Japanese
popoq
2020年08月号掲載
Member:上條 渉(Vo/Gt) オグラユウキ(Ba/Cho) 右京(Dr/Cho)
Interviewer:吉羽 さおり
初の全国流通盤となった『Essence』に続く、popoqの2ndミニ・アルバム『Crystallize』が完成した。今作は、前作のレコーディングでもディレクションを担当したIvy to Fraudulent Gameの福島由也、中村リョーマ(ex-WALTZMORE)とよりディープに曲と向かい合って、popoqの繊細な音の小宇宙を完成させた作品で、3人の内なる世界に触れるアルバムだ。シューゲイザーやひんやりとしたタッチのエレクトロ・サウンドを突き詰めて、且つ、より自由に上條 渉の無二のハイトーンや温かな光を湛えた歌声を引き出した曲が並ぶ。聴き手に触れ、鏡のように温度が変化するような歌心が優しく、また鋭い内容だ。前作以降、どうバンドや音楽と向かい合ってきたのか、今作への道のりを訊いた。
音の選択肢が増えた。この楽器を使ったら正解というステレオタイプなものは払拭されている
-1年ぶりのCDリリースとなる2ndミニ・アルバム『Crystallize』が完成しました。前回のミニ・アルバム『Essence』(2019年リリース)からより踏み込んだ作品になっているなと思いますが、いつ頃から制作をスタートしていたんですか。
右京:前作(『Essence』)をリリースしてからいろいろと試していたんですけど、がっつりと始めようとなったのは昨年の10月くらいでした。
-その試行錯誤のなか、どういう方向に進めようと舵を取っていったんですか。
右京:前作『Essence』を聴き直したりして、この感じでまたやっていくというよりは、もう少し深く自由な感じでやったほうが、自分が面白いなと思ったので、そっちに振ってみました。
-今回の作品は、自分の思考の部分やこのpopoqの可能性により深く潜っている感じがありますね。それをCrystallize、結晶化した作品だなというイメージは強いです。バンドとしては、前作をリリースしての手応えや、リスナーに届いた感触というのはあったんですか。
上條:これまでは各地、主要なところでしかCDを置かせてもらっていなかったのが、全国流通となっていろんなところにCDを置かせてもらうことになって。いろんな人が知ってくれたり、関係者の方でも目に止めてくれる方が増えたりしたので、そういうところではすごく大きい出来事だったのかなと思います。
右京:聴いてくれた人に、やりたいことを感じ取ってもらえた部分があるし、それがあったうえで、もっとこうしたかったというのが、いっぱい出てきたのは良かったですね。
オグラ:正直、自分的には全国流通ということで大きく広がって、もしかしたら大きな何かが起こるんじゃないかという期待もあったりしたんです。まぁ、反応自体はそこまで大きくなかったんですけど。その代わりに、そこから先のものが3人とも見えてきたと思うんです。前作が終わった段階で、さぁ次にどう動き出そうかというとき──作品を携えたツアー([popoq Release Tour 2019 「the Impluse of "Essence"」])が終わった段階で、右京からデモが送られてきたんですよ。自分自身はこの先どうなるんだろうっていう不安もあったんですけど、彼が作ってくる新曲を聴いた瞬間に、これは大丈夫だなと(笑)。また新しいことが始まるなっていうワクワク感が大きくありましたし、楽しみだなって感じで今回の制作に入りましたね。
-右京さんとしても、より深いところに踏み込んでも大丈夫だろうという気持ちになったんですね。右京さん自身はどんなふうに作業を進めていたんですか。
右京:ツアーの後半ぐらいから、フレーズ自体はたくさん溜めていて。その中から今のムードに合ったものを選んでいって......そこからが長かったんですけどね。それで10月くらいから曲作りに着手していて。
-色味としては、ポップさももちろんありますが、暗めというか、ダークで鋭い感じが強い。もともとのトーンとしてもそうですけど、よりその部分が出ているように思います。
右京:こういうのを作ろうっていうのはなかったんですけど、たまたま自分のネガな部分とかイメージしたものを抽出した結果、そうなったのかな?
