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INTERVIEW

Japanese

透明図鑑

2021年10月号掲載

透明図鑑

透明図鑑

インタビュアー:宮﨑 大樹

今年"0th"シングル『空に沈める』を配信リリースし、ソロ・アーティストとしての道を歩み始めた透明図鑑が、1stシングル「水彩の魚」を完成させた。今回が"1st"ということで、本作が本当の意味での第一歩ということになるのだろうか。彼女に話を聞いてみると、アーティストとしてのヴィジョンもより明確になっていた印象だ。"夜"をテーマに、出自としてのクラシックや、エレクトロニカ、ロックが融合しつつもポップスとしての佇まいも見せる、そんな新曲について迫る。

-0thシングル『空に沈める』のリリースから半年ほど経ちましたけど、周りからの反応はどうでした?

鍵盤奏者としてお仕事に行った先の現場などで、制作さんなどわりと聴いてくださった方がいたようで、"ヤバい曲書きましたね"と言っていただきました(笑)。

-その道のプロが聴いても"ヤバい"んですね(笑)。リリース後は、サポート・ミュージシャンとしての活動が忙しそうな様子でした。

2月末に『空に沈める』を出してからの4~7月は、演奏の仕事で忙しくさせていただいていました。ありがたいことに目まぐるしく仕事をさせていただいていたので、そこに集中して取り組んだシーズンではありましたね。

-自分の制作の時間が取れなかった。

たしかに制作の時間は取りにくい状況ではありました。3月はわりと時間があったので今回の曲の構想を考え始めてはいたのですが、その後作業する時間がなかなか取れずでした。8月に時間が再びできたタイミングで、改めて構想を練り直して書きました。今まではわりと仕事優先の生活を送っていたのですが、今は自分の書きたいものがあるうちは、書くことを最優先にして時間を使っていきたいなと思っています。もちろん、演奏することも好きなので、制作しつつもプレイヤーとしての活動も続けたいです。

-では、しばらくは制作モードになっていくんですね。

そのつもりです。書きたいものがあるうちはたくさん形にしていきたいなと。

-書きたいアイディアは、どんどん浮かんでいるんですか?

そうですね。書きたいものばかりあって、どうしようかと思うくらいにはあります(笑)。その中には、おそらく作家の人は同じような気持ちがある方も多いと思うのですが、リリースしたその曲に対して反省や振り返りをしたことで生まれたアイディアもありますね。

-そうして、1stシングル「水彩の魚」が完成したと。

はい。1stは、透明図鑑としてのカラーを失わず、且つある程度リスナーにとって聴きやすいものを作ろうということで、この曲でいきました。

-「水彩の魚」は"透明図鑑基準"で言うと、聴きやすい?

そう思っています(笑)。サビを聴きやすくということを意識したので、サビのメロディを歌いやすいものにしました。"メロメロ"していませんか? 途中は相変わらずな感じですけど(笑)。

-そこが面白さですよ。前回のインタビュー(※2021年4月号掲載)で"しばらくは共作したい"と言っていたので1stも共作になるのかなと思っていたのですが、「水彩の魚」は作編曲も歌詞もご自身で行っていますね。

『空に沈める』のときは、DTMで曲を書いたことがほぼなかったことや、作曲もちゃんと学んでいたわけではないので、自分ひとりで最後までは書けないと思っていた節があって。アイディアはあったし、デモを書くことまではできるけど、それを最終的にどう音にする? みたいな感じだったんです。こんな音がいいと思ってもそれをどう打ち込んだら表現できるのかがわからなかったりもしました。それで、ちょうど照井(順政/siraph/Gt)君が曲を面白がってくれていたからある程度のところまで自分で書いてから、一緒に作ってもらいました。その結果、彼にしかないものもあるし、私にしかないものもあるから、一緒に作って良かったなと思う部分も、そうじゃなかった部分もやっぱり出てきて。それを感じたときに"もしかたしたらひとりで書きたいのかもしれない"と感じたんです。たぶんこれからも曲によると思うんです。自分で完結したほうがいい曲と、編曲なり、作詞なり、歌唱を誰かに任すなり、人と一緒につくる曲。いろんな形がありますけど、結末までちゃんと浮かんでいるときは自分で書いたほうがいいかもという気持ちになったので、ひとまずやってみようと思って書きました。作編曲まですべて自分でという歌モノはおそらくこの曲が初めてです。

-曲のイメージがかなり明確にあったんですね。どういうところから広げていったんですか?

曲を書くときは、"こういう音楽にしよう"というジャンルの指標がいつも全然なくて。自分の気持ちだったり観た情景だったり、得た感覚だったりを音にしようとすることが今は多いのですが、作曲するときは、図形を書いたりしています。メモににょろにょろと線を書いて、"こんな感じかな?"みたいな。これはさすがに自分でもあまり一般的ではないんじゃないかって思うんですけど(笑)。

-音のイメージが図形になる?

そうですね。絵とか図形を書いてから音にしていくことが多いです。「毒煌々」(『空に沈める』収録曲)のときは建築みたいに構築されたものを作りたい気持ちがあったのですが、この曲は夜に散歩していて人とすれ違ったときの感覚を曲にしたいと思って書きました。

-人とすれ違ったときの感覚が図形になり、曲になった。

はい。それと、Instagramで海外のアーティストさんの絵をたまたま観ていたら、その中に自分が歩いているときに得た感覚と重なるアートがあったんです。"あぁ、こういう感じだな"と思って曲にしていきました。

-"1stは夜のテーマで書こうと決めていた"と話していましたよね。そこはブレなかったんですか?

そうですね。私、夜中にひとりでフラフラお散歩していることがよくあるのですが、そうすると人とすれ違ったりするじゃないですか? そのときにふと感じる熱とか温度に"うわー!"と思うことが多くて。それをテーマに書こうという気持ちがありました。

-散歩をしていて人とすれ違うときの感覚って、もうちょっと嚙み砕いていくとどんな感じですか?

う~ん......少し誇張して言うと、立ち止まっていて、その横を人が走っていくとぶわーって風が来るじゃないですか? あの感じに近いです――全然嚙み砕けてないですね(笑)。

-でも、少しわかった気がします。どうしてその感覚を曲にしてみようと思ったんですか?

その感覚は最近得たものではなくて。もともと夜の時間が好きなので、前からひとりで散歩しているときにそういう感覚はたびたびあったんです。1stシングルを書こうというときに、前述のアートと出会ったこともあり、自分の中でその感覚が一瞬で形になって、完結して表現できるイメージが浮かんだんです。これだったら、ばちっと曲になるんじゃないかって。今の自分の作家としてのスキルってすごく拙いものですけど、その拙さも良さとして出て、且つちゃんと聴き手に伝えられるものができるだろう。そんな想像ができたから、これを曲にしようと思いましたね。