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INTERVIEW

Japanese

君ノトナリ

君ノトナリ

君ノトナリ

Official Site

Member:鈴木 穂高(Vo/Gt/Key) 末永 優磨(Ba)

Interviewer:稲垣 遥

支えがあることで生まれた楽曲たちが、誰かにとっても、そばにある大切なものや人に気づくきっかけとか、暗闇を照らす小さな光のひとつになれたなら幸いです


-前回のインタビューはメンバーがふたりになった直後でしたが、それから1年半、前を向いてしっかり進んできた結果が今回のミニ・アルバムに詰まっているような、地に足がついている感じがしました。ふたりでの楽曲づくりや活動について、掴めてきた感覚があるんじゃないかなと思ったりもしますが、おふたりの体感的にはいかがですか?

優磨:同じような経験をされた方が何人もいて僕らはどうすればいいかじっくり話し合い考えることができました。またサポートを加えてのライヴも増えていき、より多くの方に喜んでもらえる、いいものを届けるためにどうしていこうかをみんなで話し、レベルアップするために考えているので、よりアーティストだ! と感じることができました!

穂高:正直言うと、僕は今もまだどこが前なのかもわからないような、"自分が向いている方向だから、まぁ、こっちが前か?"みたいな感覚ですかね。やるしかないこと、やるべきこと、やりたいことが確かにあって、それを松明みたいにして真っ暗闇を進んでいるようで、その洞窟の中で見つけた手応えをひとつひとつ燃料に加えながら"もう少し進めるかな?"みたいな。頂くファンレターやメッセージの一通一通、もっと言えばその一文字一文字が、"その道で間違いないよ!"って都度都度知らせてくれているようで、本当にリスナーの方々に支えられているんだという実感をすることが多い期間でした。

-旅、航海、旅行記などを意味する"VOYAGE"を本作のタイトルに掲げたのはどうしてでしょうか。

穂高:前述のような状況下にあった僕の感覚からふと産まれたタイトルです。北極星を探しに航海に出たホッキョクグマがその船旅を経て、自分自身も誰かの暗闇を照らす光になれると知る。みたいなコンセプトを設けて、それをもとにしたのがジャケットです。

-プロローグ的なインスト曲「Voyager」からの、疾走感満載の「青天の霹靂」はまさにアルバムを幕開けるに相応しい、これから始まるぞという開けたサウンドでわくわくしました。どんなふうに作っていった曲なのですか?

穂高:もともと「Voyager」は2~3年ほど前からライヴの1曲目に演奏していた楽曲で、満を持して収録したという感じです。演奏する僕自身も"これから始まるんだ!"という高揚感があるので、曲順はここしかないよね、と。「青天の霹靂」はタイトルのように"予想だにしない出来事が突然起こる"みたいなアレンジになっているかと思います。"3月のライオン"という漫画が好きで、それに宛てた自分なりの書き下ろしみたいな曲です。

-「ウルトラマリン」は夏の曲ですが、音からも夏のムードが伝わってきました。最後にアコギが入るところも爽やかで印象的です。情景が浮かぶようなサウンドというのは考えていましたか?

穂高:茹だる夏の海沿いを意識したサウンドメイクをしました。バッキング・ギターはギラギラとした日差しみたいにパキッとさせて、ストリングスは海風をイメージして......みたいな感じです。あとは、余分なものを極限まで削ぎ落としてシンプルなバンド・サウンドを目指しました。"暑さの合間のほんの一瞬の涼しさ"を落とし込みたくて、最後のアコギの爽やかなストロークを入れました。

-「グッドナイトメア」はシングルにも収録されていた曲です。ダークな方向に振り切っていて、かなり君ノトナリとしては新しいなというインパクトがありました。トリッキーなベース音から始まって、澄んだヴォーカルのイメージの強い穂高さんが、この曲では怒りを孕んだ歌い方ですし、かなりフックになるナンバーだなと思います。どうしてこういう曲ができてきたのでしょうか。

穂高:前作のリリースよりはるか前からサビだけあったんですけど、リリースが落ち着く頃にスタジオでフワッと歌ったら"いいじゃん! 誰の曲?"って感じでいい反応を貰って、それなら続き書くかって感じで取り掛かった曲で、幅も広げたかったので、せっかくだから今まで書いたことのないような雰囲気にしようと思い、ダーティ&エロをテーマに書きました。歌い方の引き出しもこの曲に無理矢理こじ開けてもらったような感じです。

-また、ダークで攻撃的なだけではなくて、後半では儚くて弱い気持ちが歌に溢れてきたり、サウンドとしてもホーンが入ったりと、どんどんドラマチックな展開になっていきます。ドラマや映画のバックで流れていても似合う扇情的な曲だなと思いました。感情表現が豊かなこの曲を演奏するにあたっておふたりが意識したのはどんな部分ですか?

優磨:この曲のベースの音数、フレーズは他の曲と比べると少なくなっています。なので限られた音を強調するためにズッシリとした感じを音に込めました! またライヴではかなり映えるので演奏でもより音に込める感情が伝わってくるかと思いますね!

