Japanese
the irony
2016年06月号掲載
Member:船津 陽史(Vo/Gt) 脇屋 周平(Gt) 川崎 嘉久(Ba) 工藤 伊織(Dr)
Interviewer:秦 理絵
-では、『10億ミリのディスタンス』の話を聞ければと思うんですけど、全国流通としては前作の『明るい未来の証明』から1年ぶりのリリースですね。
工藤:この期間はずっとリード曲を決められなかったんですよ。さっき言ったように、"次にthe ironyが進んでいく道はどこなんだろう?"、"どういう音楽をやっていく?"っていう問いかけに対する答えをなかなか出せず、半年近くメンバーと話し合っていて。最終的には「幻影少女」(Track.1)がリード曲になったんですけど、他にいくつも案があったんです。
脇屋:「幻影少女」っていう曲自体も、3年前から作ってはいたんですよね。そのときは全然違うポップ・ロックみたいな感じで。"キーボードを入れたらいい感じじゃない?"とか試行錯誤して、明るい感じにもしてみたり......。
-最終的に「幻影少女」をリード曲にした決め手は何でしたか?
船津:これはアルバムのタイトル"10億ミリのディスタンス"にも繋がってくるんですけど、福岡と東京を繋ぐものが、今回のアルバムの芯にはあるんですね。それに対して、「幻影少女」がすごくハマッたんですよ。
工藤:「幻影少女」には"聞こえない「頑張れ」が/背中を押すのです"っていう、遠くからエールを送るような歌詞があって。で、"10億ミリ"っていうのは1,000キロ。それが、東京と九州の距離(ディスタンス)なんですね。1,000キロって言うと、すごく遠いと思うけど、ミリメートルっていう単位だと近いような気がするじゃないですか。だから、"10億ミリのディスタンス"は、"遠いけど近くにいるんだよ"、という意味として受け取ってもらいたいです。
船津:僕ら九州から出てきた4人が東京に集まって音楽をやれてることに、ちょっと奇跡的なものを感じるんですよ。だから、"九州"っていう土地を背負えるバンドになりたいなと思ったんです。アルバム・タイトルはそこからきています。
-リード曲以外だと、バラード曲「白い花」(Track.4)は、船津君の歌の魅力がすごく出てる気がする。
脇屋:前作からバラードも結構書いてきてるので、"the ironyと言えば、バラード"っていうイメージもあると思うんですけど。今回は今までよりも壮大にしようと思って、僕の昔のバンド・メンバーにストリングスを入れてもらったんです。
工藤:儚さもあり、力強さもあるような曲になったよね。
船津:僕、この曲は脇屋のオケを聴いて泣いちゃったんですよ。この世界観に準じた歌詞をちゃんと書かないとなと思って。大切な人と別れたあとも、苦しいことからも逃げずに、"君が愛したこの世界で生きていくよ"っていう歌にしたんです。
-このひとつ前のTrack.3「Daybreaker」もそうだけど、the ironyの曲には、自分と、大切な人と、それを取り巻く世界がすごく大事に描かれてますよね。
船津:大事にしたいこと、大切に思えるものって、そんなに多くないんですよね。最後の「蒲公英」(Track.5)では、"探していた答えはどうやら君の笑顔だ"って歌ってるんですけど、大切なものが側にあっても気づかないことってあると思うんです。でも、それに気づけたからこそ、人はもう一歩踏み込めるというか。「蒲公英」では、もしつらいことがあったら、それがメンバーでも大切な人でも、僕はちゃんと守りたいから、"僕に言いなよ"、"怖がらなくていいんだよ"という思いを書いたんです。最後にこの曲を入れられてよかったなと思います。やっぱり僕らは背中を押したいんですよね。
-それは、自分もまた音楽に背中を押してもらったから?
船津:うん。自分から音楽を取ったら何も残らないような気がするんです。それぐらい音楽は自分の中に染み込んでるもの――"音楽=自分"って言っても過言じゃないぐらいの存在なので。だけど、そういう存在を見つけられずにいる人もたくさんいると思うんです。そういう人の背中を押せるのが、僕たちみたいなバンドなのかなと思うんです。
-今回、歌うべきことを見つけられたから、この先はもう迷わないで進めそうですか?
船津:そうですね。僕らが歌いたいこと、やりたいことっていうのは確立できたと思ってます。僕、今回のアルバムをよく聴くんですよ。そうすると、もちろん誰かの背中を押したいっていうのはあったんですけど、この作品に自分自身が背中を押されるんです。だから、僕らはまたもう一歩上の段階にいけるって信じられるし、もうワン・ステージ上にいくスタートの1枚になったのかなと思います。いろいろ迷ったし、遠回りもしてきたんですけど、今は九州から出てきて良かったなと思ってます。
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