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INTERVIEW

Japanese

ましのみ

2020年03月号掲載

ましのみ

Interviewer:宮﨑 大樹

-『ぺっとぼとリテラシー』、『ぺっとぼとレセプション』ときて、いったんトレードマークであるペットボトルから離れたのもそういう経緯ですか?

2ndアルバムと1stアルバムは、併せて聴いてほしかったから、シリーズものにしたんですね。今回は今まで世に出してきた音楽と、経験してきた人生を踏まえて、個人的には"ましのみ"という名前が変わったくらいの変化があるというか。ましのみのままなんですけど、ネクスト・ステージみたいなものが「エスパーとスケルトン」以降の曲にはあるんです。

-名前が変わったくらいの変化というのはその通りだと思います。"奇才溢れるひねくれPOP"だった『ぺっとぼとレセプション』と、新作『つらなってODORIVA』とでは、聴いたときの印象が大きく違いました。大人の女性が歌うチルな作品というか。

大人になりましたから(笑)。あとは全般的にキーを今までより下げているのもあるかもしれないですね。それと、私の中で美学が変わったのかもしれないです。1stアルバム以前は、"曲を作る"、"メロディを作る"、"歌う"っていうのは全部自分でやってきたのですが、アレンジに関しては私よりそこに長けている人がいるから、私のエゴでそこまでやるんじゃなくて、お願いした人のいいところに私の意見も入れつつ完成させるっていうことが、いい作品を作ることに向けての最高な手段だと思っていたんですね。ヴィジュアルだったり、キャッチコピーだったりに関しても、私のいいところを知ってくれている周りの方に客観的な意見で決めてもらうほうが、プロダクトとして、結果的にいいものができるんじゃないかなっていう考えがずっとあったんですよ。

-適材適所みたいなことですね。それもひとつのやり方だと思います。

そうですね。だけど、やっていくなかで"今の私はそっちじゃないかも"って思い始めて。それが2ndアルバムくらいからなんです。こだわりが強いことに気づきはじめたというか(笑)。もともとシンガー・ソングライターをやり始めたのも、そもそもこだわりが強いのに、人に上手く伝えられない、強く言えないから"私にはバンドはできない"って思っていたんです。だから、ひとりでやっているみたいなところも初めからあるんですけど、それに通ずるところもあります。例えば、アレンジャーの方に一曲一曲をお願いしてアルバムができていくなかで、どうしても統括できないというか、ひとつひとつのアレンジは素敵な音にしてくださるんですけど、私が歌詞を書いたときに描いている世界観を、100再現するには私がもっと音に足を踏み入れないとしょうがないんじゃないか、とか思って。自分が統括するっていうところのほうが大事なんじゃないかって、美学が180°くらい変わってきたんです。なので、アルバム全体の曲もそうですし、キャッチコピーもそうですし、聴かせるためにキーを下げたりとか、テンポ感を変えてちょっと隙間のある、余裕のある感じにしたりっていうのは、全体の音や聴いてもらえる人の印象に対して、自分がトータルで考えられるようになったからこそ出た変化なのかもしれません。

-たしかに、音へのこだわりはアルバムを通して感じられました。

まだまだ全然詳しくないんですけど、音楽を聴くようになったのも、2ndアルバムのあとに「エスパーとスケルトン」の制作でsasakure(sasakure.UK)さんと出会ったことが大きいんです。音に対する勉強をするというか、感性にプラスして、知識とかそういうものに基づいた魅力も知っていって、そこから音楽をすごく聴くようになったので、それも反映されてるのかなと思います。私の音楽に対する知識も、社交性という面でも、トータル・プロデュースという面でも、すべては「エスパーとスケルトン」から始まっているので、個人的にはここからの流れがすごく楽しみです。

-そのsasakure.UKさんは、本作の「薄っぺらじゃないキスをして」でも編曲をしていますよね。

「エスパーとスケルトン」と「薄っぺらじゃないキスをして」って、同じ時期にレコーディングをしているんですね。このときは、音の交ぜ方のこだわりとか、テンポ感、キーへのこだわりが出てきたときなので、まだイメージで話をしていました。"こういう雰囲気で"とか、"こういう音を使って"とか、たくさんやりとりをさせてもらって。特に「薄っぺらじゃないキスをして」は、死ぬほどやりとりしていただいた気がします。sasakureさんの自主企画ライヴに押しかけていって、ライヴ直後に打ち合わせしてもらったりとかして、「エスパーとスケルトン」以上にたくさんのご負担をおかけしました(笑)。それでも、熱量を持っていただいて、すり合わせしながらやっていただいていましたね。

-「NOW LOADING」の編曲はパソコン音楽クラブさんが手掛けていますね。この曲はどうやって作り上げていったんですか?

ループもので退屈をしない音楽を作りたいっていうのがまずあって。いろんなコンセプトがあったんですけど、サウンド面とかリズム面で、"パソコン音楽クラブにやってもらうならこういう曲を書きたい"みたいなものがあったんですよ。その雰囲気を伝えられるようにビートの揺れ感や、テンポ感、リフやコーラスのイメージをデモで作ってお渡ししました。もともとパソコン音楽クラブの音の作り方とか、リフやループ具合のセンスがすごく好きで。今回は自由に遊んでいただきたいと思って、私が打ち込みで作ったデモを送ったら、とっても素敵なものが返ってきたので"とんでもねぇな!"って(笑)。私が、あのテンポ感、あのリズム感で編曲すると、世界観は広がってもムードとしてはそんなに変わらないんですけど、ビートがすごいじゃないですか? 第1稿の時点で"この人たちに頼んで良かったな"となりました。打ち合わせで初めてお会いしたんですけど、曲に対する考え方とかもデモで伝わっている感じがあったので、ほぼそのままいった感じですね。

-そういう意味では、「7」、「のみ込む」の2曲が、サウンドの細かいところまでより自分で入っていった曲でしょうか?

そうかもしれないです。「7」のほうが「NOW LOADING」より作り込んだ感じはあります。曲を作るのにめっちゃ時間かかりましたね。まず、アレンジの前段階から、(タイアップ作品であるMBS/TBS系ドラマ"死にたい夜にかぎって"の)原作を読んで脚本を読んで、そこから歌詞を書いてメロディを書いて、スタッフの方に聴いていただいたところ、いろんな意見を言っていただきました。そこから結構やり直しましたね。第何稿みたいになったのは初めてかもしれないです。サビメロも歌詞もそうなんですけど、構成も複雑な曲なので、そこもかなり練っていましたね。年を跨ぐ何週間かでサウンドを作り込んでいったんですけど、曲の作り込みをしたのはこの曲が初めてだったので、本当に苦戦しました。

-年越しタイミングでずっとこもって制作していたのは「7」だったんですね。

そうです! 「7」ができたときは感動しました。ずっと作っていたし、初めて作り込んだし、初めて生音レコーディングがあったしって、いろんな感動点があって嬉しかったです。