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INTERVIEW

Japanese

鳴ル銅鑼

2017年09月号掲載

鳴ル銅鑼

Member:三輪 和也(唄/六弦) グローバル徹(四弦)

Interviewer:沖 さやこ

-三輪さんのぴりぴり具合、なかなかすごそうです。

徹:相当ですよ。たぶんこの3人でないと一緒におれんやろうな......と思うくらい(笑)。

三輪:曲を作る段階でまず、バンドで音を出して曲の全体像を掴まないとな、と思うんですよ。バンドでいっせーので音を出すことで生まれるケミストリー的なものは絶対にあるし、みんなに実際に何回も何回も弾いてもらいながら曲の全体像を掴んでいく。曲に昇華するまでにみんなに付き合ってもらうという言い方が近いかな。3人が鳴らした音をスタジオから持ち帰って、僕がパソコンで"ビートをこういうふうにするとどうなるやろう?"みたいに何パターンも作ったりするんですよ。でもパソコンではかっこいいものが、生だとかっこよくないというのはよくあることで、生音でかっこいいものを探すことにはすごく時間をかけるし、これが僕らがいいものを作るうえで最短の方法だと思っています。メロディと歌と詞ができれば、あとはみんながどういうふうにしたいかを反映させるのも大事だなと思えるようになって、みんなの話を聞きだす。

徹:曲のヴィジョンが見えてくると和也も安心してくるので、ちょっとすっきりするんですけど、そのあとは俺ら3人が悩む番ですね。おまけに和也の全体像を掴むための作業をしているときがレコーディング1ヶ月前やったりするので、自然と俺らのリミットが......(笑)。

三輪:あははは!

徹:でも最初の段階から関わっているからこそ、僕らも見えてくるところはあって。

三輪:同時進行で進めているぶん時間はかけられたので、"何パターンかフレーズ考えておいてね"と。

徹:そういうものを平気で和也は"ダサっ"とか言いますからね(笑)。それで遼平(岩ってぃ/太鼓)が"しんちゃん(カバ/六弦/歌)のさっきの良かったと思うけど?"とフォローしたり......。

三輪:だってかっこよくないんやもん(笑)! 本当にいいものをその人から引き出そうとするなら、その人の引き出しが空っぽになったそのあとに生まれてくるものが絶対に一番いいんですよ。限界まで追い詰めないと。

-(笑)ハングリーすぎる!

三輪:これは絶対そうなんですよ。僕もみんなに提出している段階のものは、自分の中で30~40回直しているものなんですね。

徹:1週間という時間をつぎ込んで作ったものを和也からボツと言われて、マネージャーに"俺のアイデンティティって?"という相談をしたくらい追い込まれてました(笑)。しんちゃんの色、遼平の色、自分のちょっと動きたいという癖のある色......そういうものはあるべきで、"4人が納得できる接点を見つけるのが一番で、徹が身を引けば解決というわけではない"と言われて。でも俺はやっぱり和也の音楽だと思っているから、俺の役割はそれに色づけをすること。

-徹さんはオーケストラをやってきていた人だから、なおさらそういう考え方なんでしょうね。

三輪:こういうことを言ってはなんだけど、いま徹君が言ったことが正解やと思うんです。原曲は作曲者の濃度が100パーセントで、それに色をつけるとき、作曲者がイエスと言えないことは問題なわけですよ。作曲者がノーと言ったものは、100パーセントをマイナスにすることにしかなり得ない。そのマイナスが面白くなることもあるので、時と場合によるとは思うんですけど。

徹:"本当に通したいことなら戦えよ"とマネージャーに言われて、たしかにそうだなと。でも『汎神論』はプレイヤーとしても納得しているし、和也が納得して"いいアルバムだ"と言ってくれてることがゴールだと思うので、メンバーとしてやれることはやれたのかなと吹っ切れています。

-もちろん隅々まで恵まれた環境で名曲を作る人もいるんですけど、表現者はどこか不幸せな境遇にいる方が胸に迫る、沁みるものを生むなと思うところはあります。

三輪:僕、それと同じようなことを漫画家の友達から言われましたね。"三輪君はずっと孤独でいるべき"って(笑)。もちろんものすごく幸せで甘い環境でないと作れないもの、歌えないものはあると思うんですけど、もしそのときに生まれるものよりもいまみたいな環境でないと生まれないものの方がいいと思えば、そのときはその幸せを捨てればいいなと思う。

-......(笑)。すべては音楽のために、ということですね。

三輪:そうです、そうです。こういう発想をしている時点で、幸せを手に入れたとしても孤独なんでしょうけどね(笑)。ほんとろくな人間じゃないと思います。交友関係も狭すぎるし、音楽のためなら平気で人のことを傷つけるし。

-かなり無礼なことを言いますが、徹さんとカバさんと岩ってぃさん、よく脱退しないな......と思ってました。

徹:本当そうですよ! 俺もそう思います。自分以外のふたりにも"よくやってるなぁ......"ってすごく思うし。

三輪:僕でも本当にそれすごく思いますね。"よくやるなぁ、なんでこの3人は僕と一緒にバンドをやっているんやろう?......相当僕の曲かっこいいんやろな!"って(笑)。

徹:もう意地よ(笑)。3~4周してわけわからんことになっとる! でもバンドをやるならそれくらいがちょうどいいのかもしれんし。

三輪:徹君から前に"俺らは(鳴ル銅鑼を)やりたくてやってることを忘れんといて。和也から頼まれてやったことはいままで一度もないから"と言われたことがあって。それはありがとうございます、と思いましたね。

徹:たぶんわけわからんことになって1周回ったくらいでキレたときに言った言葉ですね(笑)。

三輪:あははは! 僕はめちゃくちゃ夢見がちで理想を追う人、カバ君なんかはめちゃくちゃ現実的な考えを持っている人なんですよ。この4人は全然違う方向に走っているけど、"かっこいい音楽を作ろう、いいライヴをしよう"という漠然とした最終的なゴールは全員同じものを見ている。僕は音楽的にストイックすぎるけど、メンバーの人間性を否定したりはしないから。

徹:もともと僕はバンドマンではないし、和也とバンドをやるのをやめたらもう楽器を持たないと思う。このバンドでの時間は濃すぎて、あとのふたりもほかのバンドが組めないくらい拍子抜けしちゃうと思います。

三輪:メンバーからすると"なんでそんなしんどい道を行くんやろう?"と思うかもしれないけど、その方が僕は生きている心地がする。そういうのが楽しいんですよね。僕はそういう自分に追い込まれて落ち込んで、メンバー含め周りの人はそういう俺を心配したり俺のことを考えて追い込まれたりしてる......かな(笑)。人に恵まれていると思います。