穂高:楽曲が孕んだストーリーの感情の起伏に合わせて歌い方を変えています。サウンド・アプローチはドラマチックになるようにセクションごとに鳴らす楽器を変えたりして、大サビへ向けてのクレッシェンド感は意識しました。ホーン・セクションを初めて取り入れたのもこの曲です。

-そこから一転して「Spica」はピアノを軸としたホーリーなバラードで、マーチング・ドラムが入るのもあって未来に向かって行進していくような印象で、"記憶に残る日々が/僕らを今も繋いでる/僕が闇に飲まれようとも"という歌詞は、今の状勢と重ねられるような感じがしましたが、どういうイメージで作った曲でしたか?

穂高:この曲もずいぶん前から完成していて、そのときから歌詞も変わっていないのですが、今の状勢だからこそ力強く、そして素直に届けられる一節がたくさん詰まっていると思います。アルバムを通して言えることでもありますが、誰かがいるから手を取れる、ひとりじゃないからこそ寂しくなる、そういうなんというか、街の景色のどこを見ても自分以外の何かがあって、それがあるからこそ自分がここにあることの証明になっているような、人間が人間たり得る感情をトリガーに産まれた楽曲です。航海の途中、真っ暗な海にポツンと浮かんで進み続ける船の上から見上げた満天の星空のような、開けていながらもきらびやかなサウンドをイメージしました。

-続く「スタンドバイミー」はクラップ音や大合唱できそうなコーラスが入っていて、すごくキャッチーで、ライヴを意識された曲なのかなと思いましたが、そういった面はありますか?

穂高:高校生くらいの頃から「スタンドバイミー」というタイトルの楽曲を書こうと思っていて、ふと思い出してアコギを弾きながら"スタンドバイミ~♪"って歌っていたらそこからすらすらと、ポロっとできました。文化祭のあとの教室とか、打ち上げの帰り道とか卒業式の翌朝とか、大人数でわいわいしたあと、ひとりになった瞬間のどこか温かい寂しさがたまらなく好きなんです。その寂しさってやっぱり、自分以外の誰かと過ごした瞬間があるからこそ生まれる感情であって、とても愛おしいと思うんです。最後の大合唱で、大円団で終わってもいいんですけど、やっぱりその胸がキュッとなる感じを表現したくてギターをワンコードだけ鳴らして音を止めるというところはこだわりました。そういう感情なども全部ひっくるめて、ライヴ映えしそうなアレンジになったなぁとは感じています。

-ラストの「夜光声」は、特に打ち込みっぽいデジタルな要素と、生バンド感のあるフレーズの組み合わせ方が面白かったです。こういうサウンドメイクをしたのにはどんな意図があったんでしょうか?

穂高:暗闇を進むなかで見つけた思い出とか出会った人とか、そういう類のものが段々と自分を形成するものとして増えていく感覚を、打ち込みなどの無機質な音に温度を感じる生バンドが加わって、最後はその生音がハネたリズムで前面に出てくるというようなサウンドに物語を持たせて表現したかったというのがあります。

-制作において、こだわったところや苦戦したところがあればおひとりずつ教えてください。

優磨:今回のアルバム一曲一曲のベース・フレーズは自分が出せる技術すべてを入れての作品になっています! またその多数のフレーズをレコーディングでは何度も失敗するところがありました。なので録っていくなかで自分の成長を感じながら制作を終えることができましたね!

穂高:「スタンドバイミー」のアウトロのドラム・ロールはレコーディングに向かう車内で思いついてその場で伝えて......みたいなエピソードをはじめとして、完パケギリギリまで楽曲の持つ物語性に忠実なサウンドになるように試行錯誤しながらこだわりました。あと、レコーディング期間中、何日間かスタジオ近くに宿泊したとき、乾燥で喉を壊さないよう、湯船にお湯を張ったままドアを開けて寝たりしたんですけど、喉が無事かどうかは起きてからの答え合わせだったので体調管理は苦戦したというか、緊張感ありましたね(笑)。

-改めて振り返って、本作はどんな作品になったと感じていらっしゃいますか?

優磨:東京ビジュアルアーツとの提供、全面協力により僕らの思いを引き出させていただき一切の妥協もなく素晴らしいアルバムができたと思います!

穂高:コロナウイルスの感染拡大によって世界の誰もが何が正しくて何が間違いかわからないような渦中にあるなか、この期間に生まれ、このアルバムに収録され、このタイミングでリリースすることになった楽曲たちの持つ使命を果たせるように尽力したつもりです。リスナーをはじめとした支えがあることで生まれた楽曲たちが、誰かにとっても、そばにある大切なものや人に気づくきっかけとか、暗闇を照らす小さな光のひとつになれたなら幸いです。

-最後に、リリース後の活動について思い描いていることや、読者へのメッセージがあれば聞かせてください。

優磨:いつも応援ありがとうございます! また僕ら君ノトナリやひとりひとりのことを応援、心配をしていただきとても感謝しています! みなさまも僕らもコロナにより、たくさんの被害に遭っていると思います。まずは自分の身を守ること、そしてみんなで協力することでこのコロナというものをいち早く収束してまた今までのように、これまで以上に素晴らしいライヴができたらいいなと思います! みんなで頑張っていこうね!

穂高:支えや応援にどれだけ救われていたかを実感した1年だったので、このアルバムを機に、今度は僕がいただいた以上のものを、音楽を通して返していけたらと思います。