Japanese
メメタァ
Member:西沢 成悟(Vo/Gt) 工藤 快斗(Gt/Cho) カワギシ タカユキ(Ba/Cho) サンライズ太陽(Dr/Cho)
Interviewer:蜂須賀 ちなみ
-コーラス・ワークはメメタァの新たな特色になっていきそうですね。それこそ、第2弾楽曲の「春風」もコーラスが印象的で。
サンライズ:「春風」のサビのコーラスは全部俺がやっているんですよ。
カワギシ:たしか"これ、奥田民生っぽくね?"って言いながら、自分でコーラス・ラインを作っていたよね?
西沢:そうそう。ある日突然歌っていたのがそのまま採用されるという(笑)。
-「春風」の歌詞はどういうイメージで書いていったんですか?
西沢:"卒業"というテーマで書きました。この曲はもともと違う歌詞があって、あとから変えたんですけど......前のバージョンの歌詞に対して、"この歌詞、昔の成悟っぽいから今唄わなくてもいいんじゃない?"、"昔の自分と今の自分は違うものなんだから、昔みたいな書き方をしても齟齬が出るよ"と誰かから言われて。そのときに"いや、そんなことはない!"、"俺にはまだまだあの頃を歌う力があるぞ!"と思ったので、その反骨心で今のバージョンの歌詞を書きました。
カワギシ:それ、誰に言われたの?
西沢:メンバーだったと思う。
サンライズ:......そんな余計なこと言うの、たぶん俺じゃね(笑)?
工藤:だとしたら、太陽さんファイン・プレイですね。めちゃめちゃいい歌だから。
-"昔みたいな書き方をしなくてもいいんじゃない?"と言われて反発心を持ったのは、なぜだと思いますか?
西沢:俺は今まで"青春時代を振り返って歌う"みたいなことをわりとやってきたと思うんですよ。それが自分的にはしっくりきていたので、"昔みたいなことを歌わなくてもよくない?"と言われると......。昔を手離せる状態になるということは成長している証でもあると思うんですけど、作り手としてはちょっと寂しい気持ちがあるんですよね。
-メメタァの曲を聴いている印象だと、西沢さんの言う"昔"、"青春"は必ずしも輝かしい思い出ではないような気がします。それでも手離したくないと思うのは、どうしてなんでしょうね?
西沢:あ~......。若い頃、自分より年上の人から"大人になるにつれて、いろいろなことに目をつむれるようになるし、悪い意味で慣れていくよ"、"怒らなくなっていったり、傷つかなくなってきたり、そういうことがどんどん増えていく"、"だから今ある気持ちは大事にしたほうがいい"みたいなことを言われたことがあるんですよ。当時はそう言われても実感なかったんですけど、"昔みたいな歌は書かなくてもいいんじゃない?"と言われたときに"あぁ、こういうことか"と思い出したというか。俺も、手の届く範囲のものに満足したり、いろいろなことを無視できたりするようになってきているし、そういう自分がすごく嫌だなと思ったんですよね。そんなふうになっていくくらいだったら、俺は、どんなに傷ついても、青春時代を歌うことをやめないようにしようと。この歌はメメタァというバンドのヴォーカルとしての覚悟でもありますね。
-そういうものを忘れたくないから、バンドをやっているという側面もありますか?
西沢:たぶん、それもあると思います。僕は男子校出身なんですけど、いわゆる青春ソングと、自分が過ごしている毎日は、すごくかけ離れているなぁと感じたときがあって。そんなときに、いろいろな青春の在り方を肯定してくれたのが、僕の中では音楽だったんです。僕の好きな音楽が"君が送ってきた日々もひとつの青春だし、人生だよ"と言ってくれた。だから、俺の作る曲も、様々な人生を肯定できるものにしたいという気持ちが強くあるんですよね。歳をとるにつれて作風も変わると思うし、俺もいつか、青春を歌うことができなくなっちゃうと思うんだけど、できる限りそういう歌を歌い続けたいと思っていて。
-青春を歌い続けたいと思う一方、いつか歌えなくなるという自覚もあるからこそ、こうして曲に残しておくことが大事だと。
西沢:そうですね。このタイミングで出せて良かったと思います。
-第3弾楽曲の「ドライフラワー」は、西沢さんが2019年に発表した弾き語りCD『トイレットペーパー』にも収録されていました。
西沢:その曲をバンドでアレンジしたんですけど、歌詞も展開もそのままで。
サンライズ:でもコロナ禍にも当てはまりそうな歌詞はあるよね。
-「ドライフラワー」でも「ロスタイム」でも、"残された時間"という言葉を使っているのが気になりました。今自分が生きている時間を"残された時間"だと認識しているんですか?
