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INTERVIEW

Japanese

popoq

2020年08月号掲載

popoq

Member:上條 渉(Vo/Gt) オグラユウキ(Ba/Cho) 右京(Dr/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

-今回は右京さんが作曲、上條さんが作詞という振り分けができた作品ですが、そこでオグラさんはより客観的に曲を見ることもできた感じはありますか。

オグラ:今回は曲がすべて右京君で、歌詞が上條で、僕はリスナー的な立ち位置でも聴けたんですけど、新しいことが始まる感覚というか。人生でも、何回も何回もスタートがあるじゃないですか。このバンドだと、始まりはひとつだけど、作品を作るごとにスタートを感じられて。右京君の成長を感じますね。彼は曲を作り始めたのが数年前の話なので。例えば、おもちゃを与えられた子供って、どんどん遊びを覚えていくじゃないですか。曲作りや音楽の知識を得ていくのに、スピード力があるんですよね。それに驚かされるのと、刺激を受けることが多いんですよ。

右京:曲を作るにしても、うまく辿り着けないところは、やっぱりみんなの知識を合わせたり、話をしたりしてヒントを得ることがすごく多かったんです。バンド以外でも、デザインしてくれる人や、プロデュースしてくれる人とも今回は緻密に話をしたので、それは大きかったかなと思います。やっぱり自分ひとりでは無理だなって。

-自分の心のありかもわかったり、出したい音はこれだっていうのが明確になってきことも大きいでしょうね。福島さんは学生時代からの友人で付き合いは長いですが、曲に対していいアドバイスをしてくれるわけですね。

右京:そうです。まず、僕が作ったものに対して、何がフックになるかというのを考えてくれたり。リファレンスの音とかを聴きながら、もっとこうしよう提案してくれたり、深いところまで話し合ったりしてきましたね。レコーディングにも携わってくれたので、ミックスに立ち会いしながらひとつひとつ見ていって。本当に音楽が楽しくなった期間でしたね。聴いて楽しいということから、作っていくことが楽しくなったというか。それは当たり前のことなんだけど、それがよくわかったというか、染みついた感じでした。

-そして最後の曲が「crystal」です。これも内側から外へと発していく曲で、高揚感に包まれますね。

上條:この曲が、歌詞を作り上げたのが一番早くて。なのに、自分らしさが一番表に出ているというか。もちろんすべての歌詞は思い入れがあって書いているんですけど、今回最も好きな歌詞ができました。

-伝えたいという思いが一歩前に出ていますね。

上條:これは届けなきゃっていう思いが強くて。もちろんこれまでも、一貫して愛や、悲しみとか、いろんな感情は入っているんですけど、今回初めて歌詞に"愛"という言葉そのものを入れたんです。普段歌詞を書いたあとに右京とお互いにリフレクションするんです。"この歌詞はどう?"とか。そこで右京が、"これはちょっとNGかな"とか、そういう話をしながら最終的に作り上げていることも多いんです。そこでは、ある意味クサくなってしまうような"愛"という言葉や表現って、僕たちの中では避けていたんですけど、今回は、愛という言葉を使った歌詞がそのまま通って。歌詞全体を見たときに、それがちゃんと伝わったからなのかなという。そこで自分の歌詞を書く起点がまた変わりましたし、本当に好きに歌詞が書けたというか。その好きに書けた歌詞をメンバーもいいと言ってくれたということは、周りにも伝わるんだろうなって思えた曲になって。

-すごく素直に出た言葉が愛というものだった。

上條:だからこそ、ある意味サムくないものになったのかなって。

-普段、"これはpopoqでは違うな"とか、言葉の禁じ手もあったんですね。

右京:他とのバランスが合っているかとか、温度感が違うものが気になっちゃって。今回、絵本のような感触をイメージしてたんですけど、歌詞ができてきたとき、イメージがあったので、何の迷いもなかったんですよね。

-サウンド的な面ではどうですか。

右京:昨年"フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)"を観に行ったときにTYCHOというアーティストを観たんですけど。シンセの感じが、音源ではわからなかったけど、こんなふうなんだっていう生で感じたものが鮮明に、頭に残っていて。"この感じ"っていうやってみたいものはあったんです。

-いろんなものがヒントになるし、右京さんはすごく感覚をオープンにしている感じがありますね。

右京:自分が"これが好き"って決めちゃうと、そこにしかいけないみたいなことをやめようっていう。

上條:昨年『Essence』をリリースしてから、いろんな出会いがあって、メンバー全員で"フジロック"に行ったこともそうですし、音楽を吸収する機会を多く与えてもらったので。そういうのも今回の『Crystallize』に繋がっているのかなとは思います。

右京:今もまだ家にいる時間が多くて、スピーカーで聴いているんですけど。あの生の感じってやっぱりまた違うし、やっぱりライヴが恋しいですよね......。

-ライヴへの欲求はこの数ヶ月で一段と強くなりましたよね。ライヴの話も出たので、ステイホーム間のことも聞きたいのですが、みなさんこの間はどう過ごしていたんですか。

オグラ:音楽を聴くことが多かったですかね。

上條:今までは新譜を聴くとか、新しいものを吸収していこうとすることが多かったんですけど。自粛期間は自分を作り上げた音楽たち、例えば、高校時代に出会った音楽についてこういうことを基にして自分はこんな曲を作ったなとか、そういうことを考えてましたね。その流れで例えば、地元に誰々っていうバンドがいたな、その人はよく村上春樹の小説読んでたなと思い出して、読み返してみたり、この人は岩井俊二が好きだったなと岩井俊二の映画を見直したり。今まで僕を作り上げたものをすべて振り返るという時間に使っていましたね。あとはいっぱい料理してました。

右京:僕は普段と変わらず、曲を作ってましたね。バンドとしても配信ライヴをやらせてもらう機会があったので、その準備で曲間のSEを作るとか、そういう楽しみもあって。いっぱい時間ができたからこそ、音楽を聴くこともできるし、練習や新しいものを作り出すことに時間をかけられたので、早くこの状況が開けてほしいと思いますけど、今の時間も貴重だなって思います。

-配信ライヴはやってみてどうですか。

右京:新曲を主にやったので、本当は生で体感してほしかったんですけど、コメントとか観てくれた人の感触が良くて。忘れないでいてくれてありがとうというのはありました(笑)。

上條:ステージに立って演奏するということにすごく幸せは感じましたね。もちろんお客さんが目の前にいる状態で演奏したい気持ちもあったんですけど。そこでいつも鳴らしていた大きな音を鳴らせることに喜びを感じられたからこそ、自粛期間は決していいとは言えないけど、いろいろと気づかされた期間ではあったのかなって。自分が、音楽が好きだなとか、プレイヤーとしてステージで表現することが好きなんだなとかって改めて感じられたというか。

右京:それが当たり前のことじゃないんだっていうのを知ったからこそ、新しい世の中でそれが当たり前になったとしても、忘れないでいられたらって思いますね。

-配信だからの面白さというのは見いだせた感じですか。

右京:結構作り込めたなって思います。冷たい感じで同期を鳴らす音の感じも極端にできるので、作品作りをする気持ちで。

上條:僕は正直誰が観ているかわからないなというか。普段のライヴなら、そこに来ているお客さんに届けたいという気持ちがあるけど、配信って、きっとこれまで僕たちのライヴを観てくれた方も観ているだろうし、観たことがない人も観ているんだろうなと思ったんです。そのときに、今の自分の一番いい姿を存分に出せるパフォーマンスで見せたいと沸々とするものもあったし、ある意味ストイックにできた部分もあるのかもしれないなと思います。