Overseas
ASIAN DUB FOUNDATION +THE QEMISTS
Skream! マガジン 2011年04月号掲載
2011.03.04 @渋谷O-EAST
Writer 杉浦 薫
THE QEMISTS
09年、ドラムンベース×ロックを基盤としたハイ・エナジー・サウンド全開のアルバム『Join The Q』で、鳴り物入りのデビューを果たしたTHE QEMISTS。今回はASIAN DUB FOUNDATIONのツアー・サポートとしての来日だったわけだが、この組み合わせはとても素晴らしかったと思う。90年代後半、ダブやドラムンベースを基調としたクラブ・ミュージック・サウンドで、ロック・ファンにも新鮮な衝撃を与えたかつてのASIAN DUB FOUNDATION と、現代のTHE QEMISTSの姿を重ねる人は多いだろう。
THE QEMISTSは、特定のヴォーカリストではなく、曲によって様々なヴォーカリストとコラボレーションしているわけだが、近年のライヴでは、ラップを担当するBruno、ソウルフルな女性ヴォーカリストKeishar Downie、エモーショナルな歌声のMatt Roseの3人が、アルバム制作と同時にツアー・メンバーとしても参加している。そして、新境地を開拓した『Spirit In The System』のナンバーからも存分に披露された今回のライヴ。正直に言うと、所々で打ち込みの音とドラムのリズムの同期が崩れたり、KeisharとMattの声の不安定さが目立ち、少し惜しいように感じたのは確かだ。
しかし、フロアはそんなことお構いなしとばかりに大いに盛り上がり、前方には大きなピットが出来たり、ダイヴする人も続出。全体として起承転結のあるセットリストであり、特に「Stomp Box」「Take It Back」のラスト2曲は、今回の演奏の中でも素晴らしい輝きを放ち、大団円をもって終了した。
クラブ・ミュージックとロックを融合させた、数ある若手アーティストの中でもトップに位置する彼らなだけに、ライヴ・バンドとしての今後の更なる成長を期待したい。
【SET LIST】
01. Your Revolution
02. Lost Weekend
03. Renegade
04. Hurt Less
05. S.W.A.G.
06. The Only Love Song
07. Dirty Words
08. Dem Na Like Me
09. Stompbox
10. Take it Back
ASIAN DUB FOUNDATION
93年、ロンドンのインド/バングラデシュ系コミュニティで結成されたASIAN DUB FOUNDATION(以下ADF)は、結成以来、常に社会への警鐘を鳴らす強いメッセージ性と、ダブ、ドラムンベース、ジャングルなどのクラブ・ミュージックにロックやパンクを融合させるというスタイルを確立する。その、あまりに多角的なサウンドは、ブリット・ポップが全盛であった当時のイギリスではなかなか受け入れられなかったようだが、97年『R.A.F.I』(同年『Rafi’s Revenge』も発表)リリース後、ヨーロッパ諸国での好意的な評価を得ると共に、PRIMAL SCREAMのツアー・サポートに抜擢されるなどして、ギター・ミュージックとしてのロックしか聴いていなかった筆者を始めとするロック・ファンの多くが、それはもう、とてつもなく新鮮な驚きを覚えたものだ。ADFが与えた影響は、現代の多くのダンス・ロック、レゲエ・ミクスチャー、ひいてはバイレファンキなどのワールド・クラブ・ミュージック勢に至るまでに拡がり続けている。
01年にオリジナル・メンバーのヴォーカリスト、Deeder Zamanが脱退し、その後幾度かのメンバー・チェンジを経ながらも、01年『Enemy Of The Enemy』、05年『Tank』、07年ベスト・アルバム『Time To Freeze 1995 / 2007』、08年『Punkara』と、定期的なリリースとライヴ活動を行ってきた。そして今年、待望の新作『A History Of Now』を引っ提げての来日となった。
「Bridge Of Punkara」が鳴り響くと共に歓声が沸き上がる。1曲目は、00年代に突入してからのADFの代表曲「Rise To Challenge」。結成以来、ADFが変わらずに圧倒的なオリジナリティーを誇っている大きな要因である天才パーカッショニスト、Prithpal Rajutが奏でる独特のリズムが気持ちいい。今日はTHE QEMISTS目当てで来ていた人たちも少なくないが、ADFの音楽を知らない人たちにとっては、この生の民族楽器で奏でられるリズムがとても新鮮に映っただろう。そして、最新作のナンバー「Urgency Frequency」が披露され、ボルテージが一気に上がる。今日のオーディエンスに新曲がきちんと浸透しているということが確認出来た場面だ。
ここ数年のADFサウンドは、より直接的にオルタナティブ・ロックへと傾倒しているわけだが、その後も、近年のADFの代表的なナンバーが中心に展開されていく。「Speed Of Life」がプレイし終わると、ChandraがMCでチュニジアについて語っていた。内容については細かく理解出来なかったのだが、その後にプレイされた「A History Of Now」や「Future Proof」は、自然と真摯に聴き入る時間となった。それまでの流れを受けての「Burning Fence」では、また一気に熱が上がる。更に、「Flyover」では客がステージに上がる場面も。メンバーのテンションに合わせて、皆踊り狂っている。「Dhol Rince Jam」では、再びPrithpal Rajutのリズムが、会場全体を祝祭感で満たしていく。「Naxalite」は、Deeder在籍時のオリジナル・バージョンよりも、ヴォーカル・ラインが2音低いアレンジになっていた。そして、本編ラストの「Oil」がプレイされた後、ほどなくしてアンコール。00年代ADFの一番のアンセム「Fortress Europe」では、今夜一番の盛り上がりを見せ、ADFというバンドの本質がギュッと集約されている名曲「Rebel Worrier」で、ライヴは終了した。
メンバー交替によって音楽的な変化を遂げながらも、本質的な部分は何も変わらずに、闘争の音楽を続けているADF。そんな彼らの姿に頼もしさを覚えると共に、今後の更なる活躍に期待が膨らむパフォーマンスであった。
【SET LIST】
01. Bridge Of Punkara
02. Rise to the Challenge
03. Take Back the Power
04. Urgency Frequency
05. Target Practice
06. A New London Eye
07. Speed Of Light
08. A History Of Now
09. Future Proof
10. Burnig Fence
11. Flyover
12. Dhol Rinse Jam
13. Naxalite
14. Oil
ENCORE
15. Fortress Europe
16. Rebel Warrior
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