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INTERVIEW

Japanese

リーガルリリー

2020年02月号掲載

リーガルリリー

Member:たかはしほのか(Vo/Gt) 海(Ba) ゆきやま(Dr)

Interviewer:TAISHI IWAMI

-ギター・ノイズのバリエーションにもハッとしました。1曲目の「ベッドタウン」は静寂からいきなり爆発する狂気的なノイズの覚醒作用が凄まじい。

たかはし:こういう静と動のわかりやすい展開が好きなんです。

-その「ベッドタウン」の流れを受けて、2曲目の「GOLD TRAIN」の疾走感のなかで煌めくノイズに昇天。細胞がどんどん開いていくような感覚になりました。

たかはし:昔は出ちゃったノイズをそのまま乗せたみたいな、いい意味での適当さ加減が好きだったんですけど、最近はノイズって、細部まで聴くとめっちゃ震え上がるなって、そういう良さに目覚めてきました。

-「1997」は、90年代のオルタナティヴ・ロック然とした不協和と抜けのいいサビが印象的でした。たしかに、海さんがおっしゃった"昔の壊れたアンプから出ている"ようなベースの音も当時のレトロ感を演出するうえで効いています。

たかはし:これはBLURとかDEATH CAB FOR CUTIEとかNIRVANAとかWEEZERとか。そうだ、たしかPIXIESの「Debaser」感とか、PAVEMENTみたいに、とか言ってたよね?

ゆきやま:PIXIESもPAVEMENTも言ってたね。

-ご自身の生まれた年がタイトルに、生まれた月が歌詞にも。そのうえで、"私は私の世界の実験台"というフレーズ。意味合いとしてはポジティヴだと思うんですけど、リーガルリリーの代表曲のひとつ「リッケンバッカー」(『the Post』収録曲)の"おんがくも人をころす"にも近いニュアンスで刺さってきます。

たかはし:この曲は「リッケンバッカー」みたいな曲をまた作りたくなってやってみたら、しっくりきたんです。たまに作りたくなるんですよね。自分に自信をつけるための応援ソング。

-「そらめカナ」の制作秘話も聞きたいです。前の「キツネの嫁入り」からの流れもあって、始まり方があまりにもサラッとしているように感じました。そこが"優しくて強い"フックになって、どんどん不思議な世界観に引き込まれていくようで。

ゆきやま:わかります。誰かがふと現れて、何かを置いて去っていくみたいな。不思議ですよね。最初にほのかから弾き語りで送られてきたときに、"え? めっちゃいいんだけど、どうしたらいいの?"ってなりましたし。よくある曲っぽい波じゃないし、使ってる音も他にはない感じで、その世界観を表現するために結構頑張ったんで、愛着のある曲です。あと、どうでもいい話なんですけど......。

-そう言われたほうがむしろ聞きたいです。

ゆきやま:私は金物を集めるのが好きで、レコーディングの前にも新しいのが欲しくなって、ライド・シンバルのカップだけを取った、ベルっていうシンバルの大きいバージョンを買ったんです。でも全然使う場所がなくて、この曲の最後の"チーン"にだけ使いました。たぶん今後ライヴでも使わないだろうなっていう、誰も興味がないエピソードもあります(笑)。

-その"チーン"、私はすごく好きなポイントです。あと、"この水溜まりで"の前に、どこかで聴いたことのあるギターのミュート・カッティングが。ここにも思わずニンマリしてしまいました。

たかはし:「Creep」(RADIOHEAD)ですね。

ゆきやま:「Creep」って言ってたもんね。

たかはし:あれが一番カッコいいギター・フレーズだと思ってるんです。

ゆきやま:間の取り方も絶妙だよね。

-「ハナヒカリ」は"F-16"や"兵隊"というワードも出てきますし、平和について考えさせられます。

たかはし:子供の頃、近くに米軍基地があったから、よく弟と戦闘機を見に行ってたんです。それが戦うための乗り物だって、あとから知るんですけど。

-リーガルリリーの音楽やライヴには"平和"を感じるんですよね。その音が鳴っている場所こそ我々の世界だって。そこはいいライヴや深夜のクラブに近い感覚で。

たかはし:あぁ、なんとなくわかります。あとにも先にも平等の真ん中にいる感じですよね。

-そうです。歌詞については、ポリティカルな要素と生活感がシームレスになっていると私は感じていて、すごくいい流れで考えるきっかけを与えてくれます。

たかはし:実際に"戦争をしてます"って、そこを表現したくて。じゃあこの国で戦争が起きたらどうなるのか。そういう目線なんです。私は、"戦争は反対です"とは言えなくて。なんでだろう? 戦争をするとか反対するとか、いつかその概念自体が"無"になればいいと思います。

-続く「猫のギター」はクラシカルな3拍子。そこにザラついたバンド・サウンドとのマッチングが面白かったです。

海:私の中にはクラシックがもともとあって、そことロックがちょうどいい感じで融合できていて、気に入ってます。

-ラストの「bedtime story」は14分越え。途中で4分30秒ほどの間がありますが。

たかはし:これ4分33秒なんです。John Cageの「4'33"」にならいました。無音ではなく環境音も音楽だっていう、そういう曲。毎回ライヴでも人の咳払いとか聞こえてくるんですけど、そのあとに"ボーナス・トラックを入れました"みたいな感覚ですね。『the Post』のときもこういうことはやっていて、特に深い意味はありません。なんとなく面白いなって。

-そして、このアルバムがどう受け入れられるのか。

海:今回は、リーガルリリーの中では結構ポップなイメージもあるし、これまでらしさもあるので、反応はすごく気になりますね。

ゆきやま:すでに既存曲との相性の良さを感じている部分もあるので、ライヴも楽しみにしていてください。

-ツアー(3月1日より開催の"リーガルリリーpresents「bedtime story」")も楽しみですね。

たかはし:緊張するなぁ。みんな来てくれるといいなぁ。