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INTERVIEW

Japanese

sympathy

2018年12月号掲載

sympathy

Member:柴田 ゆう(Vo/Gt) 田口 かやな(Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

ガールズ・バンドの戦国時代、どういうふうに突き抜けるかを考える


-それも今の年齢になったからこそわかる感覚で、書ける歌詞でもありますね。

田口:そうだと思いますね。まだ今の自分の人生経験ではまったく理解もしきれてないだろうし、まだケツの青いガキだと思うんですけど──

柴田:はははは(笑)。急に?

田口:そういう、大人になりきれない、わからないっていう部分を、30歳でも40歳でもずっと持っている人も絶対いるだろうし。

柴田:こじらせてるじゃないけどね。

田口:そうそう。それで"コンプレックス"って付けたいなと思って。

-愛情っていうものに関しては、年齢を重ねても答えは出にくいところかもしれませんね。

柴田:そうですね、正しい定義はないし。

-年齢によっても変化があると思うんですよね。だんだんと、10代のときのひたすら愛されたいっていうのともまた違う熱量にもなってきますからね。

柴田:ほんと難しい。数学とかみたいに、方程式があって解はこれですっていうのがあればいいんですけど、ないのが愛だと思うので。そこがいいところであり、悩ましいところですよね。だからみんな迷子になるし。そういうところに寄り添える感じになったんじゃないかなって、思います。

-はい、ポップさの中にいい哀愁感っていうのが滲んでいて。甘いところとビターなところもちゃんとあって、それがsympathyの音楽が惹きつけるところでもあると思います。

田口:それはすごく嬉しいです。今回のジャケットも、ドーナツに見立てていますけど、これ実は灰皿で。

-あぁ、歌詞にタバコがよく出てきますね。

柴田:苦い、大人のイメージがタバコっていう。

田口:そう。でもこのジャケットがそのまま灰皿だと生々しいし、私たちのポップな感じには合わないなって思ったんです。今おっしゃってもらったように、甘いところとビターなところがこのアルバムで、それがsympathyのいいところでもあるのかなって。

柴田:甘くて苦いっていいですよね。タバコとかに執着しちゃうのとか、そういうのって、自分の変わらないところだなと思います。大人と言えばタバコで、叶わない恋と言ってもタバコかな、みたいな気持ちになっちゃうっていうか。

-そこには、タバコの煙の掴めない感覚みたいなものもあるんですかね。

柴田:そうですね。煙っていう言葉もそうで。煙って、視野を狭めてくるのに、掴むことはできないじゃないですか。追い払っても向かってくるし、今回のワンマンのツアー名も"君に煙を吹きかけたいツアー"(2018年12月に開催)っていうタイトルなんです。煙を吹きかけるっていう行為自体にも意味があって。想いを託して......昔のことわざみたいなのであるんだっけ?

田口:"煙草は恋の媒"みたいな感じの。

柴田:花魁が、煙を男の人に吹きかけるっていう行為があるんですけど。それは好きですよっていうことなんです。その想いを口には出さずに、煙に託して吹きかけて。男の人も、その煙を吸ったら、相思相愛っていう暗黙のことがあったらしくて。それってほんとでも嘘でもすごくいいなっていうか。女性の心情を描いているなって思うんです。女の人って甘いことが好きだけど、実際は斜に構えたりしてしまったりもするし。人って、好きっていう言葉よりも、嫌いっていう言葉を信じやすいし、自分を否定する言葉の方を信じやすくて、疑心暗鬼になったりするんですけど。そこも、煙に巻けたらいいなというか。いろんな気持ちがあっても、ひとつの風情のある行為で煙に巻けて、少しでもラクになれたらとか、少しニュアンスを大事にするっていうことをできたら、1が1じゃないし、これだけが正解じゃないよっていうこともふわっと曲に包めたらなという気持ちだったんです。

-すごく粋な感じですね。今回は、歌にしてもギター・サウンドもひとつとってもこだわりが見えるし、自分たちの強みっていうのがわかったのかなっていうのを感じた作品です。自分たちでも、掴めたものってありますか。

柴田:今って、自らキャッチ・フレーズがある人たちって強いなと思っていて。私たちは、自分たちの音楽を"揺れるロック"って言っているんですけど、もっとキャッチーなものとか、ギャップのあるふたつの言葉を繋げているものがあると気になっちゃったりするし。私たちは素直に、自分たちの音楽を"揺れるロック"って名付けているだけで、でもそういうバンドっていっぱいいるし、特にここ最近はガールズ・バンドの戦国時代とも言われるなかで、どういうふうに突き抜けるかを考えたりするんですよ。自分たちの良さって、なんだろうって。私は、等身大なところとか、捻くれているところとか、いろんな面が見えるのがいいところだと思うんですけど。それだけでは全然弱いなと思うんです。いろんな媒体、雑誌や映像、SNSとかがあるなかで、1個飛び抜けるものがないとダメだなって。ずっとずっとそれに対してはもがき続けているなっていうのはあります。

田口:逆に言えば、それも自分たちらしさではあるのかなって思うんですけどね。不器用なんですよ、4人全員が(笑)。生きづらいというか。柴田が言ったような、等身大のところもあるし。自分たちは、めちゃくちゃカリスマ性のあるガールズ・バンドみたいな感じではないなと感じているので。でもそこは逆に、強みでもあるのかなって思っていて。リスナーの人にも寄り添える音楽でいたいし。その人間味は大事にしたい。

柴田:こういう音楽って、伝えて、理解してもらえてから、味が出るというか。まさにスルメだなって思っているんですけど。それが伝わりきるまで、私たちはちゃんとライヴをしたいなと。ライヴでひとりひとりに、私たちはこういう音楽をやってるよってわかってもらえるようなことを、これからはしていきたいなって考えています。ライヴに関しては、1対1の関係でありたいなって思うようになりました。