西沢:あ~。たしかに、終わりを意識しているからこそ出てくる言葉ですよね。それはたぶん、俺が見たからだと思うんですよ。
サンライズ:見たって何を? 未来から来たの?
西沢:そうじゃないですけど(笑)。この曲を書いた当時、"1秒でも長く楽しい時間を続けていきたい"というふうにすごく思っていたんですよ。周りのバンドが解散するとか、そういうのを目の当たりにして、物事はやっぱりいつか終わるものなんだなぁと改めて気づかされた時期だったので。だから、お葬式に出ると死生観が変わるというのと近い感じだと思います。別に今、死ぬことを想定して生きているわけではないけど、バンドも人生も"終わりってあるなぁ"と思った瞬間に、今生きている時間が"残された時間"に思えるというか。
-切実な歌詞に対して、曲調は結構明るいですよね。
サンライズ:成悟の弾き語りから作った曲は、カントリー調のアレンジになることが多くて。
-イントロとアウトロのギターのフレーズも、弾き語りの段階からあったんですか?
西沢:いや、僕はバッキングを弾いていたので、弾き語りのときはなかったですね。このギターはandymoriのイメージというか。我々、結構しっかりと他のバンドを参考にするんですよ。出典がちゃんとあるというか。
-あぁ、「ロスタイム」で言うところの藍坊主みたいに。
西沢:そうですね。(工藤に向かって)このギターは「Sunrise&Sunset」(andymori)?
工藤:いや、これは普通に手癖です。
西沢:あぁ、違いましたか(笑)。
工藤:でも、たしかに、僕の中にもandymoriのイメージはありました。
-そして第4弾楽曲の「life goes on」は7月24日にリリースされたばかりです。
西沢:去年の夏くらいにできた曲なんですけど、弾き語りでやって褒められた覚えが......。
サンライズ:"なんだこの曲?"ってメンバーがざわついたやつだ! こいつ、メンバーに言わずに新曲やったりするんですよ!
西沢:(笑)この曲を書いた当時、立ち食いそば屋でバイトしていたんですけど、ある日その店が全自動茹でマシーンを導入したんですよ。だけど、導入した直後に緊急事態宣言になっちゃって。すごく優秀なマシーンがあるけど、暇なの。6時から店を開けているのに。暇だったので、紙タオルの裏にボールペンか何かでこの曲の歌詞を書いていました。
-ということは、歌詞にはコロナ禍で感じたことが反映されていますか?
西沢:そうですね。その時期(2020年春頃)って、音楽業界も飲食業界も"コロナ禍だけど頑張っていこう!"という風潮があったと思うんですよ。もちろんそういう気持ちも大事だと思うけど、"みんなが頑張っているから、私も頑張らなきゃ"と思うのはちょっと違うし、みんながつらいからといって、自分もつらい状況でいなきゃいけないというわけでもないし。そんなことを考えながら書いた曲ですね。あと、文化庁が出した声明にイラッとしてしまって。文化芸術に対して補助していきますよという内容だったんですけど、最後に"明けない夜はありません!"と書いてあったんですよ。"止まない雨はない"ともよく言いますけど、あのとき考えなければいけなかったのは、"雨の中どう進んでいくか"ということだったと思うんです。だから、あの声明はちょっと腑に落ちなくて。歌詞で言うと、"降り出した雨に靴が濡れても life goes on"とか、"立てかけた傘が誰かに盗られても life goes on"というところには、そういう気持ちが反映されていますね。
-"音楽を聴く気分じゃないなら映画でも見よう"というフレーズも印象的でした。バンドがこう歌うのかと。
西沢:僕らは音楽をやっているけど、別に、音楽がゼウスのように全知全能な存在だとは思っていなくて。それに、正直僕にも、音楽を聴く気分になれないときってあるんですよ。
工藤:僕らの音楽も、聴きたいときに聴いてくれればいいよね。
西沢:そうそう。(音楽は)刺さる人には刺さるし、刺さらない人には刺さらないものなので。別にそこに固執する必要はないんじゃないかということですね。
-この4曲を携えて、10月からは東名阪ツアー"メメタァ LIVE TOUR 2021「もっと遠く、君の近くまで」"が開催されます。
西沢:TSUTAYA O-crest、名古屋CLUB UPSET、大阪 南堀江knave、新宿LOFTってメメタァっぽい回り方ですよね。"もっと遠く、君の近くまで"というツアー・タイトルは、「ロスタイム」の"もっと もっと 遠く"という歌詞からとっていて。ツアーで全国を回るようなことがなかなかできなかったり、ライヴをしてもお客さんと距離をとらなきゃいけなかったり、物販でもアクリル板やビニールを1枚挟んでいたり......という状況が続いていますけど、気持ち的にはみなさんの近くに行きたいなと。今回リリースした4曲も、みなさんに寄り添えるような音楽であれればいいなと思っています。
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