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INTERVIEW

Japanese

クウチュウ戦

2015年05月号掲載

クウチュウ戦

Member:リヨ (Vo/Gt)

Interviewer:天野 史彬

-やっぱりそこだ(笑)。

あの『プログレ』っていうアルバムは、ただ極端なことをやっててもダメだっていう教訓になったかな。ディレクターの言うことも聞かなかったですから。"1曲目はもっと短いほうがいいんじゃない?"って言われても、俺は"1曲目は13分の曲にする!"って言って聞かなかった。でも、それじゃあダメなんだなって。"極端"っていうのは、毒だと思うんですよ。クウチュウ戦の持つ毒。それを人に聴いてもらうために、聴きやすい要素とかキャッチーな要素を入れて、その中に毒をストンと落とさなきゃいけない。そうしたら、全部狙い通りになるんじゃないかなっていう......今回の『コンパクト』はそういう感じかな。刺したいんですよね。毒を刺したい。でも、極端なだけだったら、刺させてもらえないんですよね。刺させてもらうためには、針以外の何かが必要で。それがキャッチーなメロディだったり、Aメロ・Bメロ・サビっていうストラクチャーだったり、ビジュアル面だったり、飽きさせないステージングだったり。そういうもので餌寄せして、刺すっていう感じ。

-じゃあ、今回の作品のタイトルが『コンパクト』になっているのって、前作のタイトル『プログレ』の対極というか、対比的な側面もあるんですか?

対極というか......恨みというか(笑)。まぁ、対極ですね。意識的にそういうことをやろうとしましたから。曲数も6曲で一緒だし、でも1曲目から3分台だし(笑)。

-この『コンパクト』という作品は、歌詞の中に音楽そのものに対する言及がすごく多いですよね。音楽の中で音楽について歌っている。これって何故だったんですか?

あぁ~、確かにそうですよね。音楽について歌っている......それ、今言われて初めて気がつきました(笑)。なんででしょうね? ......真面目にやり始めたんでしょうね(笑)。"いい音楽作んなきゃ"って考えてたから。でも本当に、意図はないんですよ。すごい無意識だった。

-そうなんですね。3曲目のタイトルが「リカバリーポップス」じゃないですか。リヨさんにとっての"ポップス"を定義づけるとすれば、どういうものが"ポップス"だと思いますか?

う~ん、ポップスの定義......入ってくるもの? 気持ちいいもの? ......難しい質問だなぁ。定義とか苦手なんですよね。言葉が得意じゃないんですよ、超右脳型人間だから(笑)。でも、面白い質問ですよね。ポップスの定義......ポップスって、"ポピュラー・ミュージック"っていうことですよね? 文字だけ見たら売れてる音楽なのかもしれない......けど、クウチュウ戦はまだ売れてないけどポップスだと思うんですよね。まぁ、サビとかなんですかね?(笑)。わかりやすいサビが出てきたらポップス(笑)。KING CRIMSONは一般的には、たぶんポップスではないと思うんですよ。PINK FLOYDもポップスではない。ただ、俺は彼らをポップスだと言うけど。俺は、彼らはポップスだと思うんですよ。でも、それだと定義が広すぎる気がする......俺、なんでもポップスって言っちゃうんですよ。

-うんうんうん、でも、それはひとつのポイントだと思います。

KING CRIMSONもポップスです。人はそうは言わないけど、俺はそう思う。だから、俺が好きな音楽は全部ポップスです。

-うんうん、KING CRIMSONもYESも、井上陽水もさだまさしも、全部ポップスであるっていう視点がリヨさんにはあるわけですよね。"リカバリー"って、"回復"っていう意味じゃないですか。だから「リカバリーポップス」って、リヨさんの好きな音楽=ポップスを回復したいっていう、そこに対する強い意思や志を感じるんですよね。

あぁ~......「リカバリーポップス」は、"「リカバリーポップス」という名の処方箋ですよ"っていう感じ。これは、曲自体は鍵盤の(ベントラー)カオルが作ったから、あんま偉そうなことは言えないんだけど(笑)、今って、スクエアっていうか、四角四面な感じがあるじゃないですか。東京のピシッとした感じというか、理路整然としすぎちゃってる感じ。だから"マシーンにはならないで"って歌ってるし。ほんとに処方箋っていう感じなんですよね。"霊長類、ホモサピエンスなんだから、エモくあれ!"みたいなことです。

-その"エモさ"っていうのは、例えば......2曲目の「MUSIC TRAVELER」の中に"魔法かもね ひょっとしてミュージックは"っていうフレーズが出てくるじゃないですか。この"魔法"っていうのが、リヨさんの中の"ポップス"とか"エモさ"に繋がる言葉なのかなって思うんですよ。

基本的に音楽は魔法だと思ってます。超常現象というか。奇跡みたいなものだと思ってますね。だって、すごくないですか? 計算ではできないわけじゃないですか。誰もが気持ちよくなれる曲を作れるような方程式なんてないじゃないですか。モワッとした、エスパーみたいなものなんですよね、音楽って。だからもう、マジックとしか言えない。音楽って、言葉に説明できないことばっかりじゃないですか。

-うん、本当に。

言葉で説明できないから音楽があるっていう感じだし。"科学じゃ解明できない現象"とか、実際にこの曲で歌ってますもんね。本当にそう思います。

-この曲の冒頭では"魔法みたいなね そんなミュージックが/たくさんはないけど少しはあるよ"と歌っていますけど、これは今のリヨさんが持っている、音楽に対する現状認識なのかなって思うんですよ。

あぁ、それはそうですね。好き嫌いは激しいので。好きな音楽はあるんですけどね。日本人だったら□□□さんとか、青葉市子さんとか、前野健太さんとか。でも、音楽の全体数に比べたら好きな音楽は圧倒的に少ないから。これはそういう意味合いで書いてますね。