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INTERVIEW

Japanese

金子ノブアキ

2016年05月号掲載

金子ノブアキ

Interviewer:吉羽 さおり

-ソロの作品となると、またそのアグレッシヴさとは違った、"静"の部分がより出ますね。

求められるという意味では、レコーディングに呼んでもらったり、サポートに呼んでもらったりすると、"いつもみたいにお願いします"って言われることは多いですね。"うん、たぶんアレのことだろう"と思いながらやるんですけど(笑)。でも、自分自身のミュージシャンとしてのルーツを辿っていくと、全然ロックじゃないところがあるんです。例えばモータウンや歌モノ、ブルースとか、僕は音楽一家に生まれたので、そっちなんですよね。ニューオリンズのセカンド・ラインとか、それと90年代のオルタナやグランジのシーンがズバッと一致しちゃった縁もあって、バンドがああいう形になったところもあったんですけど。いわゆる、ロック・ドラマーという自覚がまったくないんです。さらにアンビエントやテクノも好きだったし、クラシックも好きだったし。そういう、バンドに乗り切らない部分を、ずっと表現したいなと思っていたんですね。この手法で作り出したそもそもの始まりは、劇伴を作ったときだったんです。そのときに、"ああ、やっぱりいいな"と思って。ずっと"別に俺がやったってしょうがないでしょ?"みたいな気持ちがあったんだけど"やっぱりいいかもね"って思って。それで当時のディレクターとも"どういう形でも何かやったらいいんじゃない?"って話をしていたんです。気がつけば、ここまできちゃいましたけどね。

-そういう劇伴をつけるような始まりだったから、できあがるサウンドがどこか映像感のあるものが強いんでしょうか。

そうですね。劇伴は好きですし、サントラも好んで聴くので。バンドで表現してきた10代のころのカルチャーとは違うアプローチ、という意味では、こっちの方がリアルタイムのものですよね。そのリアルタイムなものを共有できるキャスティングってことで、PABLOや草間さんを始め、みんなで一緒にやっているチームではありますね。

-ルーツとして、モータウンとテクノ、アンビエントみたいなものが挙がっていましたが、今回はそれぞれがいい絡みをしているアルバムにもなっていて、深みが増していますね。

今回は特にいい振り幅ですね。一発録りや、小西さんが"ヴィンテージのコンソールで録りたい"と言ったのは、それを感じてくれたからなんですよね。"こういう音像でいきたいんだけど大丈夫かな"って言ったとき、"時代のトレンドには逆行しているけど、絶対正しいと思うよ"って。そこは、動物的で、凶暴な部分が出る録り方をしましょうとなって。

-今回のアルバム・タイトルの"Fauve"ってまさにフランス語でそういった"野獣"や"野生"といった意味合いですもんね(笑)。

そうそう。僕、美術史はそんなに詳しくないんだけど、美術館が好きで。静かなところが好きなんです。よく足を運ぶんですけど、キュビスムとかフォーヴィスムとか、未来派とか、そういう美術運動の一派があって。フォーヴィスムを和訳すると、"野獣派"って書いてあって(笑)。それがむちゃくちゃかっこいいなとずっと思っていたんですよ。それが頭にあって、タイトルを考えていたときに、"Fauvisme"と"isme"をつけてしまうとちょっとキザだねって話になって。"Fauve"だとミニマルだし、いいんじゃないって。いろんな案があったんですけど、意味的にも今作には合っているなということで、ここに落ち着いたんです。

-内容とシンクロしましたね。音の面では、凶暴性やエモーショナルな部分も出ている作品ですが、歌の内容的なところでも、グッと自分にフォーカスしている感覚はあるんですか?

哲学的、思想的な部分となると、今までのキャリアと年齢や人生観というのがリアルタイムな表現として出ていると思いますね。JESSE(RIZE/Vo/Gt)はThe BONEZみたいなバンドもやっていて。音が全然違うんだけど、哲学としては似てますよね。AA=で(上田)剛士さんと一緒にやったり、JESSEたちと一緒にやるRIZEは、僕が一瞬で14歳くらいに立ち返る現場なんです。そこには、いい意味で思い切り依存できないといけないと思っているんです。だから、こうしてそこを離れたときに、思い切りアンチテーゼを開放するというか。それで、健全に音楽ができているのかなと思うんですよね。そういう人生観みたいなものを、The BONEZのみんなもあの現場でやっていると思うし。彼らに背中を押されている部分は、もちろんあるんですよね。

-今を表現するうえで、言葉選びの部分では慎重になりますか? 今回は特に、"歌"への比重も上がっていますが。

1番時間をかけるかな。今回、歌詞の分量がすごく多いですしね。前作では、ちょっと文学的に捉えられたり、パッと絵で捉えられてもいいように、短歌や俳句くらいの分量で1曲作るというのをやっていたんですけど。実際にライヴの感想を聞いたときに、インストっぽい印象になっちゃっているんだなというリアクションがあったので。僕としては、もともとそういう意識ではなくて。じゃあ次は、10分くらいのアンビエントな曲も入れるけど、歌があるものに関しては、歌が中心にくるように意識的に作ったので。文章の量も必然的に増えているんです。"歌詞"って感じですよね。次はどうなるかわからないですけど、今回はこんな感じにやりました。