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INTERVIEW

Japanese

空きっ腹に酒

2016年10月号掲載

空きっ腹に酒

Member:田中 幸輝(Vo) 西田 竜大(Gt) いのまた(Dr)

Interviewer:松井 恵梨菜

挑発的なサウンド、脳を刺激するグルーヴ、心躍らせるビート――空きっ腹に酒の楽曲は、聴き手をハイにさせる要素をこれでもかというほど兼ね備えている。それを生で体感できる彼らのライヴに、予定調和はない。いつ勃発するかわからない事件の予感を常に漂わせた、非常に快楽的なエンターテイメントだ。そんな彼らは現在、7月にリリースした5thアルバム『しあわせ』を引っ提げ、"夢でみた幸せ"ツアーを敢行中。ファイナルは10月21日、渋谷TSUTAYA O-nestワンマンだ。そこで今回Skream!では、空きっ腹に酒のライヴの魅力に迫るべく、"ライヴ"をテーマにメンバー3人に話を訊いた。

-7月に5thアルバム『しあわせ』をリリースしてから1ヶ月が経ちましたが(※取材日は8月9日)、今作の手応えはいかがでしょうか?

西田:リリースしてからライヴをやったのが1、2回くらいで、アルバムから演奏した曲がまだ少なくて。なので、自分たちでもライヴでやったらどんな感じになるのか未知数なんですよね。SNSで見た限りでは好評みたいなんですけど。

幸輝:もうちょっと感想を書いてくれたらいいなとも思うんですけど、形容しにくいみたいです。でも、一筋縄じゃいかんようなアルバムにしようと思って作ったから、そういう意味では、明確な感想がないっていうのは正解なのかなと。

西田:1、2回やってみた感触としては、もっといい感じに聴かせられる余地があるなと思ったので、今はツアーに向けて工夫しているところです。でも、"アルバムができてすぐやりました"みたいなタイミングでも楽しい雰囲気だったので、今回のツアーではさらにいい空間が作れるんじゃないでしょうか。

-実際にライヴで演奏してみて、"やっぱりこうした方がいいね"という部分は結構出てくるのでしょうか?

西田:演奏って何が良い悪いって言えないですけど、もっとこういうふうに演奏してみようとか、音作りに関してもっとこだわってみようとか、アルバムを出したあとは毎回そんな感じです。ライヴで演奏していくうちに曲が進化するので、その変化は見ていて楽しいと思います。やっぱりライヴの回数を重ねるとだんだん遊べるようになってくるんですよね。最初のころは、自分たちも演奏が慣れていないぶん、ここどうしようっていうところも出てくるし、聴いてる側も聴き方に余地がないんですよ。"この曲はどうなるの!?"って感じで聴きはるんで。

幸輝:曲によっては、うまくいかなかったからこそ良かったこともあります。空きっ腹に酒のライヴはよくアクシデントが起きるんですけど、何もかも崩壊状態になった瞬間のかっこよさって絶対にあるから。ほんまに毎回その日限定のライヴなんですよね。たぶん、完璧にしちゃうとダメになるバンドなんですよ。お客さんもテンションが上がっちゃって、ワーッてなってるときの空きっ腹に酒は最強やと思うんで、お客さんと一緒にそういう状態になりたいです。

-遊びを入れるタイミングは、その場のノリで決めていくんですか?

幸輝:結構細かく決まってますね。

西田:ライヴでとっさにできることって意外と少なくて。ウチらはいきなり生まれる面白さも多い方だし、それを楽しみにしてくれてる人はいると思うんですけど、まぁ、それは一種のトラブルです(笑)。

-例えば過去にはどんなことが起きましたか?

西田:ギター・ソロのときに、ドラムもベースも止めてギターだけになるシーンがあったんですけど、その瞬間ギターが鳴らなくなったことがありました(笑)。それでこいつ(幸輝)が口でギター・ソロを歌って。トラブルが起きてるのに、メンバーみんなおもろなってもうてふざけ出すんですけど、お客さんも"エライことになってるな"って楽しい空気になってくるし、ギターの音がもとに戻ったら戻ったで、はちゃめちゃで笑える感じになるという。

幸輝:普通に入ったギター・ソロより、なんかかっこよく聴こえるんですよね(笑)。お客さんみんな、"おかえり! わー!"って。"いやいや、もとに戻っただけや! シールド挿して音出るようになっただけやで!"みたいな(笑)。

西田:残念ながら狙ってやれることではないので、今回のツアーでは1回もおもろいトラブルが起きないかもしれないですけど。基本的には、ライヴで感じたことをスタジオに持って帰って考えてます。不思議なのが、普通は"ここをこう弾けば上手くなる"っていうのを発見していくもんやと思うじゃないですか。じゃなくて、ちゃんと弾かなくていいんやっていう部分が発見されていくんですよ。たぶん、仕事と一緒なんじゃないですかね。例えば接客業でも、ガチガチでこなすんじゃなくて、手を抜いてもいいところは遊びを入れていった方が、いい接客になると思うねん。

幸輝:遊びすぎてる焼肉屋とかはムカつくけどな(笑)。やりすぎるとあかんのや。今のちょっとわかりやすい説明やったわ(笑)。

-手を抜いていい部分ではアドリブを入れるんですか?

西田:アドリブを入れることもあるし、動きの部分で遊ぶこともあるし。あとは音を変えてみるとか、遊びにもいろんな種類がありますね。

-空きっ腹に酒のライヴ・スタイルが見えてきたところで、個々のライヴに対する考え方もうかがいたいと思います。ここ数年の日本のロック・シーンは、"踊れる"ということが重要視される風潮にあるじゃないですか。それに対してはどう思われますか?

幸輝:いかに躍らせるかとか、みんなそんなこと考えながら曲作ってんのかな? って思うんですよね。だって、踊るという行為に思考も何もないじゃないですか。"踊れるから楽しい"くらいで。

西田:俺は、最近の"踊れる"と言われている音楽は正直、本当の踊れる音楽ではないと思ってます。だから、そこを難しく考えること自体どうなんかなって。ガチのダンサーが踊ってるようなダンス・ミュージックの人たちはそこまで考えてると思うんですよ。でも、ダンス・ミュージックちゃうねんから。

-そういうスタンスをお持ちの空きっ腹に酒としては、どんなふうに音楽を提示したいと考えていますか?

西田:ほんまに好きに楽しんでもらえたらいいですよね。でも、どうノったらいいかわからないっていうお客さんは絶対にいるから、ひとつ形があるとノりやすいし、形にノれると楽しいやろうなとは思います。逆に、勝手にさせてくれっていう人も俺は好きです。