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INTERVIEW

Japanese

雨のパレード

 

雨のパレード

Member:福永 浩平(Vo) 山﨑 康介(Gt) 大澤 実音穂(Dr)

Interviewer:TAISHI IWAMI Photo by 新倉映見

メンバーの脱退。それに伴う制作過程の変化。外部からの共同プロデューサーを迎えてのシングル・リリース。2019年は雨のパレードにとって、激変と再出発の年となった。そして2020年最初の狼煙として完成したアルバム『BORDERLESS』は、そのタイトルが示す通り、ジャンルや時代に線を引くことなく様々な音楽性を折衷し、"ポップの今"を描き続けてきたセンスの中に、まだまだ眠っていたポテンシャルが表面化。チャレンジング且つポップで開放的でユーモラスな、ポジティヴな多面性が溢れる、未来に向いた新たな翼を手に入れた作品となった。そしてそれは、ポップ・シーンの新風として、広く世の中に、新鮮な空気を吹き込むだろう。


雨のパレードならではの"ボーダレス"。そのオープン・マインドが曲に与える影響とは


-私は、雨のパレードの音楽には大きくふたつのポイントがあると思っています。ひとつは、現在進行のインディペンデントなシーンからメイン・ストリームのトレンドまでを吸収した同時代性。もうひとつは、それぞれのプレイ・アビリティに象徴される独自性。その点において、今作『BORDERLESS』は、新たに大きな花が咲いたアルバムだと思いました。そこでまず、2010年代というディケイドを、広くシーンを見渡した視点と、パーソナルな視点から振り返りながら、みなさんにどんな変化が、何が起こったのか、話していただけますか?

福永:たくさんの曲を書いて作品を出してきましたけど、デビューしてからは音楽を作ることだけに注力できたので、大変だったというよりは、すごくいい感じでやってこれましたね。その間にシーンも大きく動いて、CDが売れなくなって、サブスクリプションで音楽を聴くことが主流になってきました。そこに関しては、僕は新譜を掘るのがすごく好きなので、アーティストの発信する情報をスピーディに収集できるようになったことは、すごくプラスになっています。

山﨑:ずっと音楽のことを考えていた10年でした。そんななか、やっぱり鹿児島でバンドを始めて上京してきたことは大きかったです。東京は人口も多いし、ヴァイタリティに溢れた人たちがたくさんいてびっくりしました。特に年下の若い人たちは、自分にはないセンスや嗅覚を持っていて、大きな刺激になりましたね。

-具体的には、どんなことに刺激を受けたのですか?

山﨑:音楽以外のいろんなカルチャーにも精通していて、それらをシームレスに融合させていくセンスや行動力ですね。僕はバンドマン然としていたというか、楽器のことだけでしたから。

大澤:結成時やデビュー時に対バンした人たちのこととかを思い出してみると、私たちも周りも、いろんな刺激を受けながら変化しているように思います。そのなかでやりたいことがどんどん膨らみながらも、何をどうすればいいかわからなかった時期もありました。そこから少しずつ手札が増えていって、今は"やりたいこと"と"できること"の距離が近づいてきているように思います。

-今年(※取材は2019年12月)はベースの是永(亮祐)さんが脱退することから始まり、すごく大きな変化がありました。

福永:そうですね。まず是永が脱退したことで、曲の作り方を根本的なところから変えたんです。もともとは4人でスタジオに集まって、一緒に演奏しながらコード進行やアレンジを決めていました。そうなるとおのずと両手両足で足りる音しか出せない。もちろん、生演奏で息を合わせていくからこそのエネルギーもあるんですけど、僕らがやりたい音楽を形にしていくうえでは、そこがネックでもあって、ずっとどうするべきか考えてたんです。だから、3人になったことをきっかけに、パソコンを開いてDAWを使って曲を作っていくことにしました。結果、家でも作り込みの作業ができるから、レコーディングに向けて詰められることも増えますし、気持ちの鮮度を保ったままいろんな音を入れられるようになったことで、想像以上にいい方向に向かっていったように思います。

-ライヴも変わりましたよね。

福永:はい。今までは同期を使ってなかったですし、クリックすら聴いてなかったので。制作面で幅が広がったことと同時に、ライヴでも今までは手数が足りなくて出せなかった音を出せるようになったことは、すごく大きいですね。過去の曲も、また生まれ変わって新たなグルーヴが生まれましたし。

-そして、今回のアルバム『BORDERLESS』は、作品中5曲で、蔦谷好位置さんが共同プロデュースに入られたことも、かなり大きな刺激になったと思うのですが。いかがでしょう。

福永:蔦谷さんの存在は本当に大きいですね。レーベルのディレクターが"このタイミングでプロデューサーを入れてみるのはどう?"って提案してくれたんです。僕らもプロデューサーを入れることに抵抗があったわけじゃないし、どなたかとやらせてもらえるなら、僕らの音楽と親和性の高い部分もありながら、大きなヒットを経験している蔦谷さんがいいんじゃないかって、満場一致でお願いしました。

-どんなところがハマりましたか?

福永:僕は意固地なところがあるんで、自分たちでプロデューサーを招くと決めておきながらも、お会いするまでは"自分は曲げないぞ"みたいに気を張っていたんですけど、蔦谷さんは何かの選択に迫られたときに決断するセンスに共感できるというか、僕らのことを理解したうえで、うまく導いてくださったと思います。そういった人との向き合い方や仕事に対する姿勢といった意識面においても、DAWのことや歌詞でのグルーヴの出し方など、具体的な制作においても、本当にいろんなことを吸収させてもらいました。

山﨑:メイン・ストリームの真ん中で活躍されてる方なんですけど、アンダーグラウンドなマインドも持っていらっしゃいますし、とにかく知識もセンスも豊富で、音選びひとつ、和声の作り方ひとつ、あらゆることが光って見えるんですよね。本当に勉強になりました。

大澤:私たちだけじゃ出せないポテンシャルを引き出してくださったように思います。バンドが"グンッ!"と持ち上がった感覚になれたのは、蔦谷さんの力が大きいですね。

-"BORDERLESS"というタイトルは、そういった制作方法やマインドが、今まで以上にオープンになったこととも、音楽ジャンルや、もっと大きな意味で人の様々な価値観などを超えていく意とも受け取れますが、その真意はどこにあるのでしょう?

福永:僕らって、ジャンルも時代性も、メイン・ストリームもアンダーグラウンドも、すべて吸収したいと思ってやっているんで、その音楽性をシンプルな言葉で打ち出すのが難しいんですよね。あるイベンターさんが"「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にも「SUMMER SONIC」にも「FUJI ROCK FESTIVAL」にもハマるね"って誉め言葉で言ってくださったことがあって、今はそれが自分たちの強味だと思っているんですが、それをコンプレックスだと思っていたこともあって。

-なぜコンプレックスだったんですか?

福永:それをネガティヴに捉えると、ある意味"どこにも属せない"ってことじゃないですか。別に属さなくてもいいんですけど、自分たちには芯がないのかなと気持ちが揺らぐこともあったんですよね。でも今作は、雨のパレードを構成するあらゆる要素に対して、胸を張って"これが雨パレ(雨のパレード)だ"と言える内容になったと思います。