Japanese
Zaien Lily
2015年05月号掲載
Member:飛松 直美(Vo/Key) 鈴木(Gt) 原田 慶(Ba) 中村 光宏(Dr)
Interviewer:天野 史彬
"孤独"という名のぬかるみに足を取られながらも、その身の内側から沸き起こる衝動を抑えることはできない――初の全国流通盤となった前作『蝿ト百合』から約10ヶ月ぶりにリリースされるZaien Lilyの2ndミニ・アルバム『ずいのそこ』が描くのは、希望と絶望が、白と黒が未だ混濁する魂のリアルである。飛松と鈴木、このふたりのメイン・コンポーザーがそれぞれの真価を発揮したことによって得た表現の多面性。そして、それを生々しく、且つドラマティックに鳴らしきるべく強化されたサウンドの肉体性。バンドの着実な進化を実感できる充実作だ。
-初の全国流通盤となった前作『蝿ト百合』に続く2ndミニ・アルバムですが、次の一手として、自分たちの中では、どのような作品を目指して作り始めたんですか?
鈴木:僕は曲を書くときに、コアなものではなく、もっといろんな人に親しみやすい感じにはしようとしました。やっぱり、いろんな人に聴いてもらいたいですから。前作は、どっちかというと、ダークな方向に行きすぎたのかなって思ったので。今回は、もうちょっといろんな人に聴いてもらえるようには考えてましたね。
-『蝿ト百合』も、自分たちが元来持っているダークさから抜けようとはしていたじゃないですか。でも前作に関しては、抜け切れていないっていう感覚が強かったですか?
鈴木:そうですね、それはあったかも。聴いてみると、気持ち悪い歌じゃないですか、「フィクション」とか(笑)。それよりは、もっと親しみやすいようなメロディ・ラインであったり、各パートのフレーズは意識していましたね。
原田:"どんどんZaien Lilyのことを知っていって欲しい、その入り口を作りたい"っていうのはありますよね。キャッチーな曲をきっかけに深く知っていってもらえればいいな......っていう曲を、こいつ(鈴木)が作ってくれました(笑)。
-今回、サウンドの強度がものすごく増しましたよね。1曲1曲の構造もこだわっているし、どの曲も勝負曲と言っていいぐらいのスケール感とポップさを持っている。今のZaien Lilyの音楽が届くフィールドをもっと広げていこうっていう、使命感ぐらいの想いは感じるサウンドですよね。
原田:そうですね。今回はがっついてますね(笑)。前ががっついてなかったわけじゃないんだけど、前があったからこそ、今回もがっつけたっていう。
中村:前作は超えなきゃいけないっていう使命感はあるので。音質にしろアレンジにしろ、前よりもいいものは作りたいですから。そこはメンバー間で共通していたんじゃないですかね。
原田:特に話し合いはしてなかったんですけどね。どういう流れだったっけ?......忙しかったんですよ、曲もなかったし。カツカツのスケジュールで、レコーディングは決まっていたんだけど、曲がないっていう状況になっていて。だから、焦りはあったけど、そんな中でもちゃんと作んなきゃっていう感じもありつつ。
鈴木:ギリギリだったもんね。最後が「ゴールデンタイム」だったけ?
原田:「ゴールデンタイム」と「水面に浮かぶ」が最後の方だね。結構最後までアレンジは詰めて、ギリギリまで考えていて。レコーディングが次の週なのにアレンジを変えたりとかは結構ありました。「ゴールデンタイム」なんて1週間前に大幅に変わったもんね。
-「ゴールデンタイム」と「水面に浮かぶ」って、アルバムの中でも特にへヴィでアッパーな2曲じゃないですか。この2曲ができたことによって、この作品の出口が見えるような感じもありました?
原田:あぁ、それはありましたね。最後の最後にきたなって。それまでは迷走していましたからね。正直、最初は4曲のCDを作ろうかっていう話もあって。でも、前作がミニ・アルバムだったんだから、今回もミニ・アルバムだったほうが勢いもあるし。そこでこの2曲ができたから、結果的には大成功だったなって。リード曲も「ゴールデンタイム」になったし、粘った甲斐はありましたね。挑戦っていうわけじゃないけど、攻めの気持ちというか、そういう姿勢は大事なんだなって思いました。
-飛松さんはどうでしたか?
飛松:そうですね......前回は、応援歌的な感じの曲が多かったと思うんです。"1歩踏み出せよ"っていうことを伝える感じの曲が多かったんですけど、今回はそれを経て、私の中では"孤独感"みたいなものがテーマになっていて。孤独だけを歌った曲もあれば、それを乗り越えて歌った曲もあれば、孤独がいっぱいで叫んでいるような曲もできて......前より、もっと自分の奥深い部分を曝け出した感じがあります。2作目は、もっと深いところを出していきたいっていう思いがあったんです。1作目も曝け出していたつもりなんですけど、2作目はさらに奥深い部分が、私が作った3曲に関しては出せたんじゃないかと思います。
-実際、このアルバムの質感は深くて重いなって僕も思ったんですけど、それはやっぱり「水面に浮かぶ」や「底なしに」といった飛松さんの曲がもたらした要素が大きい気がするんです。前作で1歩踏み出す気持ちを歌った、その次にもう1度自分の内面を深く覗き込むようなものを作ろうと思ったのは、どうしてだったんだと思います?
飛松:もうほんとに、(曲は)自分の生き写しっていう感じなんです。前回の作品を書いたころは、"どんなことがあっても、前向きに頑張れよ"っていう気持ちで、"大丈夫だよ"っていう心境で、ああいう歌を書いたんですけど、自分がそれで解き放たれて、その次に感じたことは、孤独感だったんです。すごく孤独な時期があって。そこをわざわざ書きにいこうって思ったわけじゃないんですけど、自分の生活の中で自然と孤独を感じることがあって、それをそのまま書いた感じなんですよね。だから、あえて孤独にいったわけではなく、自然と生活の中から出てきた曲たちっていう感じなんです。なかなか正直に書いた感じがします。
-例えば「底なしに」では"孤独の穴"、"空白"、"無意味な僕を肯定しておくれ"っていう、孤独感の滲む言葉が歌われていますよね。具体的に、何が飛松さんを孤独にさせたんでしょうか?
飛松:なんでしょうね......。
原田:ひとり暮らし始めたからじゃない?
飛松:そうですかね(笑)。......でも、ほんとのほんとにひとりになって。今まではひとりでいることが好きだったんですけど、ほんとのほんとにひとりになったときに、"ひとり、好きだけど嫌いだわ"みたいな感じになったんですよね。そうしているうちに、ひとりでいることの孤独感が生まれてきて、段々と、自分が必要とされているのかどうかもわからなくなってきて......。「底なしに」のサビでは"誰か肯定しておくれ"って、すごく弱いことを歌っていて......ほんとに、寂しかったんだと思います。
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