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INTERVIEW

Japanese

ましのみ

2020年03月号掲載

ましのみ

インタビュアー:宮﨑 大樹

シンガー・ソングライター ましのみの、約1年ぶりとなるフィジカル作品『つらなってODORIVA』。本作では、サウンド、歌詞、歌声と、あらゆる面において、これまでの彼女の音楽との明らかな違いを感じることできた。それは"ましのみであって、ましのみではない"、そんな印象すらも抱くほど。実際、その感覚は本人にもあったようで、Skream!としても約1年ぶりのインタビューで話を訊いていくと、彼女自身が"「ましのみ」という名前が変わったくらいの変化がある"と手応え十分な表情で語ってみせてくれた。

-前回、2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』(2019年リリース)についてインタビューしたときはまだ学生でしたよね。

え! ホントですか? あ......本当だ、不思議な感じです。

-大学を卒業して約1年、どんな変化がありましたか?

前回アルバムを出した4年生のときから、そんなに大学生、大学生した生活をしていなかったので、生活のリズムはそこまで変わりはないんです。だけど、周りの子たちが就職したりして、そういう意味ではメンタル面の変化はここ1年でありましたね。"生きる"ということに対して、視野を広げざるを得なくなったというか(笑)。同じ環境で生活してきた子たちが、この1年だけですごくいろんな生き方をしていて、今でも会える人もいれば、忙しすぎてなかなか会えない人もいるんです。そういう人たちと会うなかで、音楽もだし、人生というところでも、いろんな生き方があるんだなっていう考え方にはなりましたね。

-なるほど。

あと、大学を卒業したからっていうわけではないんですけど、この1年は前年比で3倍くらい人に会うようになりました。積極的にいろんな人に会うようにしているので、人に対して免疫ができたというか、あまり人見知りをしなくなりましたね。自分を曝け出すのが昔よりは上手くなったのかなと。

-そういう変化は音楽にも影響を与えていますか?

前は、"私の内なるものが人と共通すればいいな"と思いながら曲を書いていたところが強かったんですけど、いろんな人と接するので、価値観や考え方が精査されていっている気がします。なので、自分自身の考え方の変化が曲には出ているんじゃないかなと思うし、単純に生きている年数が増えていますしね(笑)。そういうところで、今回のミニ・アルバムで言うと、恋愛っていうところを軸にいろんな側面が書けるようになったのかなと思います。ただ、本当に書きたいのは、ベタベタなラヴ・ソングというよりは、日々を暮らしているなかでの"踊り場"になるような曲を書きたかったので、恋愛じゃないと思ったら恋愛じゃない曲として聴けるように書いていますね。

-曲の種みたいなものについて、これまでは学生生活ならではの曲もあったと思うんですけど、そこも変わってきそうです。

「チャイニーズ再履修」(2018年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『ぺっとぼとリテラシー』ボーナス・トラック収録曲)とかですよね(笑)。InstagramやTwitter、ラジオのメッセージ、配信のときに募集する質問とか、いろんなところでファンとコミュニケーションを取っていると、ファンの子たちから"彼氏と別れて~"とか、"振られて~"とか、"しんどいです"っていうメッセージがあるんですよ。そういう気持ちは共感できるんですけど、それに対して言葉で"そうだよね"とか、"こうしたほうがいいよ"って言うのも違う感じがして。このミニ・アルバム自体に、"逃げ場になれたら"、"休息できる場所になれたら"みたいな意味合いもあるんですけど、そういうところに寄り添って、逃避できたりとか、ちょっとした励ましになったり、安らぎになったりしたらいいなと思って曲が生まれていますね。そういう書き方って昔はあんまりなかったんです。基本的に自分の経験に則して、自分の内面と向き合う作業が多かったので。

-『ぺっとぼとレセプション』にも"寄り添う"っていうテーマがあったと思うんですけど、今回は寄り添うまでのルートというか、アプローチの仕方が違う感じがしました。

そうですね。あとは単純に寄り添い方が上手になってきたのかなぁと思います。2ndアルバムは寄り添い始めだったじゃないですか(笑)? 1枚目のアルバムは"硬く強いものを作って突き刺す"、"世間にトゲトゲボールを投げる"みたいな気持ちで作って、初めて全国流通して、寄り添うことに対する意義を見いだせるようになったのが2枚目でした。あのアルバムは私の中で"試行錯誤"という感じなんですよ。いろんな寄り添い方を試行錯誤して、どんな寄り添い方をすると、より良くなるんだろうっていうのを試していたんですね。それと、寄り添うっていうテーマとかを貫くにあたっての歌詞、音像、ヴィジュアルとかを、前よりもっと私が統括して考えられるようになったので、それで前のアルバムからひとつ上のステージで届けられるようになったのかなぁと。2ndアルバムは気づきのアルバムだったのかもしれないですね。それが今回、形になってきたのかもしれないです。

-前作(『ぺっとぼとレセプション』)では「コピペライター」、「AKA=CHAN」みたいな、寄り添う反動で生まれた曲もありましたよね。

あー、ありました! 懐かしいですね。前作は寄り添うのが不器用なあまり、寄り添うだけに注力した反動で出てきた自分の感性が爆発したみたいな、二極化したアルバだったんです。だけど、今回はすべてにおいて、やりたいことをできていますし、そんなにたくさんの影響を与えられるとは思ってないんですけど、"リスナーの人たちがこういうふうになればいいな"って思っている部分だけじゃなく、自分のやりたい音楽をどうやったら合致させられるのかっていうのも考えていました。なので、今回は反動が現れる必要がないものになったというか、アルバムとしてまとまっていると思います。

-ヴィジュアル面も含めて、トータルでプロデュースして制作された印象だったんですけど、そういう背景があったんですね。

そうですね。あと、5曲っていうのもいいなと思いました。私は飽き性なので、12曲だったり、フル・アルバムを全編同じコンセプトで作っていると、嫌になっちゃう気がするんですよ(笑)。実は、もっとこういう曲も入れたいよねっていう足りないところもありつつ、八分目なところもちょうどいいというか、トータル・プロデュースがしやすかったなと思っています。あとは、1枚目、2枚目を出してみて、"こういう形で、こういう流れで聴いてもらえたりするんだ"っていうことなどもわかってきたので、やっとトータル・プロデュースできるようになって。ヴィジュアルについては、今はまだ自分のヴィジュアルに対して客観的な目が持てていないので、1回トータル・プロデュースに専念するためにも、ジャケットやMVに関しては、自分自身が被写体として出るのは退こうと思って作ったりもしました。