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INTERVIEW

Japanese

星野源

2013年05月号掲載

星野源

Interviewer:石角 友香


-なるほど、だから奈落とか舞台の用語が歌詞に出てくるんですね、腑に落ちました。

そうそう。でも、なんか入院して改めて聴いたら自分の曲みたいだなと思って、まずいなと(笑)。でも面白いなと思いました。

-倒れたあと、初めてこの曲を聴くときは怖かったって、ラジオで話してらして。でも聴いたら元気づけられたって。

うん。これを書いた日に完成して録音した瞬間に倒れたので、やっぱりちょっとトラウマっぽくなっちゃんだろうなと思って、しばらく聴けないでいたんですけど、でもここから聴き始めないとなんとなく先に進めないような気がして、意を決して聴いてみたら元気になった(笑)。“お、いいじゃんいいじゃん”みたいな。うれしかったなぁ、あれ。

-アルバム・タイトルの『Stranger』も最初は意表を突かれましたけど、アルバムを聴くと納得、みたいな。

そうですね。これしかなかった感じです、うん。入院してるとき改めて全部聴いて“ちょっと自分じゃない”じゃないですけど、あまりに切羽詰まってたし、でも倒れた後はすっきりしちゃったから、なんか自分に似てる誰かが(笑)、必死にがんばって作ったものを死ぬ前に渡してくれたみたいな感じがあって。それは自分の中の知らない自分みたいな感じもあったし、向こうからしたら今の自分は知らない自分だと思うし。よそ者っていうか、自分の中の意図しない自分も『Stranger』には入ってるし、単にちょっと狂ってるみたいな意味もあるし(笑)。あと、その時すごく孤独だったっていうのもあって、どこ行ってもなんかよそ者みたいな気持ちだったっすね、制作中は。

-身体に影響が出ない人もいるのかもしれないですが、どう考えても去年の星野さんの多忙さ、生き急ぎ方はすごかったから。

ははは。ですね。そのぐらいの状態で自分のことが麻痺して、追いつめられて作ったからこういう曲たちができたんだろうなとは思います。たぶん一生に何回もできることじゃないと思うので、あの感じ(笑)、しんどいから。できて良かったなって。で、そのまま死なないで良かったなぁと思います。

-……なんと言ったらいいかわかりませんがホントにそうですよ。さらに驚くのが映画“聖☆おにいさん”の主題歌「ギャグ」が、アルバムの1週間後にリリースされるという。

そうです。ギリギリやれました(笑)。

-めちゃくちゃ賑々しい曲になってて。

『Stranger』で達成感がすごくあって、これからしばらく細かいことはどうでもいいから楽しいことやろう、って感じなんですよね(笑)。アルバムは楽しい面白いアルバムになったと思うけど、いろいろ悩んで作ったので意図せずして自分の魂みたいなのが入っちゃったんですよね。でもそれを突き詰めたし、乗り越えられたとも思っていて……だから今は音楽的な悩みはないんですよ(笑)。だから単純になんかワクワクする、音楽で遊ぶみたいなことをやっていっていいんじゃないかな?「ギャグ」も「ダスト」もそんな気持ちで作りましたね。

-今回は恒例の初回特典のDVDが付かないから安いんですよね。

そうです! がんばりました。

-この執念(笑)。でもこれ、星野さんはどうがんばったらこうなるんですか?

僕はがんばるというか、ワガママを言うだけです(笑)。“600円がいい”って。

-ははは。でも筋を通そうと。

そうです。そこは“別にいいんじゃないの?”って言う人もいっぱいいたけど、自分が買う側だったら気になるから。600円と1,200円って全然違うじゃないですか?ハタチぐらいの時って特に。なんか自分のその頃の気持ちって抜けないですよね。

-そこは大人の、ちゃんとモノを売らなきゃいけない人も共感するところだと思います。

会社の人が考えてくれるのが1番いいんですけど、ずっとインディーズでやってたから自分で考えるしかなかったっていうのもあるかもしれないですね。

-今、星野さんが受け入れられるのって、そういう部分でのリアリティも大きいんだと思います。

……うれしいっす。

-そんなことを言ったりやったりするアーティストはいなかった(笑)。

ははは。

-だって星野さんのシングル以降、みんな長いDVD付けてるし。少なくともビクターのアーティストは。

そうなんですよ。それ書いといてください。自分で言うと自慢になっちゃうんで(笑)。