Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

或る感覚

2014年12月号掲載

或る感覚

Member:ロン (Vo/Gt) 大野 (Gt) Kou (Ba) 北原ジャンクション (Dr)

Interviewer:天野 史彬

-具体的に、レコーディングの現場で今までと変化した部分はありましたか?

北原:ドラムのテックを入れたのが今までと全然違いますね。今まではギターがバンって聴こえて、ドラムとベースは小さくて、音も悪いっていう感じだったんですけど、今回初めてドラムテックさんを入れてチューニングしてもらって。そこの音作りにはすごくこだわりが出てると思います。そこが、バンド感が出た要因のひとつになってると思いますね。

ロン:全パートを強調してたら、結果としていつの間にか全部聴こえてたっていうことだと思うんですよ。『カウンター』のころは、全楽器が主張したんですけど、結果的にパートとパートの間で主張の差が如実に出てしまって。でも今回は、全パートがちゃんと主張して、ちゃんと全部聴こえてる。レコーディングの時、もちろん音作りはこだわったんですけど、一番デカいのは"こういう音にしたい"っていう目的、青写真がちゃんとあった上での音作りだったっていうことだと思いますね。今まではメンバーそれぞれの我が強かった分、そうはならない部分もあったんですけど、今回は全パートの目的が一致してた。だから結果的にバンド感も出たし。

Kou:やっぱりバンドが一枚岩になった感じは前作に比べてありましたね。バンドの結束が高まったというか。

-人間同士の結束も強まった感じはありましたか?

北原:それは......どうだろう?(笑)

大野:でも、今回はレコーディング中、みんな機嫌はよかったですね。

ロン:『カウンター』のころは、僕と大野が喧嘩したりしてましたからね(笑)。大野が録り直してる時に、俺が寝てたりしてて。でも、今回は誰かが録ってる時には、他の誰かが絶対にべったりついてる感じで。なので喧嘩もなかったし。あと1番デカいのは、年明けにバンドの環境が宙ぶらりんになった時期があったんですよ。なので、"ここからはリリースも自分たちでやるし、頑張らないといけない"っていうのがあって。そういうこともあって、自然とバンドが一枚岩にならざるを得なかったのかなっていう気がするんですよ。結果としてSPACE SHOWER MUSICからリリースすることになったけど、それも全員で頑張ってないとできなかったことだから。だから、結束はしてたのかもしれないですね。

-今回音を聴いて真っ先に思い浮かべたのが、さっきも話に出たbloodthirsty butchersだったんですよ。高校生のころ、初めてブッチャーズを聴いて"なんて優しい轟音だろう"と思った、あのときの感覚がすごく蘇ってきて。

ロン:あぁ~それもやっぱり、やっとルーツを出せたっていうことだと思いますね。もともとブッチャーズも聴いてたし、PIXIESも聴いてたし、MINERALも聴いてたし、THE GET UP KIDSも聴いてたし......なのに、『カウンター』のころは恥ずかしくて出せなかったんですよ。だから、優しくなったというより、素直になったんだと思います。ストレートなことって恥ずかしいじゃないですか。"好き"っていうひと言も、日本人は"月が綺麗だね"って言い換えるぐらいシャイな人種なんだと思うんですよ。俺も、典型的な日本人の心を持っていて(笑)。19歳のころに出した『カウンター』と1番違うのは、ストレートな言葉で言った方が伝わるし、それは全然恥ずかしいことじゃなかったんだっていうことに気づいたことで......それがサウンドにも出たんだと思います。アレンジにしても、変に回りくどいことをしてたけど、ストレートにドカンと歌を活かしたほうが伝わるしカッコよかった。それが自分たちの聴いてきたルーツにリンクして、やっと消化できたのかなって思います。最後の3曲なんかは特にそうだと思うんですよ。

-今の恥ずかしさの話とリンクすると思うんですけど、今回、言葉の面でロンさんはどこまでも自分の弱さを受け入れていますよね。Track.3「画家と筆」、Track.6「夕焼けは見たくなかった」、Track.10「対話」、そして特にTrack.11「亀の速さで」――これらの楽曲には、無力感を受け入れながら、それでも歌うしかないっていうロンさんの等身大の姿が如実に出ていると思うんです。

ロン:そうですね。俺がブッチャーズや野狐禅とかと違うのは、俺はどう頑張ってもダサい人間なんですよ。それは間違いないと自分で強く思ってて。じゃあ、ダサいなりにできるパンクってなんなんだろう? って考えてたんです。俺は、自分たちはパンク・バンドだと思ってこのバンドをやってるけど、そもそもパンクって、自分の思想と歴史を表現するジャンルだと思ってるから。サウンドではなくて、思想のジャンルというか。だから、無様でもやれる歴史と思想の伝えかたってなんだろうって考えたときに、それは俺と同じ奴らを救ってやることだって思ったんです。それが俺の唯一できるパンクだって。俺らの音楽を聴いてる奴らが無様だと言ってるわけじゃないんですよ。まぁ、何もかも上手くいってる奴らには刺さらないかもしれないですけど。でも、何かしら、みんなコンプレックスやフラストレーションがあって、それを発散する場所として音楽に逃げたりしてくれてると思うんです。でも、その逃げる場所が同じフラストレーションに塗り固められてると、それは負の方向にしかいかないじゃないですか。だからそうじゃなくて、"俺もそうだから安心しろよ"って言ってやりたかった。それが、俺のできる今のパンクなのかなって思っていて。