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INTERVIEW

Overseas

BLOC PARTY

2016年02月号掲載

BLOC PARTY

Member:Kele Okereke(Vo/Gt) Russell Lissack(Gt)

2004年、デビュー・アルバムが全世界で100万枚を超えるセールスを叩き出し、一気にロック・シーンの第一線へ躍り出たロンドン出身の4人組アート・ロック・バンド、BLOC PARTY。2008年に3rdアルバム『Intimacy』をリリース後、バンドとしての活動を休止し、それぞれ個々の活動に専念するも前作『Four』で4年ぶりにシーンへ復帰。ところが、前作リリース後、Gordon Moakes(Ba)とMatt Tong(Dr)の脱退が相次いで報じられる。しかしこの大きな変化を前にしたバンドは、強靭なリズム隊を手に入れ、ピンチを乗り越える。――3年半振り通算5作目となるオリジナル・アルバム『Hymns』にはそういった背景がある。メンバー・チェンジを経験し、改めてバンドの立ち位置やアイデンティティを浮き彫りにすることとなった今作について、オリジナル・メンバーであるKele Okereke(Vo/Gt)とRussell Lissack(Gt)がインタビューに応えてくれた。

-長年のファンは、新しいアーティスト写真を見て心底驚いたのではないかと思います。もともとはあなたたちがふたりで始めたバンドではありますが、オリジナル・メンバー、それもリズム隊のGordon Moakes(Ba)とMatt Tong(Dr)が去ったことでバンド存続の危機はなかったのでしょうか?

Kele:正直に言うと、アイツらが辞める前から問題はあったんだよ。それでも毎日顔を合わせなきゃいけないから、結構しんどかったね......(苦笑)。Mattがバンドを去って憑き物が落ちたような気分になったことは事実だし、俺は今までとはまったく違うアルバムを作りたいとずっと思っていたんだ。

Russell:Mattがツアーを途中で投げ出したことで、(バンド存続の)危機があったのは認める。でも、それだって短期間のものだし、誰かに頼らなくてもバンドを続けるかどうかは自分たち次第だったからね。

Kele:その通り。たいした問題じゃないんだよ。例えば誰かがここにやって来て、馬が合えば一緒にチルアウトすればいいし、気に入らなければ自分が外に出たっていいんだから。

-才能豊かな新メンバーについても聞かせてください。ベーシストのJustin HarrisがBLOC PARTYへ加入することになったきっかけは?

Russell:Justinのことは前から知ってたんだ。彼はMENOMENAっていうバンドのメンバーで、僕らが2009年にUSツアーを開催したとき、サポート・アクトを務めてくれたんだ。それで、新しいメンバーが必要だとわかったときに、Keleがまっ先に連絡したのがJustinだったというわけさ。

-次にドラマーのLouise Bartleですが、彼女のことはYouTubeで見つけたそうですね。彼女は優れたドラマーであり、シンガーでもありますが、どんなところに惹かれてオファーしたのですか?

Kele:Louiseの"フィーリング"が好きなんだ。すごくテクニカルでありながら、強靭なグルーヴも持っている。しばらくいろんなドラマーのプレイを見続けていたんだけど、彼女は俺がここ数年見てきた中でもトップ・レベルのドラマーだと思う。ドラムに対してのアプローチがまったく違うんだ。だから、俺たちがLouiseと一緒にプレイしたらどんな化学反応が起きるかな?という好奇心から声をかけたとも言えるね。

-さて、BLOC PARTYの新作『Hymns』を聴かせていただきましたが、第一印象としては、より"歌"をじっくりと聴かせるアルバムだなと感じました。タイトルは"Hymns=賛美歌"を意味し、聖歌隊もいくつかの楽曲で参加していますが、やはりそこは強く意識されたのでしょうか?

Kele:ああ、おおげさすぎるのも、ありきたりなのも避けたかったんだ。ビッグな聖歌隊を迎えて、パイプオルガンを弾かせなくたって、スピリチュアルな音楽を作れるんだってわかっていたからさ。でも、そういった使い古されたように思える技術も、よりスマートに響かせることならできる。聖歌隊は本当にパワフルだし、大人数のユニゾンで歌うのって得がたい体験だからね。Track.2「Only He Can Heal Me」で使った聖歌隊のハーモニーは自分でも型破りだと思うし、俺にはゴスペルというよりバロック音楽のように聴こえるよ。

-ソングライティングについてはいかがでしょう。Track.4「The Good News」では"Its ok, you just need faith(=君には信仰が必要だ)"というフレーズがありますが、KeleがVV Brownとコラボした楽曲も「Faith」(2013年リリースのVV Brownの2ndアルバム『Samson & Delilah』収録)というタイトルでしたし、あなた自身の中で、"信仰"や"宗教"について考えさせられる出来事が続いたとか?

Kele:というか、常にそこにあるものだったから。俺たちの音楽は、いつだって信仰やスピリチュアリティについて言及している。俺自身に何かが起きたってわけじゃないし、ただ純粋に感じることなんだよ。15年以上も音楽を作り続けてきて、もう30代半ばだけど、そこに疑問を抱いたことは一度もないね。

-アートワークもどこか神秘的で、スピリチュアルな雰囲気を感じます。あのジャケット写真のビハインド・ストーリーも聞かせてください。

Kele:言うならば、賛美歌の本(=Hymn book)に見えるようなイメージにしたかったんだ。俺が小学生だったころ、みんなその本を手に持って賛美歌を歌っていたからね。そこから浮かび上がってくる"反射"であったり、"安息"がアルバムのコンセプトの雛形になった。窓に光が反射するイメージは、それらを的確に表していると思うよ。

-Keleが幼いころから尊敬しているという作家であるHanif Kureishiのスピーチをロンドンで聴いたことがアルバムのコンセプトになっているそうですね。そのときのスピーチ内容や、それを聴いてあなたが感じたことなどをもっと具体的に教えてもらえませんか?

Kele:彼が何か格言めいたコメントを残したとか、そういうわけじゃないよ。だから、スピーチそのものはさほど重要じゃない。特に興味深かったのは"宗教心"について話してくれたことかな。その瞬間、アイディアの断片が頭の中に浮かんできたんだ。遠からず考えてきたことだし、常に感じていたことでもあったし、まさに探求のスタートラインに立った気分だった。そのときは、それがアルバム全編のベースになるとは微塵も思わなかったけど、するっと俺の中に転がりこんできたんだ。あとは自分の直感と、好奇心のおもむくままに動いたまでさ。

-ちなみにKureishiは、日本の小説家である谷崎潤一郎の"瘋癲老人日記"(1962年発表)に着想を得て映画"Venus"(2007年公開)の脚本を書いたということはご存知でしたか?

Kele:いや、それは知らなかった。(Russellに向き直って)お前はたしか日本の小説もよく読んでいたよな。彼のことは知ってた?

Russell:ノー。

Kele:ゴメンよ。もっと日本の小説についても勉強しないとな(苦笑)。