに対しても。全員に思う。

-「東京」を最後に入れたいと思った理由はありますか?

しーな:もともとアルバムを作るときに"東京"っていう曲を作りたいなって、まれちゃんとずっと話してて。いろいろ試してたんです。

まれ:街を散歩したよね。最初に"いつもメモしてる"って言ってたじゃないですか。私も"今から目に入ったものをメモしろ"って言われて。

しーな:うち、そんなことを言ってたの? めっちゃウケるわ(笑)。

まれ:路上駐輪禁止っていう看板を見て、メモしとけって言われたり。絶対にこんな言葉を歌詞に入れないのに(笑)。オレンジの蛍光灯とか。

しーな:あ、それは"オレンジの列車"になったよ。中央線にした。"東京"という曲っていい曲が多いんですよね。地方出身の人が東京に出てきて作ったりするじゃないですか。私は足立区っていう田舎なんですけど、一応、東京なんですよ。表参道までも45分あれば行ける距離の東京。だから、東京っていうものに憧れも何もなくて、自分の東京ってなんだろう? って考えるのは大変だったんです。ずっといる東京だから。

-そこで見いだしたしーなちゃんなりの東京というのは?

しーな:男......かな。

一同:あはははは!

-たしかに歌詞を聞いてると、出会いと別れの「東京」なのかなとは思いました。いろいろな人の人生が交錯する街として歌われていて。

しーな:うん、思い出ですかね。いろいろな人を作り上げてきた東京なんですよね。

-"東京"という曲を作りたかったって聞いて納得したんですけど、今回のアルバムって街が見える曲が多いんですよね。下北沢とか中央線界隈とか。で、同時に銀河と月とか空の描写も多い。その両方がロマンチックに繋がってる作品だなと思ったんです。

しーな:あぁ、たしかに全然気づかなかったけど。中央線に行ったり、宇宙に行ったりしてますね。

-しーなちゃんは空を見ることが多いんですか?

しーな:あ、そうですね。空を見るのは大好きなんですよ。あとは海とか。ぼーっとしたいときとかはずっと空を眺めてる。それが表れてるのかもしれないです。

-今アルバムを作り終えてどんな手応えを感じていますか?

しーな:前作の『SWEET 17 MONSTERS』は自分でほとんど聴かないんですよ。たまに聴くと、バラエティ豊かでインディーズの音だなって思うんです。でも、今回はずっと聴いてるんですよね。自分的には好きなものができたから、もう何を言われてもいいかな、みたいな気持ちです。ちなみに、アルバムの中で何が好きですか?

-「マァルイツキ」と「空気少女」、「東京」かな。

しーな:「空気少女」は結構人気ですね。

-逆にメンバーは何が好きですか?

しーな:うちから言っていい? 「パンチザウルス」。あとは「マァルイツキ」、えっと......「世界の終わりと夜明け前」。

まれ:私は「不純喫茶にてまた会いましょう」、「マァルイツキ」、「東京」。

あさか:うわっ、丸被りー! 完全に一緒(笑)。