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INTERVIEW

Japanese

depthqueuing

2015年05月号掲載

depthqueuing

Interviewer:奥村 小雪

-収録曲の歌詞などに反映されている思春期の思い出はありますか?

特に意識して書いたわけではありませんが、殊更に他人と距離を取ろうとする歌詞が多いのは人とコミュニケーションを取ることが苦手だったり、片思いが多かったり、恋人がいても、相手に対してどうしても素直になれなかったり、というようなことが反映されているのではないでしょうか。思春期というよりは中二病と呼んだほうが良さそうな思い出ですけれど。本当に昔からコミュニケーション下手なんです。

-Track.1「イノセンス」は、エレクトロ特有の浮遊感とバンド・サウンドが絶妙に交じり合っていて、すごく心地いい楽曲だと思います。この曲をアルバムのオープニング・トラックに選ばれたのには何か意図があるのでしょうか?

ありがとうございます。この曲を選んだのは、聴いてくださる方が、すっと、このアルバムの世界に馴染んでもらえるようにしたかったからです。イントロも目の前が開けていくようで、オープニングっぽいと思いましたし、サウンド的にもエレクトロニックな音とバンドの音がうまく交じっていてこのアルバムを象徴する1曲だと思うので。歌詞にも、なんとなく何かが始まりそうなイメージを持ったので、オープニングにはぴったりかな、と。夕暮れの曲ですけれど。改めて全曲の歌詞を読むと今作は夕暮れの曲が多いですね。

-アルバム全体を通してバンド・サウンドが基軸になっているように感じますが、SoundCloudではエレクトロ要素の強いインストゥルメンタル曲も多く公開されていますよね。今作にそういったインスト曲ではなくバンド・サウンドがメインの楽曲を収録されたのはどうしてですか?

今作は歌モノを主体にしたアルバムにしようと初めから決めていたのですが、そう決めて楽曲制作にあたると、もともとバンドをやっていたからなのか、バンド・サウンドが、より歌に感情を込めやすいフォーマットであることに気づいたんです。もともとギターを弾いていた人間ですから、どちらかというと打ち込みよりも、機微を捉えたプレイの方がやりやすいというのもありましたが。特に今作のテーマが思春期で、それに由来する感情の迸りを表現したかったので、先に述べたような青さや疾走感などをよりしっかり表現できるのはバンド・サウンドだな、とも思いました。いわゆる初期衝動的なものも取り入れたいと思いましたし。

-Track.3「ソクラティックメソッド」といえば、問答形式によって授業が進められていく教育方法を思い浮かべますが、このタイトルに込められた想いや意味について教えていただけますか。

この曲の女の子は自分だけでずっと問答しているんです。これでいいのか、自分は間違っていないのか、人生楽しいのか、どうやったらもっと満足が行くのか......曲がりなりにも自分なりの答えを返していってるつもりだったのに、どうしようもない絶望感に苛まれて今までのすべての答えがまったく色あせてしまったように感じてしまう。僕はこんなふうにずっと小さな問答を経ながら毎日を過ごしているような気がします。そしてその答えの拠りどころは、最終的には自分の信念や人間性になってしまうと思うのですが、"さて、そういうものがふと揺らいでしまっている彼女はどうしたら良いのでしょうか?"という問いを最後に投げかけて、それが今度は僕ら側へ回ってくる。そういう意味では"彼女はどうやったら救われるのか?"という、どちらかといえば事例をとりあげて解決方法を議論する、ケース・メソッドの方が表現としては的確なのかもしれないけれど、きっとそこにたどり着くまで、僕たちも無数の問答を経て成長してきているんだ、という意味でこのタイトルをつけました。なので、聴いていただくときは、歌詞も読んでいただいて、"本当にそうか? 本当にそれで正解なのか?"と考えて欲しいです。正解なんてものはないのかもしれないけれど、聴いてくださる方々それぞれの最適解を見つけていただけたら嬉しいですね。

-今作のアクセントになっているラップ調のナンバー「無理解」は、歌詞に"海浜公園"という具体的な場所が出てきたりと、情景がリアルに描かれていますよね。

海浜公園は実際にある場所です。僕、夕暮れの歌も多いけど海の歌も多いですね......たしかに普段海に行くことは多いんですが......。そういった意味では、このアルバムは実態をしっかり反映していると言っても過言ではないのかもしれません。

-「無理解」の歌詞は実際の経験に基づいたストーリーなのでしょうか?

えっと、これは聴いてくださった方のご想像にお任せするということで(笑)。でも男ってなぜだかいつも優位に立ちたがりますよね。そして大きなお世話、おせっかいともとれるような言動をする......この曲はそういった上から目線の男へのアンチテーゼであると同時に自らを戒める曲でもあります。本当に無理解なのは誰なのかっていう話です。こういうふうに偉そうにしてる僕たちを女の子はすごく冷めた目で見ているんだろうか......すごく怖いですよね......。