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INTERVIEW

Japanese

クウチュウ戦

2016年01月号掲載

クウチュウ戦

Member:リヨ(Vo/Gt)

Interviewer:山元 翔一

-類似性も感じられたんですが、楽曲はそれぞれで完結していると。全体的な話になりますが、今作は前作を超える完成度の作品に仕上がっていますよね。前作から何か反省点などはあったのでしょうか?

反省点は特にないですね、あの時点でやれることは全部やっているはずなので。1stアルバムの『プログレ』(2013年リリース)は、あんなもの出さなきゃよかったって思うんですけど(笑)。自分でも苦痛ですからね、"長えよ、いつ終わるんだよ。歌始まらねえし"って。『コンパクト』に関してはもうちょっと売れてもいいんじゃないかな。

-手応えについてはいかがですか? 『コンパクト』を作り上げたことに関して。

『Sukoshi Fushigi』ができたときに比べたら全然比べ物にならないですね。まあ、『コンパクト』は実験作ですからね。奇天烈なことをやっていたバンドが、"売れちゃおっか"みたいな感じで(笑)、作った最初の作品なので。まあ気に入ってるんですけど、手応えはそこまでないです。でも『Sukoshi Fushigi』は完成したときは絶望しましたからね。俺のキャリアもう終わった、これ以上のものはもう作れないってできた瞬間に思いました。まあ、まだまだいい曲書けているのでそんなことはなかったんですけどね(笑)。

-なるほど。それほどまでに今作の手応えは大きいのは、Track.6「エンドレスサマー」ができたことが大きいのでないかと思うのですが、実際はいかがですか?

そうそうできないですからね、こういう曲は。

-すごく個人的な話になるんですけど、この曲を初めて聴いたとき、ゆらゆら帝国に感じるものと同じ感情が湧いてきたんですよね。美しいものに対するすごくピュアな感情というか。

あー(笑)。でも、ゆらゆら帝国はきちんとアルバム単位で聴いたことがないんですよ。『空洞です』(2007年リリースの11thアルバム)は聴いてましたけどね。だからルーツにはないんです。でも、坂本慎太郎さんソロはすごく好きでめっちゃ聴いてますね。あの人の作る音楽は素晴らしいなと思います。

-ありがとうございます。話を元に戻したいのですが、歌詞に関しては主観の存在感が薄まった、感覚的なものになっているように思ったのですがいかがですか?

そうですかね......気づかなかったですね。でも言われてみればメタっぽいですもんね。自然とこうなっていますね。歌詞の内容も歌詞自体も、前作から何か意識して変えたことはないです。

-リヨさんは自分で完全な右脳型な人間っておっしゃっているじゃないですか。ここまで特別なことを意識せずに、感覚的な部分を大事にして活動しているバンドマンも珍しいなと思いました。サウンドに関しては、聴き手に寄り添いながらもプログレ的なアプローチの色は濃くなっていますよね。

聴き手に寄り添おうとしたのは『コンパクト』が最初で。前作で一度実験して掴んだので、今作では聴き手には寄り添ってないんです。もうすでに実験済みのことだから必要ないなと。自然とそういう要素は入り込んでいるのかと思いますけどね。プログレ的なアプローチは、僕たちのカラーなので。とはいえ無理には入れてないですけどね、もっとかっこよくしようという過程で自然とこうなりました。そういう意味では、聴き手に寄り添うことを考えず自由にできたとも言えますね。

-ヴォーカルに関しては前作以上に歌心が滲んでいるように感じたのですが、そこに関してはいかがですか?

まあ、ずっと歌っていますしね。自然とよくはなるんじゃないかな(笑)。

-リヨさんは以前から井上陽水さんからの影響を公言されていますが、今作に関しては大瀧詠一さんとかはっぴいえんど的な要素もありそうだなと思いました。

はっぴいえんどは『風街ろまん』(1971年リリースの2ndアルバム)しか聴いてないですけどね。......でもTrack.3「雨模様です」とか、鍵盤の(ベントラー)カオルの作った曲は、はっぴいえんど感あるかもしれないですね。ルーツにはないですけど、好きですね。

-なるほど。今作の作品性に影響を与えたものって何かありますか? 前回のインタビューでは音楽から音楽は作れないとおっしゃっていましたよね。サウンド的なところと、作品性や精神性は別であるのかと思うのですがいかがですか?

こういうこと言うべきかはわからないですけど......サウンド的には、THE FLAMING LIPSみたいな――グチャっとしたポップスというか、ジューシーな、ファンタスティックなポップスというか。要は平坦じゃなくて、ポップだけど血の匂いとかいろいろな匂いがする、さまざまなものが詰まってて混ざりあってるもの、カオスを秩序によって作品に仕立て上げたようなサウンドですね。作品性や精神的な部分に関しては、日常の経験を通して感じたようなことですね。だからここに関しても、これまでから何か大きく変わったわけではないです。

-なるほど。作品性に関することでもありますが、リヨさんの歌詞は詩的で奥行きがあると思うんですよね。

まあ、語りすぎないというか......入り込む隙間とか想像の余地を残すというか。まあ、あまり考えて書いてないですけどね。書いてるときは"めんどくせえな、誰か考えてくれよ"って思ってます(笑)。

-完全にサウンドありきで歌詞を書いてるんですね。

今作も詞先は1曲もないですね、まあほぼ同時にできるんですけど。1番考えたのはTrack.1「光線」ですね。この曲は結構意図的なんですよ。クウチュウ戦の名前を広めていくっていう願いが込められてて。幸先のいいものにしたいっていう験を担いだ曲なので。2016年の一発目が「光線」って幸先よすぎるでしょ(笑)。だから、あとの曲に関してはそこまで。あ、でもTrack.4「台風」は考えましたね、"誰に台風を直撃させてやろうかな"って。サラリーマンに直撃してやったら面白いんじゃないかなとか、おばさんたちに当てたら面白いなとか。そういうことは考えましたけどね(笑)。動物園も考えたんですけど、お金払って行くところなのでちょっと遠いかなと。商店街の方が近いから面白いなって。