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INTERVIEW

Japanese

永原真夏

2016年03月号掲載

永原真夏

インタビュアー:山元 翔一

-これを具体的な音楽の話に置き換えてお訊きしたいのですが、今の日本のロック・シーンってノリが画一化していて、楽しみ方が限定的になっているんじゃないかと。そこに対する疑問符は永原さんの中にあるんですか?

うーん、あるにはあるんですけど、それもすぐ変わっていくとも思うので。もうすぐ状況が変わるんじゃないですかね? 最近はそれが楽しみです。1~2年前はノれなかったらお客さん入んないとか、イベントに呼ばれないっていう風潮もあったんですけど。いわゆるJ-ROCKって言われる世界ではそういうものがあったけど、もうすぐ変わっていくんだろうなって。1人の音楽ファンとして、状況が変わっていくのは面白くもあるし、楽しみな部分でもある。ミュージシャンとしては、そこに対してどんな音楽をやっていこうかなって考えるし――わりと変化が好きなんでしょうね、なんか面白いなーと思って。楽しみです。

-例えばどういったところに、永原さんはその変化の兆しを感じます?

やっぱりみんな飽きるでしょ(笑)! それですね、究極。あと、音楽的な兆しとは違うところで言うと、音楽が商業的になっていくとメディアと深く関わっていくじゃないですか? 雑誌が売れないとかテレビの視聴率が取れないってなると、そこに対する間口が逆に狭くなっていくから、メディアはそこに出る人を推し量る指標になっていくのかなと思いますね。単に音楽を聴かせることはYouTubeやSoundCloudを使えばすぐできるし、CD作ることもミュージック・ビデオ作ることも仲間たちを集めたらすぐ作れる。でも雑誌やテレビに出たり、ラジオでかかったりっていうことは、むしろメディア全体の数が減って間口が狭くなっているからこそ、ひとつの指標になっていてすごく面白いなと思いますね。

-シーン的にも時代的もそういう変化の兆しが感じられる中、永原さんはソロ・アーティストとしての第一歩となるミニ・アルバム『バイオロジー』を完成させました。SEBASTIAN Xの活動休止に際したインタビューで、ご自身の音楽を"エモーションの表現"とおっしゃっていましたよね。今作は、違うところに目を向けた表現、もっと大きなテーマ性を持った作品に仕上がったと思うのですが、いかがでしょうか。

どうだろうなー。結局、エモーションのところも大きいんですけど(笑)。(今作は)あんまり最初からテーマも決めずに、いわゆる"降ってくる曲"しか入れないっていう――自分で頑張って作ったり、音楽を聴いて吸収しようっていうやり方ではなくて、降ってきてものをセッションして作り上げた曲しか入っていない、そういう必然を感じたかったんですよ。

-何かしらの意識を働かせてスタートした作品ではないにも関わらず、今作のタイトルには"バイオロジー"っていうすごく象徴的な言葉を用いていますよね。

"バイオロジー=生物学"って自分たちの話でもあるし、近所の動物でもなんでも、わりと身近な話だと思うんです。"学"ってつくと、統計をとって優位な方を選んでいく、引用して証明していくということだと思うんですけど。わたしは統計的に排除されてしまうものに対して語りかけたいというか、その存在を証明していきたいという気持ちがすごく強くある人間で。統計的に優位なものじゃなくて、ほんとに個人的なものとか小さなことに"バイオロジー"という冠をつけてあげたいなと思ってこのタイトルにしました。

-今作の楽曲は、明確に言語化されない思いをすくい上げるような音楽というよりも、 "生命"や"生きるということ"――いわゆる"こころの声"に対する"いのちの声"みたいなものをすくい上げた音楽なのかなと感じました。

もともと生命や生きることみたいなところに興味や思い入れはあって。いつも何かしら興味があることがあるんですけど、例えばSEBASTIAN Xの『ワンダフル・ワールド』(2009年リリースの1stミニ・アルバム)は"世界って広いなぁ"って思ったことで、あとは、"ファンタジー"(2010年リリースの2ndミニ・アルバム『僕らのファンタジー』)とか"POWER"、"NOISE"(2013年リリースの2nd フル・アルバム『POWER OF NOISE』)とか、毎回毎回そういう自分を突き動かす単語があるんですよ。それで自分のアンテナに引っかかって、強く何かを感じた言葉が今回は"バイオロジー"だったんです。自分がずーっとやってきたことや、これから考えてみたいことにすごく近かったんですよね、この単語が。

-"バイオロジー"が永原さんのアンテナに引っかかったというのは、具体的にはどういったことなのでしょうか?

「バイオロジー」(Track.2)という曲ができたときに、"すごくわたしが言いたいことに近いものを表現できているような気がする"って思って。そこから、ばーって降ってくる曲たちを作っていっても、自分が言いたかったことはこの曲に近いんだなって感じましたね。

-なるほど。ソロ活動の第一声となったTrack.5「青い空」をまず制作されたかと思うんですけど、その次にできた曲はどれになるんでしょうか?

どれだろう(笑)。......「平和」かな? この曲はライヴでもずっとやってますし。「平和」、「唄おうカロリーメイツ」(Track.4)、「バイオロジー」は同じくらいにできましたね。

-では、「リトルタイガー」はある程度方向性が見えてからできた曲なんですか?

これだけ歩里(SUPER GOOD BANDのキーボード)の作曲なんですけど、持ってきたデモを聴いてすごく感動したので、何か物語をつけて作りたいなと思って。曲を聴いたときに浮かんだ物語をばーっと書いて完成させました。もしかしたら彼女はわたしのモードを汲み取っていたのかもしないですね。

-この曲なんですが、冒頭の"うつくしいよこがおの理由に/かなしみがあるなら"っていう一節に永原さんの姿が重なってしまってハッとしたんですよね(笑)。

ええー(笑)!

-永原さんの音楽はただ単にハッピーなだけではないじゃないですか。そういうところに結びついたというか。

この曲はイメージの中にあった物語を形にしていったので......なんかこう、きれいだなぁっていうものを――例えば、男の人を待って悲しんでいる女の人がすごく美しく描かれている絵とか、すごくきれいものと悲しいことって表裏一体だなと思うんです。なんかこう、ちょっと残酷な感じと美しさは紙一重なところがあるなと。それに、すごくきれいなもののはずなのに全然そう思えないものはあるし、その逆もある。それって個の経験に基づいていて、そういうのって必ず反映されると思うんですよ、顔じゃなくても動作とか話し方とかに。