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INTERVIEW

Japanese

Muvidat

2021年12月号掲載

Muvidat

Member:Uqui(Vo) MAH(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

歌声が禁じられたことなんてないですもんね――そういう今を残しておきたいと思ったんです


-歌詞に対して、ギター・サウンドがずっとキラキラとした音になっている。そのサウンドにもまた救われる曲でもありました。

MAH:こだわりましたね。ホヨヨヨヨみたいな変な音はなおぴーが勝手に入れました(笑)。でも自分が都市伝説とかが好きだからうがった見方をしちゃうかもしれないですけど、全部、決まってるのかなって思いますよね。因果応報じゃないけど、原因と結果があって。結果がまた次の原因になっていてという、そうやって収まるところに自然と入っていくというか。結局、いい感じになるっていう。最初からそういうふうに決まっていたんじゃないの、っていう感じはあるから。「群青」でUquiさんがこういう歌詞を書いてくれて、読んだときに思ったけど、やっぱり抗っちゃダメだなと。抗わないをテーマに2年くらいやってきたけど、本当良かったもんね。

Uqui:うん。それを認めるってすごくつらいことだけどね。

-その"抗わない"っていうのも、ただ流れに乗っていくこととも違って、タフでいなきゃいけない部分もありますしね。

Uqui:ここ最近の私たちのテーマは"諦める"なんです。"諦めないから進めない"んですよね。

MAH:諦めるっていうのは、"明らかに見極める"という意味らしいんですよね。

Uqui:あ! デジャヴ。前にもそんな話をしてたことあったね。

MAH:むかーし、してたよね。14~15年前かな。

Uqui:でもそのときよりも今のほうが、すごくわかる。

-腑に落ちる感じがある。

MAH:ゲームをしてる感覚で、自分が自分というプレイヤーを俯瞰で見ているとすると、そっちはもう崖でいけないのに、頑張っていこうとするじゃないですか。

Uqui:頑張っちゃうんだよね。

MAH:ゲームだったらそれ通りの道に進んでいけばいいのに、なんか外れていくじゃないですか。そういう感じなのかなって。頑張るっていうのは。

Uqui:でも頑張りたくなっちゃうんだよね、みんな。頑張りたくなっちゃうから苦しいけれど。そこを見極めていくって......難しいね。

-頑張ったからこそ、たとえ諦めるということをしたとしても、自分は後悔しないとか。いろんな経験を積み重ねたから、諦めることもできるっていうか。

MAH:そうですね。もっと早く諦めていればっていうことも結構あるんですよ。

Uqui:でもどうにかしなくちゃいけないと頑張っちゃったなとか、そういう気持ちはありますよね。もっともっと自由で良かったのに、なんかいろんなことを考えてしまって。そういう頑張りすぎなければ良かったなっていう場面って、子どもの頃から大人になってもみんなありますもんね。

MAH:その感覚はもっと早く知りたかったなとも思うし、今で良かったなとも思う。最近はそれですよね。「群青」はそれをひしひしと感じます。

Uqui:こんなはずだったんだなっていうね(笑)。

-それは今だからこそ歌えるし、説得力あるものになっていると思いますよ。

MAH:実証済みだもんね。Uquiさんも俺も。何かを諦めた瞬間に、新しい道が出てきますからね。もっといい、新しい道が。でも心の中で諦めない限り、出てこないんですよ。

-大人だからこその「群青」がありますね。そして最後が「La-tata-rula」という、呪文のように口ずさめる曲です。

MAH:この曲はUquiさんから"こういう曲作って"と来たものだったんです。サビが意味のある言葉じゃなくて、みんなで叫ぶようなものがいいなっていうひと言を貰って作った曲で。これだったら、世界共通で歌えるじゃないですか。でもそれこそがまさに歌うことの大事さで、『VOICES IN MY HEAD』の理念に戻ってくるんですよね。

