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INTERVIEW

Overseas

MYSTERY JETS

2016年02月号掲載

MYSTERY JETS

Member:Kapil Trivedi(Dr) William Rees(Gt/Key) Blaine Harrison(Vo) Jack Flanagan(Ba)

UKロック・シーンの異端児、MYSTERY JETSが3年振り5枚目となる『Curve Of The Earth』をリリースした。キャリア史上最高傑作の呼び声高い今作は、古巣"Rough Trade"から離れ、東ロンドンにあるボタン工場跡地に自らのスタジオを建設し制作。さらに、新メンバーJack Flanagan(Ba)が今作より加入するなど、大きな変化を経験し、そんな環境的な変化を経て、音楽的にも大きな変革を見せる。バンドが、デビューからの10年間の道のりで経験してきたリアルなフィーリングを込めたという今作について、メンバー4人に話を訊いた。

-『Curve Of The Earth』にはすごく驚かされました。というのも、そのサウンドにしろ、歌詞にしろ、全体の雰囲気にしろ、これまでとはまったく違う作品になっているからです。ただ、自分たちとしては、最初からこのアルバムで大きな変化を遂げようという意図はあったのでしょうか?

William:僕らが考えていたのは、自分たちにできる最高の作品を作るっていうこと。それだけだよ。僕らはデビューから10年経って、これが5枚目のアルバムになる。ここで最大限の努力をして100%のエネルギーを発揮した作品を出さなければ、そもそも作品を作る意味がない。そうだろ?

-ただ、強いて今回の変化の理由を挙げるとすれば、バンドが置かれていた状況、個人として置かれていた状況、音楽シーンの状況――どれが1番大きかったと思いますか?

Kapil:バンドが置かれていた状況っていう話で言えば、前作からラインナップが変わったっていうのはあるね(※2012年リリースの4thアルバム『Radlands』制作時にKai Fishが脱退、今回のアルバムからJack Flanaganが加入)。そういう意味でも、4作目の『Radlands』でひとつの章が終わったんだ。それで、ここから新しい章がスタートする。そういう性格のアルバムになったのは確かだよ。

Jack:今回は(イースト・ロンドンのボタン工場跡地に)自分たちのスタジオを作ったから、自由に使える場所があって、時間的にも余裕があった。それはすごく大きかったね。だいたいの場合、時間の制約があるから最後の方で追い込まれてしまうんだけど、今回はそんなことはなかったんだ。(アルバムの制作は)2年がかりだったかな? 共同プロデューサーのMatthew Thwaitesと一緒にスタジオに入って、たっぷりと時間をかけることができた。それもあのスタジオがあったから可能になったんだよ。だから今回は、自分たちでも不思議なくらい時間に余裕を持ってレコードを作れた。みんなが長年かけて集めた機材がたくさんあるんだけど、それをまとめて置いておく場所ができたっていうのも余裕に繋がったと思うし。

Blaine:ほとんど一緒に暮らすような感じだったんだよね。みんなで同じ空気を吸いながら、作業を始めてすべてが完成するまではストップしない、っていうくらいの勢いで。その感覚がそのまま音になったっていうのは言えると思う。それに、前作『Radlands』はアメリカで録音したから、アメリカーナ的なソングライティングの文化を僕らなりに追求していた。でも今度は、自分たちにとって馴染みのある世界に戻ってきた。そういった意味では、僕たちらしいパーソナルな作品にもなったと思う。キャラクターを設定して云々っていうんじゃなくて、僕ら自身が主役になったアルバムだよ。

-音楽シーンの状況からの影響はどうですか? あなたたちがデビューした当時は、LARRIKIN LOVEやTHE HOLLOWAYSとかと一緒に"テムズ・ビート"と呼ばれたり、THE LIBERTINES以降のインディー・ギター・バンドがまだ勢いがあったりして、MYSTERY JETSが属するシーンやコミュニティも存在していましたよね。でも、今はそういったものがイギリスからはなくなっているように感じられます。

Blaine:たしかにこのアルバムは、ギター・ミュージック、インディー・ミュージックっていうものが存在しないような状況で作り始めたところはある。イギリスのラジオではギター・バンドなんてまずかからないし、ラジオの在り方も随分変わってしまった。僕らがバンドを始めたころはバンドの数も多かったから、フェスでみんなで競い合うようにやっていたんだけどね。当時は、周りのバンド仲間から触発されて、影響されて、っていう現象があった。でも、今は周りを見てもそういうバンドがいない。だから、自分たちが子供のころに聴いていた音楽からの影響に戻ったようなところはあるかな。そう考えてみると、今は僕らだけの宇宙ができ上がっているのかもしれないね。それに拍車をかけたのが、自分たちのスタジオを持ったっていうことだと思う。まるで真空状態の中にいるような――まさに自分たちの宇宙にいるような状況で作った作品だと感じているんだ。

William:そうは言っても、コンテンポラリーな音楽からの影響もあるんだけどね。ポップ・ミュージックの世界のプロデューサーたちが作ってもおかしくないようなサウンドも、このアルバムには入っていると思うし。

-ええ。今回のアルバムには、新しいものも古いものも含め、いろんな音楽の影響がミックスされていると感じます。具体的に、その影響源をいくつかピックアップして教えてもらうことはできますか?

William:具体的に誰の影響が入っているかっていうのは上手く言えないな。何かを真似したとか、コピーしたっていうことではなく、とにかく幅広くいろいろ、って感じだね。今ってインターネットのおかげで、何でも自由に聴けてしまうよね。そういった環境の変化も新作には影響を与えていると思う。

-個人的な印象としては、Blaineが言ったように、あなたたちが子供のころに聴いていた音楽だと、PINK FLOYDとか、Blaineの腕にタトゥーが入っているYESみたいなプログレッシヴ・ロックの影響がひとつにはあると思います。でも、例えばTrack.1「Telomere」のループ感のあるギター・サウンドとか、全般的にエレクトロニックな音処理がされていて、打ち込みのサウンドを意識したようなドラムとか――。

William:(真顔で)打ち込みだよ。

Kapil:何だって(笑)!? 本当かよ(笑)!

Blaine:Kapilをプログラミングしてるんだ(笑)。

William:彼をMIDIに通してる(笑)。