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INTERVIEW

Japanese

リリィ、さよなら。

2019年08月号掲載

リリィ、さよなら。

Member:ヒロキ(Vo/Pf/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

昨年リリースした4thオリジナル・アルバム『愛する以外になかったからさ』で、"再生"を提示したリリィ、さよなら。が"新境地"へ――5thオリジナル・アルバム『最終話までそばにいて』は、収録楽曲7曲それぞれで異なる花と花言葉をモチーフに制作された色鮮やかな作品だ。今回のインタビューでは今作で見えた新しい挑戦にフォーカスし、フリーランスでの活動、中国でのブレイクなど、2010年代らしいアーティストの動きを見せる彼の心境などに迫った。

-7月上旬の盲腸、大変でしたね。

久しぶりに"あ、死ぬかも"と思いました(笑)。

-(笑)リリースやお誕生日の7月18日に被らなかったので、不幸中の幸いでしょうか。

そうなんです。東京、熊本、大阪のバースデー・ライヴやラジオ出演にも影響はなくて。熊本のライヴのあとは1週間くらいオフもあるので、病み上がりながらに少しずつ立ち直ってます。

-それは良かったです。リリィ、さよなら。は昨年4thオリジナル・アルバム『愛する以外になかったからさ』をリリースし、それ以降も映画主題歌への起用、様々なアーティストへの楽曲提供、中国でのワンマン・ライヴなど、トピックに恵まれてらっしゃるなと。

フリーランスになって1年目で、ありがたいことにいろんな方々からお仕事をいただけました。物事はこんなにも人の縁で繋がっていくんだなー......と、フリーランスならではの動きができましたね。音楽を続けていくことはどんな状況でも大変だけど(笑)、続けられるのは本当にありがたいです。まねきケチャの中川美優さんへの提供曲(「0.2mlの割り物」)は、彼女が書いた歌詞に曲をつけたんです。詞先で曲を書くのは初めてだったし、彼女の詞はメソッドとかにとらわれていないので、高い音楽スキルが要求されて。でも頼まれたからにはいいものを作りたいし、やりきりました。本気出したらまだまだいくらでも曲を書けるなという自信に繋がりました。

-おぉ、頼もしい。

フリーランスになってからだいぶ逞しくなりました(笑)。

-インターネットを伝って口コミで中国へとブームが起きているのも、音楽家としてだいぶ自信になっているのでは?

ほんと嬉しいし、びっくりなんです(笑)! 2年くらい前にお客さんから、"中国でこういうムーヴメントが起きてますよ"と教えてもらって。曲がひとり歩きして口コミで広まって......歌詞も現地の方が翻訳して投稿していて、メロディやサウンドだけでなく、歌詞も含めて愛してもらってるんです。いろんなタイミングが重なって、運良く今年の1月に上海でライヴ("リリィ、さよなら上海公演2019「于你我之间~上海篇~」")が組めて。会場には楽曲をすごく聴き込んでくれている熱狂的なお客さんたちがたくさん集まってくださって......本当に嬉しかったです。

-そのライヴを終えてから今作『最終話までそばにいて』の制作に入られたんですよね。どうやら今作は花がコンセプトになっていて、一曲一曲にテーマとなる花と花言葉があるとのことですが、こちらについて詳しく教えていただけますか。

ひとりっ子なのもあって、もともと小さい頃から図鑑とかを読むのが好きだったんです。中学時代には"365日花言葉の本"みたいなファンタジーでラヴリーな本も持っていて(笑)。あとは令和一発目のリリース、ですね。節目節目のお祝い事には花束があるから、新しいものの始まりやお別れのような区切りとして花を使いたかったんです。平成3年に生まれて、どっぷり平成の音楽を聴いて、バンドをやって曲を作って、大人になって、楽しいこともつらいこともたくさんあって......僕の人生のすべてとも言うべき平成がついに終わってしまったから。

-たしかに平成初期生まれの人にとっては大きな出来事かもしれないですね。おまけに平成は終わる日が決まって、そこに向かってカウントダウンしていったから。

そうそう、そうなんです。でもこの作品においての花は平成へのはなむけではなく、"令和からまた新しいことが始まりますよ"というポジティヴな意味合いのものにしたかったんですよね。CDの歌詞カードには、デザイナーさんと二人三脚でそれぞれの曲のモチーフになった花のロゴを作りました。全然違うタイプの7つの花と曲だから、それをひとつの花束にするのは歪かもしれないけれど、だからこそ面白味とかわいらしさが生まれて、きれいなものになるんじゃないかなって――そういう意味も込められています。アー写も含め、ジャケットやアートワークも曲といろいろ関連づけました。中国の方々から気に入ってもらえたのもジャケットと音楽の相乗効果が大きいらしいんです。

-うんうん。CDがひとつの芸術作品になっていると思います。

ジャケットは前作に引き続きpomodorosaさんが描いてくださって、少女が花の中に寝ているんですけど、これは眠ってしまったのではなく目覚める前の状態なんですよね。今回の7曲を聴いてpomodorosaさんは"目覚め"を感じてくださったみたいなんです。新しい場所に行くために少女が夢から目覚めて新しい時代が始まる......という、楽曲の世界観を補完してくださっている、すごく美しい絵だと思っています。

-今作は、koma'nさんが7曲中6曲の編曲に参加しているので、サウンド的にも新しいアプローチがたくさんありますよね。ジャケットの通りカラフルなアルバムだと思います。

令和一発目ということでできるだけ新しい風を入れたくて、同世代のkoma'n君と一緒に作ることにしました。僕は0を1にするのは得意なんですけど、1から10にするアイディア出しは弱くて。でも彼は1から20や30にできるくらいアイディアの引き出しがあるんですよね。一緒に制作することで改めて彼の音楽的なアイディアの多さに驚きました。