Uqui:この曲の歌詞は『VOICES IN MY HEAD』の一曲一曲の物語をダイジェストでお届けしたらいいんじゃないかと思って、書いているんです。例えば冒頭の"ラズベリームースのパイ"は、8曲目の「シャッフルしたら丁度の曲」に出てくる"とりあえず甘いの戴こう"で食べたもので。"不条理な物語"は7曲目「PINK」の物語。"いつだって僕らの真ん中"は6曲目「ポラリス」。"転がって行こう"が5曲目の「群青」、"未だ恋しい"のが4曲目の「Killer H.」でのレストランで。"月面寝そべって"が3曲目「熱帯的シンドローム」で、"迷路ん中じゃ響くサイレン"が2曲目「トーキョーメイズ」。そして、"捻じ曲がりの声は塞いで"は1曲目「VOICES IN MY HEAD」というふうになっていて。それが頭の中でそこいらじゅう回っている、みんなの禁じられた歌声が鳴り響いてるんだっていうところから、2番ではまた1曲目からのモチーフが歌詞に織り込まれているんです。

MAH:総まとめですね。

Uqui:そういう映画のエンドロール的なイメージで、ダイジェストで書いたら面白いなって。ダイレクトに飛び込んでくるかはわからないけど、印象的に、"あれ、これってどこかで......?"ってなるような感じがあって。

MAH:歌詞の"鳴り止まぬ禁じられた歌声が"は今、一番グッときますよね。ライヴのお客さんの声もそうだし。本当に、ライヴ・レコーディングとかすると、お客さんの声が素晴らしいんですよね。僕らは昔からそうした声を大事にしていて、そのままそれを音源に入れちゃったりもしていたので。

Uqui:ライヴでも何度も言ってましたけど、みんなの歌声って世界一素晴らしいし、かっこいい。すごく素敵な瞬間で、これに敵うものはないと思っていて。それがコロナ禍になってからのライヴでは全然声が聞こえないし、他のミュージシャンもきっと同じ気持ちだろうけど、心の中で歌うっていうのは違うなって私は思っていて。

MAH:違うよね。ライヴって聴きに行くものじゃなく、踊って、声を出しに行くところで。それでものすごく浄化してるんですよね。

-そうですね。

Uqui:声に出すことで生まれるものなんですよね。

MAH:"呼吸"って書くじゃないですか。吐くことが先なんですよね。吐いてからでないと、いい空気が入ってこないんですよ。さっきの諦めるの話もそうですけど。全部繋がるなっていう気持ちでいますね。

-今だからこそ歌える気持ちであり、また根源的なメッセージでもあります。

Uqui:こうやって歌声が禁じられたことなんてないですもんね。図書館とか声を出してはいけない場所はあるけれど、歌ってはいけないということってそうそうないなと。そういう今を残しておきたいと思ったんです。みんなが心から歌える日が、声を出す日が来ないと困っちゃいますね。

MAH:いつかみんなで言いたいよね、昔、歌っちゃダメな時期があったんだよって。

Uqui:"そんなときがあったの!?"っていう。

-数年後そう笑い合いたいですね。ジャケットのインパクトも大なので、ぜひCDで手に取ってほしいところです。

Uqui:飛び込んでくるものがありますよね。ジャケ買いして、失敗か成功かわからないけど(笑)、でも買って良かったなって思ってもらえる自信はあります。

-偶然でも手に取った人が、この多彩なアルバムのどんな曲に引っかかるかも興味深いし、ジャケットのインパクトに負けない旅ができそうです。

Uqui:昔からですけど、どうしたってひとつにはまとまらないから。ジャンル的なものもわからないし。でもスカ・パンクひとつにしても、イメージを壊していきたいというのもあるし、スカ・パンクってこうだよねという感じでいかずに、別の提案はできるようにって思っていますね。

MAH:そうそう。

Uqui:毎回言ってますけど、いろんな気持ちになれるアルバムだと思います。

MAH:守り続けるのも大事だし、ぶっ壊すのも大事。どちらも共存できればいいなというのが僕らの考え方でもありますね。