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INTERVIEW

Japanese

クウチュウ戦

2016年01月号掲載

クウチュウ戦

Member:リヨ(Vo/Gt)

Interviewer:山元 翔一

音楽という非言語的なものの尻尾を捕まえようと思うのなら、目には見えない、言葉にならないエモーションをキャッチすべく、ひたすら感覚を研ぎ澄ませる必要がある。これは、何も音楽の話に限ったことではない。昨年5月、"聴き手に寄り添う"という実験の先に1stミニ・アルバム『コンパクト』を生み落としたクウチュウ戦が、8ヶ月振りになる新作『Sukoshi Fushigi』を完成させた。メイン・コンポーザーのリヨは、テクノロジーによって過剰に効率化された世界に人間的な感覚を呼び戻すべく音楽を鳴らす。理性によって支配された世とそこに生きる我々に、ひとりの若き表現者が投げかけたクエスチョンを紐解いていきたい。

-2015年5月に初の全国流通盤『コンパクト』をリリースされましたが、この1年を振り返ってみていかがでしたか?

あっという間だったという感じはしないですね。「アモーレ」(『コンパクト』収録)を録ってからまだ1年経ってないんですけど、すごく昔のような気がします。『コンパクト』自体も昔の作品のような気がしますしね。すごく濃密に時間が流れた1年だったなと。

-先日、ライヴを拝見したのですが、複雑な楽曲にもかかわらずライヴでの再現性もかなり高いですよね。音源ではすごく丁寧に音を重ねている印象でしたが、ライヴだと衝動的な部分もあるように感じました。

衝動的とも言えますが、身体的な感じというか。今、すごくスクエアな、四角四面な時代になったと思うんですよ。逆に80年代って今ほどスクエアじゃないのに、YMOとかそのあたりの人たちは、さらなるスクエアな時代の到来を感じとってそれを誇張してライヴをしていたんですよね。かっこよく言えば非身体性を打ち出していたというか。今はみんながスクエアだから、俺は身体性を出していきたい。だからYMOとまったく逆のことをやりたいと思っています。もうめっちゃ"ヒューマンだぜ!"っていう感じを。

-ライヴでのポージングや動きにはそういう意図も含まれていたんですね。そこには、今の時代に対するカウンター的な気持ちもあるのでしょうか?

そんなに怒っているわけでもないんですけどね。もっと、ほぐれればいいんじゃない?って。もうバビロンですよね、特に東京は。カッチリしすぎているというか、左脳っぽいなって思いますね。理性的すぎるというか、人間ってもっと感覚的な生き物のはずなのに理路整然としすぎているんじゃないかなって。もっと昔はそんなことなかったと思うんですよ、絶対。そこをちょっと突き崩していきたいんですよね。

-音楽もそうですけど、今の時代って何事も画一化/効率化されている気がするんですよね。効率化されていく過程で削ぎ落とされていったもの、例えば"ゆらぎ"とかズレとか違和感とかが世の人にとって本来的には魅力に感じるものなんじゃないかって思うんですよ。

そうだと思います。そういう、ないがしろにされてしまったものを復興させなきゃいけないと思います。今の音楽シーンの背景には、そういう音楽を好きな人や聴く人がいっぱいいるっていうことがあって。プラスチックな匂いがするものをみんなが求めているわけじゃないですか? それがスクエアっていうか――そういう意味では流行っている音楽っていうのが1番わかりやすいのかもしれないですね。昔はもっとムーディな音楽があったわけですし。やっぱり情報が多すぎて麻痺しちゃってるんですよ。画面越しのみで得られることが多すぎて、目の前にある、触れられるし、舐められるし、匂いも嗅げるものに対して閉ざしてしまっているというか。そういうものに気づかないというか......。

-現代人が失ってしまっている感覚的な部分を呼び覚ましたいと思いますか?

......呼び覚ましたいですね。音楽の力なんて微々たるものだと思っているので、ちょっとしたきっかけになればいいんじゃないかな。今はもどかしさがないのかもしれない。連絡もLINEとかで簡単にできちゃうじゃないですか。そういうのが簡単すぎると思うんですよ。だって携帯がなかった時代の、家の電話に電話して"じゃあ明日何時に喫茶店で待ち合わせね"みたいなことってムードがあるじゃないですか。何でもかんでも短絡的にこなしちゃうから、こういう世の中になったんだと思うんですよ。

-その感覚は前作の時点でもあったんですか?

ありましたね。

-では、今作について触れていきたいのですが。感覚的には前作と地続きな作品として制作に挑んだのでしょうか?

そうですね。根っこは変わっていないです。ガラッと意識を変えたみたいなことはないと思います。意図的に変えたことはないので、何かしら変わっているところがあるとすれば、意識されたことではなくて自然な変化ですね。

-今作は前作の延長線上にある作品であると。前作から約8ヶ月というスパンでリリースとなりますが、その出発点はどういったところだったのでしょうか?

コンスタントに曲は作っているので特にはないですね。スタッフのみなさんががリリースのスケジュールを組んで、それまでに曲を仕上げるっていう感じでしたね。常に何かしら新しい曲を考えたり、アレンジを練ったりしています。めっちゃ熱心なんですよ、俺。今もホモ・サピエンスについての曲を作ろうと思って、人類の歴史に関する本を買ってずっと読んでますからね。まあ、こんなの読んでも読まなくても関係ないんですけどね(笑)。

-とはいえコンセプトがあるかのような一貫性も感じるんですよね。何か軸となるものはあったんですか?

ないんですよね。後づけですもんね、"Sukoshi Fushigi"っていうタイトルも。よく言われるんですけど、歌詞に太陽とか風とか天気のことがよく出てくるのも偶然なんですよね。