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INTERVIEW

Japanese

金子ノブアキ

2016年05月号掲載

金子ノブアキ

Interviewer:吉羽 さおり

-そういう作業の中で、今思うような人生観をここに書ききれた感じはありますか。

この歌詞に留まらず、今回は3枚目というのもあって、ある種そこにすべてを詰め込んで置いてきたという感じで、つきものがとれたようにすごくスッキリしてますね。4thアルバムがもう期待できるっていう。

-ということは、もしかして?

もう次の作品を作り始めているんですけど(笑)。"もう見えた!"って、PABLOとも話をしていて。今の段階では、ここから全然変わっちゃったりするんだけどね(笑)。できるだけ音数を少なくとか、シンプルなテーマをもとに作っていこうとか。ギターも2チャンネルまで、みたいに制限してやってみたいんだよね。

-それほど、今回のアルバムでうまく出しきった感じがあるわけですね。

そうしないと先に進めない気がしたんです。内容的にも密度を濃くするタイミングが自然だったし、そこに背を向けてはいけないなと思っていたので、正面から。非常に納得のいく出来になりました。

-先ほど、"客観的に見てしまうクセがある"という話がありましたが、そういうふうにどっぷりと自分の内に入っていく時間は、集中力もいるだろうし、客観視できない部分も出てくるのではと思いますが、いかがですか。

ああ、これが都合のいいことに、例えば俳優の仕事で撮影に行くじゃないですか。そうやって無理やり音楽から引き離される時間があるんですよ。俺は今日作業してるのに、次の日朝早くてきついなと思う日もあるのね。夜も遅いしなぁと思うんだけど(笑)。撮影では、何時間か待つこともあって、"これ今、1曲できるよな"って思いながら待っているんだけど、そうするときにふと、"あ!"と思うことが多いんですよね。音楽浸け、制作浸けになってると、どうしてもせっかちになっちゃうし、なかなかそうやって考える時間を設けないから。僕の性分にはイライラしつつも、このやり方が合っているんだと思うんですよね。音楽と離れることで、耳も休まるし、聞こえてくるものも変わってくるし、その手があったじゃないかって、発想が引き算に向かっていく時間になっているんですよね。だから、今のスタンスで作っていくのがいいんだなと思ってやれていますね。

-スイッチがうまく働くんですね。

切り替えていますね。昔は切り替えるのに、"よいしょ"ってやらないと切り替わらないし、精神的にもパニックになるから"あれあれ?"ってなったりしたんですけど。その迷いとか不安にも、心も身体も慣れてきて、地続きでも全然いいよという感じになっているんですよ。自宅に作業場を設けたのも、家でまでそれやっちゃったらヤバいよっていうのがなくなったからなんですよね。"いま撮影の現場なので帰ったらやりまーす"とか言って帰ってからエンジニアさんとSkype繋いで作業したりするのも楽しくやれてるし。そういう意味では、自分なりにいい進化をしてますね――人には全然見えないところだけど(笑)。

-では、根詰めて自分自身に絡まっちゃうことはないんですね。

あまりないですね。自転車操業みたいな感じで、いろんな活動が補完し合っていて(笑)。だから、まったく違う人格のところがあるんだなと思って、良い分裂症みたいな感じ、なのかな。

-きっと、お芝居の現場で他人になるような感覚もあるから、自分のことがよく見えることもあるという?

俯瞰して見たりね。もともとの性格でも"俺が俺が"って、あまりならないしね。今、ライヴもやって、思い切り表現する場もあるしね。そうなったときに、例えば"バンド活動しませんか?"と言われたときにも、"OK、OK"ってすぐにできるんですよね。みんながいいようにしたいし、僕がみんなに依存したいからさっていう感覚でできるんです。困っていそうだったら、助太刀するけどっていう立ち位置でね。

-その良い依存ができる場所があって、さらにこういったソロの空間もあるからこそ、ひとりの人間としてのバランスがとれていると。

バンドはやっぱり、いい意味で民主主義であるべきだし、引っ張り合いであるべきだし、そのちょうどいいところが必要で。そうするとピンポン玉が浮くみたいにちょっと浮力がついて、バーンと跳ねるんだけど。誰かひとりがコントロール・フリークっぽくなっちゃったり、"俺は一生懸命やってるのに!"ってなると、絶対に歪むんですよ。それは周りの人間にも伝染していく、という反省点は僕も今までにいくつもあるから。それもあって、このソロ・プロジェクトを育てているというのもあるんです。こっちを健全に進めて育てていけば、絶対にいい跳ね返りがあるからやらせてくれということで、やってるんですけどね。