-ちなみにどの曲が最初に形作られていったんですか。
右京:最初は「topia」でした。そのときは『Essence』が終わったばかりで、もともと小学校くらいに聴いていたようなJ-POPの持つ儚い感じとかを、まだやりたいなって思っていた時期で。それを昇華させたものを作ろうと、勢いで作った曲でした。
-先に配信となった曲であり、『Essence』を手に取ったリスナーがその流れで聴けるような曲でもありますね。
右京:デモ段階では、打ち込みとかは入っていなくてもっとバンド、バンドした感じで作っていたんです。そのときは、そのまま進んでいくことに対する葛藤はあって。そこで1回"バンド"というか、自分が固執しているものを取っ払って作ったものだったので、デモからは結構形が変わりましたね。
-バンド・サウンドにこだわってしまうと表現しきれないものが多かったんですか。
右京:できないというよりは、こっちを使ったほうが自分はいいなって思うものが多かったんです。
-バンドというより、曲ありきということで進められたんですね。上條さんはどうですか。
上條:まず右京がオケやメロディを持ってくるので、歌詞はそれを聴いて感じたことや、あとはタイトルから作ったり、自分の作り溜めている言葉の中から合うものを出したり、作り方はいろいろなパターンがあるんですけど。「topia」に関しては、そのときの自分の気持ちとかを入れてて。あとは『Essence』ではそれまでの既存曲もあったんですけど、新曲では歌詞の共作も多かったんです。オグラさんが初めて歌詞を書いた曲があって、右京と一緒に推敲しながら書いた曲もあって。『Essence』のときももちろん納得がいく歌詞が書けてはいたんですけど、今回の作品は、ほぼすべての歌詞を書かせてもらって。右京の曲がいいと思ったから、曲の部分はすべて彼に任せて自分はヴォーカリストとして、歌を届けるために自分の内面にしてもそうだし、自分の歌詞というものを表現しようと着手できた作品かなと思ってます。「topia」の歌詞を書き終えて、それがある意味主軸になったというか。
-この曲で今の自分が整理できて、何を出すべきかとかが見えてきた?
上條:そうですね。自分の内面や本質はそこまで変わらないと思うんですけど、状況が変化したり、過ごしていくなかで変わっていく自分の気持ちというのもあったりすると思うので、その自分の気持ちを抽象的にというよりは、具体的に表せたのかな。それが「topia」に出ていると思います。
-作品全編から、ちゃんと心を覗いて作っているというのが伝わりますね。すごく内省的ではあるけれど、外に向こうとしている。いろんなもどかしさも感じながら進んでいたんだろうなというのもわかるし、その過程が美しい形になっているなと思うし、すごくエモーショナルですよね。その第1弾として「topia」にまず走り出してもらおうという気持ちだったんですね。
右京:そういう気持ちでした。それとともにまだそこには葛藤があったので、ここから何を作っていこうかというのはすごく考えていた時期です。
-その方向性みたいなものは3人の内で合わせるんですか。
右京:「topia」を作ったときはバンドでやろうというのがあったんですけど、他に作っていたものがこれはバンドに合わないんじゃないかと考えていたんです。それが今回は逆に良かった部分でもあって......。
オグラ:うん、今回はいい意味で固定観念を崩したというのはあるかもしれないですね。いちベース・プレイヤーとしては、送られてきたデモを聴いて、自分のフレーズの幅や引き出しを増やさないとこれはついていけないなと思ったので。より音楽を聴いて、吸収をして、これに対応できるように自分の幅を広げていったというのはありました。
右京:わかってくれたっていう感じがした。
-プレイヤーとしては、今回はこの世界観を音響的に成立させるのが大事な感じですもんね。空間性とか奥行きとか、小宇宙を作るという感じがある。
右京:はい。でも、作るというよりは、辿り着くみたいな感じもありました。頭に浮かんでくる景色やイメージにしても、全体的にめちゃくちゃ冷たいところで鳴っている感覚があって。ただそれを作ったというよりも、そこに向かっていくっていう感覚に近かったんです。
上條:だからこそ、さっきの固定観念じゃないですけど、この楽器を使ったら正解というようなステレオタイプなものは払拭されているのかな。曲によってはギターが入らなかったり、シンセのベースを入れたり。音について選択肢が増えたし、いろんなことができるようになったなとは感じましたね。
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