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INTERVIEW

Japanese

リリィ、さよなら。

2018年07月号掲載

リリィ、さよなら。

Member:ヒロキ(Vo/Gt/Pf)

Interviewer:沖 さやこ

超特急トラフィックライト。などへの楽曲提供経験を持つ熊本出身のミュージシャン、ヒロキによるソロ・プロジェクト"リリィ、さよなら。"。2012年に大学進学のため上京し、リリィ、さよなら。としての活動を開始したヒロキは、2015年から2016年にかけて3枚のオリジナル・ミニ・アルバムを制作し、2017年にはコンセプト・ミニ・アルバム『僕らのポラリス』をリリースするなど、精力的な活動を続ける。2年ぶりのオリジナル・アルバムである『愛する以外になかったからさ』は彼の気づきや心境の変化が大いに表れた、まさしく成長の1枚。過去作品と比較しながら、彼が現在どんな想いを持っているのかを探った。

-リリィ、さよなら。は過去に1年半ほどでオリジナル・アルバムを3枚(2015年2月の1stミニ・アルバム『リリィ、さよなら。』、2015年10月の2ndミニ・アルバム『ハッピーエンドで会いましょう』、2016年の3rdミニ・アルバム『どうして君は世界で一人』)リリースしていて、ヒロキさんの青春の私小説3部作的内容になりました。この3部作は今、ヒロキさんにとってどんなアルバムになっていますか?

遠い眩しい思い出......みたいな感じですね。若かった(笑)! あの3部作をリリースしたとき僕は学生だったので、余裕のある状態で青春を過ごして音楽を作っていたんだと思います。世間を知らない青二才だからこそ表現し得た青臭さとキラキラ感ですよね。そのぶん、作り終わってからやり切った感が出ちゃったんですよ。

-3rdミニ・アルバムを制作したときに同級生が卒業して、アルバムが世に出た年度にヒロキさんも大学も卒業なさったから、生活面でも少しずつ青春というものが離れた時期でもありましたよね。

自分と自分の周りの狭い世界しかないときはいくらでも言葉が出てきたし、言いたいこともあったんですけど、そこが落ち着いてしまったんですよね。曲も書けなくなっちゃったし、詞も出てこなくなっちゃったんです。大学を卒業してミュージシャンとしてどう生きていくべきかを考えたときに、いつまでも学生時代みたいな青春を歌ってる場合じゃないなと思って(笑)。それと同時に"音楽ってなんなんだろう? 自分は本当に音楽を続けたいのか?"とすごく悩んで、Facebookを開けば地元の友達は結婚していたり、仕事にも慣れてきたりしていて焦りも生まれて――ってこのインタビュー重くないですか!? 大丈夫ですか!?

-大丈夫です(笑)。コンセプト・ミニ・アルバム『僕らのポラリス』(2017年)をリリースしたあと、リリィ、さよなら。の活動はほぼ止まっていました。でもヒロキさんは2018年の元旦にTwitterでこれからも音楽を続けることを宣言し、こうして新作を完成させましたね。この間にはどんな出来事があったのでしょう?

『僕らのポラリス』をリリースしたあと、年末までずっと音楽を続けるべきかどうか考えていて――本当に人生のどん底で(笑)、真剣に実家に帰ろうと思ったんですよ。でも楽しくて楽しくて仕方がなかった青春で作った3部作で音楽活動を終わらせたら、頑張らないまま終わっちゃう。ここで諦めたら死ぬまで後悔する気がしたんです。自分の"続けたい"だけではまだ自信が持てなくて、知り合いのミュージシャンの方やスタジオの方、女優さん......とにかくありとあらゆる人に会って話をしました。励ましてもらって、アドバイスを貰って、"もうちょっとだけ頑張ってみよう!"って。

-それで2018年に入り心機一転フリーランスで再出発なさるんですね。

前までの僕は、自分がちゃんと音楽活動をしていればそれでいいと思っていたから、周りのことまで見えていなかったんです。でも活動がストップしてこんなに簡単に人は離れていくんだなと痛感したし、それでも側に残ってくれる人もいて......関わってくれる人たちのありがたみをすごく感じたんですよね。それもあって"やっぱり頑張ろう!"と思ったし、そういう気持ちになったからこそ作れるアルバムがあるんじゃないかと思ったんです。それで曲を作る前からアルバムのテーマを"再生"にすると決めていて――まぁ今回も重いテーマなんですけど(笑)。

-いやいや、どん底だったヒロキさんが"再生"をテーマにしたのですから、間違いなくポジティヴですよ!

そうです、ポジティヴ(笑)! 僕は自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、人の話を聞いてみると、みんなそれぞれいろんなことを抱えているんですよね。だから"再生"は普遍的なテーマなのかな......とも思っています。優しい気持ちで作りました。J-ROCKシーンもJ-POPシーンも何が流行っているのか常にリサーチしているんですけど、今回のアルバムで流行りのことは全然やっていない(笑)。流行りのサウンドは書こうと思えば書けるけど、今回のアルバムまでは今までのリリィ、さよなら。の延長線上で書きたかったし、それを今回で締めくくりたかったんです。

-けじめであり、スタートであり、ということですね。

フリーになって人生を顧みて、音楽をやっていくことに対してようやく真剣に向き合える時間ができて、大きな覚悟を決めてやっていかないといけないなと思って――今一度"リリィ、さよなら。とはなんなのか?"を提示できる機会はこの"再生"のタイミングしかなかったんですよね。そういう意味でも今回のアルバムは過去作品の回収でもあるし、記念すべきスタートで、"ここから始まる!"というくらいの気持ちです。

-ご自分のことを歌っているのは変わっていないけれど、表現の仕方がだいぶ変わりましたよね。

昔から知ってくれている人には成長を感じられるアルバムになったんじゃないかなと思います(笑)。「やさしい恋の始めかた」と「オーバーラップ」は去年に書いたもので、「ハンドメイド」、「雨の中のラブソング」、「素晴らしい旅」はアルバムの制作を決めてから今の自分の心境と向き合いながら作った、ここ数ヶ月の出来立てほやほやの曲ですね。「ありがとうの唄」だけは高校時代に作った曲なんです。お世話になっていた女の子に"お母さんに感謝の気持ちを歌いたいけど、私には曲を作る力がないから代わりに書いてほしい"と頼まれて。支えてくれる人たち、支えてくれた人たちへの感謝を綴った曲なので、今の自分の心境とぴったり合うなと思ったし、"ここで歌わないでどうする!"って。ようやく自分が曲に追いつきました。