Overseas
ASIAN DUB FOUNDATION
2013年08月号掲載
Member:Steve Chandra Savale (Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
前作『A History Of Now』から2年半、ASIAN DUB FOUNDATIONのニュー・アルバム『The Signal And The Noise』は、バンド結成時の中心メンバーであるDr Das(Ba)が7年ぶりに復帰し、Rocky Singh(Dr)、Ghetto Priest(Vo)などの強力布陣が揃った、テンションの高いアグレッシヴなアルバムとなった。結成20年という節目を迎えるバンドだが、未だ成熟という言葉は似合わないほど、新たなるバンドのケミストリーに突き動かされてサウンドを切り開き、グルーヴとヴォーカルでますます舌鋒鋭く社会に切り込んでいく。まさにADFここにあり、というべき1枚だ。
-今年はバンドの結成20年目にあたる年で、この節目にオリジナルのメンバーが復帰したアルバムを聴けることはファンにとっても特別なこととなります。まずは、メンバー復帰のいきさつ、アルバムへと至ったいきさつを教えて下さい。
まず“Secret Cinema”という素晴らしい団体との縁があったんだ。彼らは素晴らしいイベントをやっていて、どういうイベントなのかは説明しにくいんだが……恐らく、こういうものは日本ではまだやっていないと思う。今、ロンドンでも非常に革新的なことだからね。とても有名な映画を取り上げて、それをリアルタイムに3Dで再現するという企画だ。そして観客も参加する。映画に合った格好をして、その映画の登場人物になる。そして映画のシミュレーションをする。ちゃんと説明できているか分からないが、この体験を説明するのは少し難しいな。
-それは映画の上映に合わせてシミュレーションが行われるのですか?
いや、音楽や映画がはじまる前だ。しかも、観客はその映画が何の映画であるか知らされていない。Secret Cinemaは観客にどういう格好で来ればよいのか、どこに集まればよいのか、という情報だけを知らせるんだ。大抵の場合はロケーションを借りて、その場をその映画の設定のように造り変えてしまう。そこで、役者、小道具、環境のデザインなどを利用して、映画を再現するというかシミュレーションするんだ。その主宰者から連絡がきて、彼は俺にこう言ったんだ、“あなたたちがバービカンで映画『憎しみ(La Haine)』のサントラ演奏したときは感動しました。それは私にとって大きなインスピレーションとなり、それがきっかけでSecret Cinemaを立ち上げることにしたのです”って。それを聞いたときはびっくりしたよ。冗談だろ、と思った。そしてSecret Cinemaがどんな団体なのか、どんな活動をしているのかが気になった。彼は『La Haine』のプロジェクトを復活したいと話を持ちかけてきた。しかも、ブロードウォーター・ファーム(※2011年ロンドン暴動のきっかけとなった場所)でやるという企画だった。この企画には、Dr.Das(Ba)も興味を示すに違いないと思った。それでDr.Dasに電話したら“イエス”と即答だった。こういう流れで、俺たちは再び『La Haine』を演奏することになったんだ。素晴らしいことだったよ。とても面白くて過激なイベントでね。このことが、前作と今作のリリースの間に起こったビッグ・イベントだった。このイベントがあったから、Dr.Das、Rocky Singh(Dr)、そして俺が再び一緒にプレイすることになって、それ自体がとても良い結果に繋がったんだよ。本当に、一緒にプレイできていい感覚が蘇ったのさ。
-再びメンバーを集結させることは、なかなかに難しさもあったのでは?
いや、驚くほど簡単だったよ。みんな、やりたいと思って戻ってきてくれたから難しいことは何もなかった。当時のバンドをまとめ上げるよりも、はるかに容易にあのメンバーを集結させることができたよ。
-改めてオリジナルのメンバーが集まってセッションをし、音楽を作っていく中で生まれたテンションの高い、熱いケミストリーはアルバムから感じることができますが、実際に新しい曲を生みだしていくスピード感、高揚感はどういったものでしたか。
曲を作るスピードは、普段よりもずっと早かったね。それは良いことだった。スピードは以前よりも早くて、ほとんどの曲がワン・テイクでできた。ただ、ミキシングやエディティングには多少時間がかかった。なぜなら、フリーな形での演奏がたくさんあったからね。それらを構成して作り込む必要があった。「Radio Bubblegum」のパーツは、スタジオに入る前には存在していなかったし、タイトルも違って、曲の感じもまったく違ったんだ。
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