Japanese
cyberMINK
2019年08月号掲載
Interviewer:TAISHI IWAMI
-「D.D.M.P」はどうでしょう。ユーモアの中に、極端な言葉も出てきますが。
「D.D.M.P」はもはや歌詞に意味はなくて、インパクト勝負。でもそれは結果的なことで、実は何テイクも録り直し、スタッフとも話し合って、ようやく今の形になりました。もともとは、自暴自棄なときに全員巻き込んで開き直りたいって、そういう気持ちから始まった曲なんです。でも、それって危険な思想に近いところもあるし、あまりネガティヴに書くと辛気臭いから、"どどんぱ"っていう言葉の楽しさだけ抜き出して、極力アホらしい感じにしてみました。
-「チルチルミチル」も語感勝負ですか?
もともとは語感をどう楽しむかがテーマで、歌詞は男女のいざこざ、はっきり言うとDVについて思うことを、そっくりそのまま歌詞にしてたんですけど、あまりうまくいきませんでした。トラックも納得いかなかったから、いろいろと試行錯誤して今の形に。ブレイクビーツを効かせたドラムンベースっぽい感じで、ミックスの段階で小さくしたから目立たないんですけど、アーメン・ブレイクもバキボコに鳴ってます。サンプリングを多用して、おもちゃがとっ散らかってるみたいなイメージですね。電子音楽が好きなcyberMINKが前面に出た、すごくかわいい曲になりました。
-「Happy Overload」と「D.D.M.P」のトラックについてもいろいろ訊きたいです。まずは「Happy Overload」から。独特の温度感を持ったサイケデリックな曲ですが。
最初はこんなにインドとか東洋っぽい感じではなかったんですけど、もうちょっと幅を広げたトランス感があったら面白いかもって、エンジニアさんと話をしてて、余計なくらいにパーカッションを加えて、ゴア・トランスとかそっちの色も強めに出してみました。
-2番の裏で鳴っている低音も印象的でした。ひと言で言うと、酔う。
低音の原体験はノイズですね。Merzbowのライヴに行ったときに、すごく中低音が響いて、身体から何かが上がってくる感じがするんですけど、上がり切らずに止まるんです。身体の水が揺れてんのかみたいな。箱で聴く気持ち悪さが気持ちいい低音。そういうふうになればいいなって。実際どうでした?
-まさにおっしゃった通りでした。そういったカルトな魅力を持ちながら、全体の印象としてはあくまでポップスなんですよね。
そこのイメージはK-POPですね。K-POPの女の子たちがこの曲で歌って踊ってるところを想像しました。
-日本にも女性のパフォーマンス・グループは多くいるじゃないですか。韓国とはどこが違うのでしょう。
例えば日本のエンターテイメントとかって、"人間がやってる"魅力だと思うんです。それに対して、K-POPは作られたイメージが圧倒的に強い。パッケージ感、"人工"って感じしません? 最初の街並みの話じゃないですけど、ディスってるのではなくて、そこが良さだと思うんです。私の中では、ちょっと前には流行った、"アイドルマスター"とか"ラブライブ!"とか、ああいう二次元に覚える感覚に近い。実在するのかわからない人たちっていう認識ですね。そこに寄せていった、バキ、バキ、バキ、みたいな音。あとは1番と2番の間奏がないとか、最後に別の展開があるとか、構成面も違いますね。
-「D.D.M.P」はどうですか? ドロップでの、シンプルすぎる"どどんぱ"の言葉のハメ方が、印象的でした。
最初はもっとシンプルで、ほんとにキックの上に"どどんぱ"って言葉が乗ってるだけ。ミニマル・テクノみたいな感じでした。でもやっぱりもうちょっと派手にしようと思って。
-寸劇が入ったのはなぜですか?
なんでこうしたんだろうな......。そうだ。ミニマルなダンス・ミュージックっぽいトラックに、語感だけで突き進む言葉を乗せると普通にかっこいいんですけど、それはみんなやってるし、かと言って、J-POP的なメロディで繋ぐみたいなことは思いつかず、無理矢理展開を考えた結果、寸劇を入れることになりました(笑)。
-で、もはややけくそ感が出てくる(笑)。
何回も作り直して録りまくってたら、わけがわからなくなってきたんだと思います(笑)。
-まだ2枚のシングルしか出してませんけど、"cyberMINKらしさ"を示すには十分なほど、どの曲も個性が際立っています。ご自身ではその"らしさ"をどう考えていますか?
やっぱり電子音楽、ダンス・ミュージックであることに集約されると思ってて、その土台の上でアホらしいことがいっぱいできたらいいなって。自分で言うのもなんですけど、打ち込みの能力は高いほうかと。そこにあえて「D.D.M.P」みたいなアホらしい曲を作る。あえてですよ(笑)。それが自分の強み。で、「チルチルミチル」みたいな、メロディのちゃんとある曲もないとトータルの作品としては良くないと思ってて、そういうバランス感覚で攻めていけたらいいなって。
-あくまでポップに消化するのはなぜでしょう。
いろんな電子音楽のジャンルを聴きやすく、ひとつにまとめたいんです。電子音楽って"オタのもの"っていうイメージが強いじゃないですか。
-あとはクラブに行く層など、"電子音楽"と認識してそれに触れている人は局地的なのかもしれません。
中田ヤスタカの曲って誰が聴いてもカッコいい。Perfumeとかすごくスタイリッシュだし。でも、そこから掘り下げるとオタクなイメージになっちゃうことに抵抗があるんです。
-なるほど。ヴィジュアル面でもそのことは意識されていますか?
cyberMINKとしてのヴィジュアルは完全にお任せしてます。自分がTwitterとかにアップするときは、小綺麗にすることですかね。私の曲を聴いて多くの人がイメージするヴィジュアルって、髪がピンクで、ちょっとコスプレチックで、みたいな。そこには行きたくないし、なんか普通っぽいけどカルチャー好きの文脈にある、みたいな感じも正直あまり好きじゃいんです。もっと普通というか、音楽をさほど聴かない人でも抵抗なく入ってこられるようなイメージは持っておきたいですね。下ネタとか極端なことも結構言いますけど(笑)。
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